コメント: the purpose of inheritance rule

久しぶりにお邪魔します。
hatsuru先生とは異なる視点からこの決定を考えてみます。

今回違憲とされた民法900条4号但書は、婚外子の法定相続分を婚内子のそれの2分の1と定めています。この相続と対称的なものとして扶養を挙げることができます。民法877条に規定があるものの、婚外子の扶養義務は婚内子の2分の1という訳ではありません(そもそもこの規定に存在意義があるのかよく分からない状態です)。

我が国では、これまで、親族の介護費用の負担をあまり考える必要はありませんでした。
しかし、近年では公的介護費用の償還請求が論じられるようになってきました(数年前の日本私法学会の個別報告)。

負担のない受益(相続は放棄出来ることを考えると1つのコールオプションとも言える)に関し、婚内子と比較していろいろと困難な場面に遭遇してきた婚外子にも同じ割合で法定相続分を認めるべきという主張は一定の合理性があります。これを負担(扶養)にも拡張し、婚内子と同じ割合で費用償還義務を負うと考えるのか、扶養については請求対象に含めないと考えるのか、非常に難しい問題ではないかと思われます。相続財産を受け取るのであれば公金で一時的に介護費用を賄うとしても、相続財産をもって償還すべきと考えるのが素直ではないかと思います。そこで、相続分が小さいことを踏まえて負担部分を小さくするという立法をした場合、相続のみに着目して不合理とは言えなくなります。

最高裁は扶養との関係をどのように考えて今回の判断を下したのでしょうか?
今後我が国で間違いなく問題になること(公的介護費用の増大に伴う相続人への償還)を考えずに今回の判断を示したのでしょうか?

介護費用の負担を加味して考えると、婚外子が婚内子と同等の相続分を得たのであれば、国家(血縁関係のない大多数の国民)が介護費用を負担する前に、婚外子が少なくても相続で得た資産の限度で負担すべきと考えてもおかしくはありません。

介護費用の償還について立法がなされ、婚外子については婚内子よりも負担を軽くすると規定された場合、同規定と併せて考えると不合理とは言えないということになるのかもしれません。

更には、婚外子については父親の生前に相続放棄すれば扶養免除される(これもオプションですね)制度を導入することも1つの選択肢だと思います。成年子の認知に本人の承諾が必要なことを考えると、婚外子に自ら積極的に扶養から逃れる機会を与えることを否定すべきではないと考えられます(婚外子として親とは完全に切り離された経済主体として独り立ちし生活している以上、その生活は保護されるべき(個人の尊厳という修辞にあてはまるのか否かは措くとして)だと思います。保護が必要な時に保護されず後に義務だけ負わされるのは著しく不合理です)。

加えて、婚内子と婚外子が、同等に相続税の連帯納付義務(相続税法34条)を負うことになるのかも検討する必要があります。現行相続税法は、民法900条4号但書を前提した(婚外子の納税義務を軽減する)規定を置いていません。実際の徴税を行う時の運用は知りませんが、租税法と私法との関係を考えると微妙な問題があるように思われます(詳細は不知(ふち))。相続税については遺産税と考えるのか遺産取得税と考えるのか、2つのモデルがありますが、介護費用の償還請求を加味すると簡単にどちらかに割り切れるものではないように思われます。

この最高裁決定については、法学教室10月号で蟻川先生が詳細な検討を行っています。蟻川先生にあそこまで分析され、hatsuru先生、さらにはサラリーマンからも疑問点を指摘されると、最高裁判事も判決(決定)を下せなくなりますね。

このエントリの分析は,「遺留分にかからない範囲内で」という前提ですが,実際には遺留分が問題となり得る(最高裁は遺留分にも言及している)わけで,最高裁がだめだと正面から言ってるわけではないです。

扶養など,ほかの制度との関係については,具体的違憲審査なので,事件が上がってきたごとに判断するのでしょうね。

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