2013(平成25)年度

日時 4月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 鈴木 法日児 氏
報告判例 大阪高決平成23年8月24日(平成23年(ラ)第578号)判時2140号19頁
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号を前提として行った遺産分割審判に対する抗告審において、本件相続開始時(平成20年12月27日)においては、国内的、国際的な環境の変化が著しく、相続平等化を促す事情が多く生じており、法律婚を尊重するとの本件規定の立法目的と嫡出子と非嫡出子の相続分を区別することが合理的に関連するとはいえず、このような区別を放置することは、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えているというべきであり、本件規定を合憲とした最高裁平成7年7月5日大法廷決定、最高裁平成12年1月27日判決、同平成15年3月28日判決、同平成15年3月31日判決、同平成16年10月14日判決、同平成21年9月30日決定は、いずれも本件の相続開始よりも8年以上前に開始した相続に関するものであり、本件相続開始時においては状況が変化しており、本件とは事案を異にするとして、民法900条4号を憲法14条1項、13条及び24条2項に違反して無効と判断したうえで、非嫡出子と嫡出子の法定相続分が平等であることを前提にして遺産分割の処分が行われた事例。
原審 平成23年4月20日大阪家判(審判/平成22年(家)第4805号)判時2140号22頁
報告者 中嶋 直木 氏
報告内容(研究報告) 地方自治体の「主観的(な)」法的地位の構造-現代ドイツ法理論の検討を中心として-
参考文献 (1)人見剛「行政権の主体としての地方公共団体の出訴資格」法律時報81巻5号(2009)65頁以下、(2)斎藤誠「地方自治の手続的保障」都市問題96巻5号(2005)48頁以下(同『現代地方自治の法的基層』(有斐閣・2012)125頁以下所収)
日時 5月18日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 菊地 洋 氏
事件 東京地判平成25年3月14日(平成23(行ウ)63号)判例集未登載
成年被後見人となった原告が、成年被後見人は選挙権を有しないとする公職選挙法11条1項 1号の規定により選挙権を付与しないとされたため、同規定は違憲であるとして、原告が次回の衆議院議員及び参議院議員の選挙で投票することのできる地位にあることの確認を求めた事案において、本件訴えが裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に該当しないとはいえないとして、同訴えを適法とした上で、成年被後見人から選挙権を剥奪しなければ、選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難であるとは認め難く、また、選挙権を行使するに足る判断能力を有する成年被後見人から選挙権を奪うことは成年後見制度が設けられた趣旨に反することなどからすると、公職選挙法11条1項1号は選挙権に対する「やむを得ない」制限とはいえず、同号のうち成年被後見人の選挙権を否定した部分は違憲であり無効であるとして、請求を全部認容した事例。
報告者 稲葉 馨 氏
事件 最三小判平成25年3月26日 (平成22(受)2101号)裁時1576号8頁
1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合。
2 一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとされた事例。
(一審)京都地判平成21年10月30日(平成19(ワ)2302号)判時2080号54頁
(控訴審)大阪高判平成22年7月30日(平成21(ネ)3080号)判例集未登載
日時 6月15日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 山岸 喜久治 氏
事件 最二小判平成24年12月07日(平成22(あ)762)国家公務員法違反被告事件
裁時1569号2頁,判時2174号21頁,判タ1385号94頁
管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない一般職国家公務員が、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず、公務員による行為と認識し得る態様によることなく行った本件の政党の機関紙及び政治的目的を有する文書の配布は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえず、国家公務員法102条1項、人事院規則14-7第6項7号、13号により禁止された行為に当たらないとされた事例。
(一審)東京地判平成18年6月29日(平成16(特わ)973)
(控訴審)東京高判平成22年03月29日(平成18(う)2351) 判タ1340号105頁
報告者 稲村 健太郎 氏
事件 最判平成25年3月21日(平成22年(行ヒ)242)裁時1576号2頁
資本金等が一定額以上の法人の事業活動に対し臨時特例企業税を課すことを定める神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)の規定と地方税法72条の23第1項本文(平成15年法律第9号による改正前は72条の14第1項本文)。
(一審)横浜地判平成20年3月19日(平成17年(行ウ)第55号)判時2020号29頁
(控訴審)東京高判平成22年2月25日(平成20年(行コ)第171号)判時2074号32頁
日時 7月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 千國 亮介 氏
事件 東京地判平成23年7月21日(平成19年(ワ)4657号)第二次大戦戦没犠牲者合祀絶止等請求
訟務月報58巻10号3405頁
原告ら(被告神社において合祀されている戦没者の親族)が、被告国が憲法20条3項及び憲法89条に反して原告らに無断で戦没者の情報を被告神社に提供し、被告神社が原告らの意思に反して戦没者を合祀した結果、原告らの有する追悼の自由等の人格権が侵害され、精神的苦痛を被ったとして、被告らそれぞれに対し、損害賠償を請求した事案において、合祀行為自体により、原告らの信教の自由が侵害されたとか、その他の法的利益が侵害されたとは認められないとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
報告者 中原 茂樹 氏
報告内容 「大規模災害と補償」
日時 9月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 伊藤 純子 氏
事件 東京地判平成25年5月29日平成23年(ワ)第6049号損害賠償請求事件
原告らが、婚姻に際して夫婦の一方に氏の変更を強いる民法750条は、憲法13条及び憲法24条1項2項により保障されている権利を侵害し、また女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約16条1項に違反することが明白であるから、国会は民法750条を改正し、夫婦同氏制度に加えて夫婦別氏制度という選択を新たに設けることが必要不可欠であるにもかかわらず、なんら正当な理由なく長期にわたって立法措置を怠ってきたことから、当該立法不作為は国家賠償法1条1項上の違法な行為に該当すると主張して、慰謝料の支払いを求めた事案において、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
報告者 和泉田 保一 氏
事件 最一小判平成25年3月21日(平成23(行ツ)406号)裁時1576号1頁
普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法であるとしても私法上無効ではない場合における、当該契約に基づく債務の履行としてされた支出命令の適法性。
(一審)福岡地判平成23年4月19日(平成21(行ウ)53号)判例地方自治357号33頁
(控訴審)福岡高判平成23年9月21日(平成23(行コ)24号)判例地方自治357号18頁
日時 10月19日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 高橋 勇人 氏
事件 名古屋高判平成24年5月11日(平成22(ネ)1281号)判時2163号10頁
発声障害のある控訴人市議会議員が、市議会において第三者の代読による発言を求めたが、第三者の代読を認めず、市議会および被控訴人(一審被告)議員らは、音声変換装置を用いて発言するよう求めたとして、被控訴人(一審被告)市に対しては国家賠償法1条1項により、被控訴人議員らに対しては民法709条、719条により慰謝料を請求し、原審が、市に対する請求のうち慰謝料10万円を認めた事案において、原判決を変更し、被控訴人市に対し、控訴人へ300万円及び遅延損害金の支払いを認めた事例。
(一審)岐阜地判平成22年9月22日(平成18(ワ)892号)判時2099号81頁
報告者 藤波 英也 氏
事件 最二小判平成23年9月30日(平成21(行ツ)173号)判時2132号39頁
所得税に係る長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額につき他の各種所得の金額から控除する損益通算を認めないこととした平成16年4月1日施行に係る平成16年法律第14号による改正後の租税特別措置法31条の規定を,同年1月1日以後に個人が行う同条1項所定の土地等又は建物等の譲渡について適用するものとしている平成16年法律第14号附則27条1項の規定は,憲法84条の趣旨に反しない」とされた事例。
(一審)東京地判平成20年2月14日(平成18(行ウ)603号、604号、606号、607号)訟月56巻2号197頁
(控訴審)東京高判平成21年3月11日(平成20(行コ)110号)訟月56巻2号176頁
日時 11月16日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 淡路 智典 氏
事件 京都地判平成25年10月7日 (平成22(ワ)2655号)裁判所HP
原告が設置運営する朝鮮学校に対し,隣接する公園を違法に校庭として占拠していたことへの抗議という名目で3回にわたり威圧的な態様で侮蔑的な発言を多く伴う示威活動を行い,その映像をインターネットを通じて公開した被告らの行為は,判示の事実関係の下では,原告の教育事業を妨害し,原告の名誉を毀損する不法行為に該当し,かつ,人種差別撤廃条約上の「人種差別」に該当するとして被告らに対する損害賠償請求を一部認容し,また,一部の被告が上記学校の移転先周辺において今後同様の示威活動を行うことの差止め請求を認容した事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 松澤 陽明 氏
報告内容 1)東京高判平成24年3月28日(平成24(行コ)9号)判例地方自治372号11頁(控訴審)
2)東京地判平成23年12月13日(平成22(行ウ)507号)判例地方自治372号12頁(一審)
寺院敷地内の動物用墓地が地方税法348条2項3号の境内地に該当しないとされた事例。
日時 12月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 河合 正雄 氏
事件 大阪高判平成25年9月27日(平成25(行コ)45号)判例集未登載
控訴人(原告)が、公職選挙法11条1項2号が憲法に違反していることの確認及び控訴人が次回の衆議院議員の総選挙において選挙権を有していることの確認を求めるとともに、選挙権を違法に否定されたことにより精神的苦痛を受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求した事案の控訴審において、公職選挙法11条1項2号が受刑者の選挙権を一律に制限していることについてやむを得ない事由があるということはできず、同号は、憲法15条1項及び3項、憲法43条1項並びに憲法44条ただし書に違反するとした上で、国家賠償法上、その廃止立法不作為が違法であるということはできないとして、控訴を棄却した事例。
(一審)大阪地判平成25年2月6日(平成22(行ウ)230号)裁判所ホームページ掲載判例※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 太郎良 留美 氏
事件 大阪地判平成25年5月23日(平成23(わ)625号)判例集未登載
馬券購入行為から生じた所得は、原則として、一時所得に該当するが、本件の馬券購入行為については、回数、金額が極めて多数、多額に達しており、その態様も機械的、網羅的なものであること等から、これにより生じた所得は雑所得に該当し、外れ馬券を含めた全馬券の購入費用などが必要経費に当たるとした事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 1月18日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 鈴木 法日児 氏
事件 最二小判平成25年1月11日(平成24(行ヒ)279号)民集67巻1号1頁
薬事法施行規則等の一部を改正する省令により、郵便等販売を行う場合は、第一類・第二類医薬品の販売又は授与は行わない旨の規定が設けられたことについて、インターネットを通じた医薬品販売を行う事業者である被上告人らが、上記改正省令は、新薬事法の委任の範囲外の規制を定めるものであって違法である等として、上告人らが第一類・第二類医薬品につき郵便等販売をすることができる権利の確認等を求めた事案の上告審で、上記改正省令は、いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとして、本件上告を棄却した事例。
(一審)東京地判平成22年3月30日(平成21(行ウ)256号)民集67巻1号45頁
(控訴審)東京高判平成24年4月26日(平成22(行コ)168号)民集67巻1号221頁
報告者 三輪 佳久 氏
事件 大阪地判平成24年6月14日(平成22(ワ)9431号)判時2158号84頁
原告Aが、被告Cから暴行を加えられ、これにより加療1か月間を要する右肩甲骨骨折等の傷害を負い、また、同傷害事件の刑事裁判において、検察庁の担当者から公判期日の通知を受けなかったため、被害者等通知制度により公判期日の通知を受ける利益等を侵害されたところ、被告らは共同不法行為責任を負うなどと主張し、被告Cに対しては不法行為に基づき、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、連帯して損害賠償の支払を求めたなどの事案において、被告Cの原告らに対する不法行為責任を認め、また、大阪地方検察庁の検察官が原告らに本件刑事事件の公判期日を通知しなかったことによって、同検察官は、原告らの被害者等通知制度により公判期日の通知を受ける法的利益を違法に侵害したものと認められるとした上で、被告らによる共同不法行為の成立については否定しつつ、原告A及びその法定代理人親権者である原告Bの請求をそれぞれ一部認容した事例。
日時 3月15日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 松村 芳明 氏
事件 最大決平成25年9月4日(平成24(ク)984号 平成24(ク)985号)判時2197号10頁
平成13年7月に死亡したAの遺産につき、Aの嫡出子(その代襲相続人を含む。)である相手方らが、Aの嫡出でない子である抗告人らに対し、遺産の分割の審判を申し立てた事件で、原審は、民法900条4号ただし書の規定のうち、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分(本件規定)は、憲法14条1項に違反しないと判断した事案で、A相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたとして、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反し無効であるとし、本決定の違憲判断は、Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当であるとした事例。
(第一審)東京家裁(審判)平成24年3月26日(平成22(家)3942号)判例集未登載
(抗告審)東京高判平成24年6月22日(平成24(ラ)955号)判例集未登載
報告者 大竹 隆 氏
事件 東京地判平成25年7月26日(平成24(行ウ)354号)判例集未登載
原告が、相続により夫から取得した不動産の譲渡に係る所得を分離長期譲渡所得の金額に計上して平成21年分所得税の確定申告をした後、譲渡所得のうち既に相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値(相続税評価額)は所得税法9条1項15号の本件非課税規定により非課税とすべきであることなどを主張して、上記不動産に係る譲渡所得を零円とする平成21年分所得税の本件更正請求をしたところ、税務署長から、平成22年11月15日付けで、上記主張を容れない内容の減額更正処分を受けたため、被告国に対し、本件更正処分の一部の取消しを求めている事案において、本件各譲渡に係る譲渡所得のうち既に相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値について、本件非課税規定により譲渡収入金額から排除すべきであることを理由とする本件更正請求は理由がないとし、原告は、争点に関する部分のほかに本件更正処分の根拠及び適法性を争っていないことからすれば、平成21年分所得税について原告の納付すべき税額は別紙記載のとおりであると認められ、本件更正処分における原告の納付すべき税額はこれと同額であるから、本件更正処分は適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。