弁護士 官澤 里美
「法科大学院について」

1.私と法科大学院

 私は、東京大学法学部で三ケ月章先生の民事訴訟法と裁判法の講義を受講したのですが、三ケ月章先生が学問的なことだけではなく法曹のやりがいや責任についても情熱的に語って下さったため、法曹を天職と思うようになりなんとか司法試験に合格して弁護士になり現在に至っています。

 弁護士になってからも、三ケ月章先生の影響なのか、法律の楽しさや法曹のやりがいを教えるのが好きになり、依頼されると講義や講演を引き受けていたため、現在では中学校から東北大学の大学院、各種民間企業、裁判所等いろいろなところで年間200時間以上お話しをするような状態となってしまっています。

 そのような経歴からか、現在、仙台弁護士会の法科大学院検討特別委員会の副委員長、日弁連の法科大学院設立運営協力センターの委員をさせて戴いており、本日法科大学院について報告させて戴くようなこととなりました。なお、意見にわたる部分については個人的なものであることを御了解下さい。

2.法科大学院設立への動向

 平成13年6月12日付け司法制度改革審議会意見書に法科大学院について平成16年4月からの学生受入れ開始を目指して整備されるべきであると明記され、全国各地で平成16年4月の法科大学院開校にむけて準備作業が進められており、東北地方においても東北大学、東北学院大学、岩手大学等が法科大学院設立を計画していると聞いております。

 また、平成14年9月に法科大学院・新司法試験関連の法案を国会に提出するということで、制度の検討が関係機関において急ピッチで進められております。

 どのような要件が備われば法科大学院が設立できるかの基準である「設置基準」については中央教育審議会法科大学院部会で検討されており、設立された法科大学院がどのような要件を満たせばその大学院の卒業生に司法試験受験資格が認められるかの基準である「評価基準」についても別途検討が進められております。理論的には、第三者評価機関が評価基準に基づいて第三者評価(適格認定)を継続的に実施し、基準を満たさない法科大学院は認定取消しとなることもあるわけですが、在学生に不測の不利益を与えないように適切な配慮が必要と思われます。

 法科大学院のカリキュラムについては、日弁連や文部科学省チーム、いくつかの大学の案が発表されてきており、これから開校が迫るにつれて具体的な教材の作成も本格化すると思われます。

 法科大学院への入学者選抜、新司法試験、新司法修習についても、検討が開始されております。

 入学者選抜については、法学部以外の学部出身者・社会人からも広く受け入れるため、標準修業年限は3年・法学既習者は2年とされているところ、法学既習者の認定をどのように行なうかがひとつの問題になってくると思われます。

 新司法試験については、法科大学院の教育内容を踏まえた新たなものに切り替わるわけであり、その具体的な内容も検討課題ではありますが、法科大学院を卒業していない人たちの受験資格をどの程度認めるか、いわゆるバイパスの問題が大きな問題となっております。法科大学院でプロセスとして養成するとの制度趣旨からして、バイパスは真にやむをえない事例に限るべきであると日弁連は考え主張しております。

 新司法修習については、期間をどの程度にするか、法科大学院で実務的教育も受けることを考慮して司法修習生に一定の権限を認めるか等が問題になってくると思われます。

 弁護士会としては、必要とされる弁護士からの実務家教員を確保できるかどうか心配しておりましたが、アンケートを行なったところ思っていた以上に教員を希望する弁護士がおり、安堵しているところです。

3.法科大学院への期待

 法科大学院については、いろいろと意見が分かれるところ・大変なところもあります。

 しかし、実務家と研究者が協力して法曹養成について力を注げば、「国民の社会生活上の医師」として、国民の期待に応えられる、公益的活動も通常の仕事もしっかり行なう法曹が増えることとなり、素晴らしいことだと思います。また、法科大学院を通じての実務家と研究者の交流は、実務の理論化・研究の実務化に繋がることとなり、双方にも有益なこととなると思っております。

 以上