東北大学大学院法学研究科・法学部の現在

法学研究科長・法学部長 近景

東北大学大学院法学研究科長・法学部長
水野 紀子

 平成23年3月11日(金)に途方もない災害が発生しました。東日本大震災により被災された皆様に衷心よりお見舞い申し上げます。また東北大学に対し、多くの皆様から物心両面にわたる心温まるお見舞いを頂戴し、心より厚く御礼申し上げます。多くの方にご心配をいただきましたが、本学法学部・法学研究科・専門職大学院の在学生、教職員全員の安全が確認されております。建物などの物的な被害はありましたが、学生が安全に勉学にいそしめるよう、目下、全力を挙げて復旧に取り組んでいます。さらに未曾有の被害を出した被災地にある国立大学法人として、被災された方々のためにできることを探りながら、地域社会の再生のために努力しております。東北大学の学生たちのボランティアも組織されています。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/volunteer.html

 すでに大学より発表されている通り、平成22年度の学位記授与式は中止となり、また、平成23年度は、入学式を各学部で新入生オリエンテーションとともに5月6日に行うことが予定されています。授業の実際上の開始は、5月9日からになります。東北大学法学部・法学研究科の学位記授与式に同窓の友人たちと集うはずであった卒業生の皆さん、また4月はじめの全校の入学式を楽しみにしていた新入生の皆さんには、まことに残念なことであったろうと心苦しく思います。しかし皆さんが東北大学法学部の栄えある伝統を担う人々であり、本学法学部が送り出してきた人々、在学している学生たちが、今、仙台の地にあって、あるいは離れた場所にいても、この未曾有の災害のもたらした被害と向き合い、被災者に心を寄せ、強い連帯感で支え合って努力していることを、そして皆さんもその輪に加わっていることを、学位記授与式の栄光に劣らないと感じて頂きたいと願っています。

 東北大学は2007年に創立百周年を迎えましたが、法学部の前身は、東北帝国大学法文学部として、1922(大正11)年に設置されました。国立大学の法学部としては、我が国で3番目に古く、80年以上にわたる輝かしい歴史と伝統を誇り、法学・政治学の様々な分野で、多くの研究者や法律家を含む優れた人材を輩出してきました。

 キャンパスは、今回の震災でも津波の被害を受ける場所にはなく、変わらぬたたずまいを見せています。法学部と研究大学院(修士・博士課程)がある川内南キャンパスは、仙台城二の丸跡地にあり、近くには、植物園や百周年記念会館(川内萩ホール)があるという、自然に囲まれ文化的施設に恵まれたところにあります。広瀬川と緑の青葉山を背景にしたこの落ち着いた環境は、法学部生として、この場所で法学・政治学の初歩を学び始め、やがて研究大学院に進学して、より高度な法学・政治学の学問を深めることを志す学生たちを、暖かく包み込んでいます。これに対し、2つの専門職大学院、法科大学院・公共政策大学院は、仙台の中心地、東北大学の発祥の地片平キャンパスにあり、裁判所・検察庁・弁護士会、官庁やビジネス街にも近く、実務法曹や政策企画立案の専門家を養成するのに適した場所にあります。こちらは、裁判官・検察官・弁護士や中央省庁から派遣されている政策実務の専門家からなる実務家教員と研究者教員の懇切丁寧な指導の下で、法律実務や政策立案の「プロの卵」たちが日夜研鑽を積む場所です。卒業生たちはまさに今、ここで培った技量を活かして、未曾有の災害の爪痕に立ち向かっています。

中善並木写真

 本研究科・本学部の特色は、何といってもそれぞれの専門分野の第一線で活躍する教員と少人数の学生との間に醸成される研究教育一体となった深い信頼関係にあります。川内キャンパスにある「中善並木」 http://www.law.tohoku.ac.jp/faculty/ は、日本家族法学の父といわれ、民法学界に偉大な足跡を残された中川善之助名誉教授の名にちなむもので、中川先生と学生との間の深い交流から生まれたものとして有名です。この「中善並木」に代表される古き良き伝統は、川内キャンパスにある法学部や研究大学院だけでなく、片平キャンパスにある法科大学院や公共政策大学院にも受け継がれてきました。学生と研究者教員・実務家教員がともに、演習や研究会の後、桜並木を歩き町を散策しながら学問を論じるところが、私たちのキャンパスです。今年もまもなく中善並木が、災害の後も変わらぬ美しい花を咲かせて春の盛りを告げてくれるでしょう。東北大学法学部・法学研究科も、仙台の地で、危機に際して改めて確認される連帯感に支えられて、復興の努力を続けています。

2011年4月6日
水野先生の直筆サイン

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