2012(平成24)年度

日時 4月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 伊藤 純子 氏
事件 名古屋高判平成23年12月21日(平成23年(ネ)第866号)
父である被相続人の非嫡出子として出生した控訴人が,遺産のすべてを控訴人出生後に婚姻した妻に遺贈したことについて,遺留分減殺請求をし,その遺留分について非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と定める民法900条4号ただし書及びこれを準用する同法1044条は憲法14条1項に違反して無効であるから,嫡出子と同じ割合の遺留分を有すると主張して,上記妻の相続人である被控訴人らに対し,遺留分減殺請求権に基づく土地所有権の一部移転登記手続等を求めた訴訟において,被相続人が1度も婚姻したことがない状態でその非嫡出子として出生した子について,被相続人がその後婚姻した者との間に出生した嫡出子との関係で民法900条4号ただし書を準用する民法1044条を適用することは,その限度で憲法14条1項に違反して無効であるとして,嫡出子と同じ割合による遺留分減殺請求権に基づく請求を認めた事案。裁判所データ(一審)名古屋地方裁判所豊橋支部判平成23年6月24日(平成19年(ワ)第312号)

裁判所データ

報告者 中原 茂樹 氏
事件 大阪高判平成23年8月25日(平成22年(ネ)第2031号)判時2135号60頁
アスベスト(石綿)工場の元労働者が石綿肺等に罹患したことにつき国の規制権限不行使を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が棄却された事案
(一審)大阪地判平成22年5月19日(平成18年(ワ)第5235号ほか)判時2093号3頁
日時 5月19日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 西山 千絵 氏
報告判例 最一小判平成23年4月28日(平成21(受)2057 )民集65巻3号1499頁
新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に記事を掲載するに当たり当該記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合。
(一審) 東京地判平成19年9月18日、判タ1279号262頁
(控訴審)東京高判平成21年7月28日(平成19(ネ)5006 )判タ1304号98頁
報告者 和泉田 保一 氏
報告判例 最一小判平成23年10月27日(平成22(行ツ)463)判時2133号3頁
市の住民が市長に対し損失補償契約に基づく金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えが不適法とされた事例。
(一審) 長野地判平成21年8月7日(平成19年(行ウ)24ほか)判タ1334号68頁
(控訴審)東京高判平成22年8月30日(平成21年(行コ)298)判タ1334号58頁
日時 6月16日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 菊池 洋 氏
報告判例 最一小判平成平成24年2月2日(平成21(受)2056)判時2143号72頁
1)人の氏名,肖像等を無断で使用する行為がいわゆるパブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合。
2)歌手を被写体とする写真を同人に無断で週刊誌に掲載する行為がいわゆるパブリシティ権を侵害するものではなく不法行為法上違法とはいえないとされた事例。
(原審)知的財産高判 平成21年08月27日(平成20(ネ)10063)判時2060号137頁
(原々審)東京地判 平成20年7月4日(平成19年(ワ)第20986)判時2023号152頁
報告者 松澤 陽明 氏
報告判例 研究報告-福井地判平成23年10月5日及び東京高判平成平成24年4月26日を素材として―
1)福井地判平成23年10月5日(平成21(行ウ)8号)判例地方自治353号99頁
2)東京高判平成24年4月26日(平成22(行コ)168号)判例集未搭載
日時 7月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 伊藤 純子 氏
事件 最大判平成18年3月1日(平成12(行ツ)62号;平成12(行ヒ)66号)民集60巻2号587頁
1)市町村が行う国民健康保険の保険料については,これに憲法84条の規定が直接に適用されることはないが,同条の趣旨が及ぶと解すべきであるところ,国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
2)旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)が,8条(平成6年旭川市条例第29号による改正前のもの及び平成10年旭川市条例第41号による改正前のもの)において,国民健康保険の保険料率の算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で,12条3項において,旭川市長に対し,保険料率を同基準に基づいて決定して告示の方式により公示することを委任したことは,国民健康保険法81条に違反せず,憲法84条の趣旨に反しない。
3)旭川市長が旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)12条3項の規定に基づき平成6年度から同8年度までの各年度の国民健康保険の保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことは,憲法84条の趣旨に反しない。
4)旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)19条1項が,当該年において生じた事情の変更に伴い一時的に保険料負担能力の全部又は一部を喪失した者に対して国民健康保険の保険料を減免するにとどめ,恒常的に生活が困窮している状態にある者を保険料の減免の対象としていないことは,国民健康保険法77条の委任の範囲を超えるものではなく,憲法25条,14条に違反しない。
(1〜3につき補足意見がある。)
(一審)旭川地判平成10年4月21日(平成7(行ウ)1号)民集60巻2号672頁
(控訴審)札幌高判平成11年12月21日(平成10(行コ)8号)民集60巻2号713頁
報告者 飯島 淳子 氏
報告判例 「公法における人の属性―住民」
日時 9月15日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 山岸 喜久治 氏
事件 最大決平成23年5月31日(平成23(す)220号)刑集65巻4号373頁
最高裁判所長官として裁判員制度の実施に係る司法行政事務に関与したことが同制度の憲法適合性を争点とする事件についての忌避事由に当たるか
報告者 稲村 健太郎 氏
事件 1)最二小判平成24年1月13日(平成21(行ヒ)404号)民集66巻1号1頁(判時2149号52頁)
2)最一小判平成24年1月16日(平成23(行ヒ)104号、平成23(行ヒ)105号)判時2149号58頁
1、所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」の支出の主体
2、会社が保険料を支払った養老保険契約に係る満期保険金を当該会社の代表者らが受け取った場合において,上記満期保険金に係る当該代表者らの一時所得の金額の計算上,上記保険料のうち当該会社における保険料として損金経理がされた部分が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとされた事例(以上、事件①について)
3、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断に違法があるとされた事例(以上、事件②について)
(下級審省略)
日時 10月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 茂木 洋平 氏
報告内容 非嫡出子の相続分差別の違憲性について
参照判例 1)大阪高決平成23年8月24日(平成23(ラ)578号)判時2140号19頁
2)最大決平成7年7月5日(平成3(ク)143号)民集49巻7号1789頁
報告者 茂木 洋平 氏
事件 最三小判平成22年3月2日(平成19行(ヒ)105号)民集64巻2号420頁
ホステスの業務に関する報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合における、所得税法施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」の意義
(一審)東京地判平成18年3月23日(平成17行(ウ)8号)民集64巻2号453頁
(控訴審)東京高判平成18年12月13日(平成18行(コ)103号)民集64巻2号487頁
日時 11月17日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 西山 千絵 氏
事件 最一小判平成24年2月16日‐差戻上告審‐(平成23(行ツ)122号)民集66巻2号673頁
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為の違憲性を解消するための手段として,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて市が上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸することが,憲法89条,20条1項後段に違反しないとされた事例。
(差戻控訴審)札幌高判平成22年12月6日(平成22(行コ)4号)民集66巻2号702頁
報告者 三輪 佳久 氏
事件 東京高判平成23年9月29日(平成22(行コ)183号)判時2142号3頁
「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」の締結に至るまでの日本政府と米国政府との間の交渉において,日本が米国に対して同協定で規定した内容を超える財政負担等を国民に知らせないままに行う合意があったとして,外務大臣及び財務大臣に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づき,当該合意を示す行政文書及びこれに関連する行政文書の開示をそれぞれ請求したところ,いずれの行政文書についても保有していないこと(不存在)を理由とする各不開示決定を受けたため,開示請求者がした当該各不開示決定の取消しを求める請求が,棄却された事例。
(一審)東京地判平成22年4月9日(平成21(行ウ)120号)判時2076号19頁
日時 12月15日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 石澤 淳好 氏
事件 最二小判平成21年11月30日(平成20(あ)13)刑集63巻9号1765頁
1)分譲マンションの各住戸にビラ等を投かんする目的で,同マンションの共用部分に立ち入った行為につき,刑法130条前段の罪が成立するとされた事例
2)分譲マンションの各住戸に政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で,同マンションの共用部分に管理組合の意思に反して立ち入った行為をもって刑法130条前段の罪に問うことが,憲法21条1項に違反しないとされた事例。
(一審)東京地判平成18年8月28日(平成17(刑わ)61号)刑集63巻9号18846頁
(控訴審)東京高判平成19年12月11日(平成18(う)2754)刑集63巻9号1880頁
報告者 大沼 洋一 氏
事件 最一小判平成21年12月17日(平成21(行ヒ)145)民集63巻10号2631頁
東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合に,建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することの可否。
(一審)東京地判平成20年4月18日(平成19(行ウ)336号;平成19(行ウ)638号)民集63巻10号2657頁
(控訴審)東京高判平成21年1月14日(平成20(行コ)217)民集63巻10号2724頁
日時 1月19日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 河北 洋介 氏
事件 最大判平成24年10月17日(平成23(行ツ)64号)
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,平成22年7月11日施行の参議院議員通常選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたが,上記選挙までの間に上記規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 生田 長人 氏
報告タイトル 「災害関係法制の課題と改革の方向」(仮題)
日時 2月16日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 佐藤 雄一郎 氏
事件 福岡地判平成24年6月13日(平成22(ワ)1608号)
福岡県警が防犯協議会に暴力団関係書籍の撤去を要請したことで、コンビニから漫画本が撤去されたことにより、精神的苦痛を被ったとして、原作者が福岡県に対し行った国賠請求が棄却された事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 高橋 正人 氏
事件 最二小判平成24年2月3日(平成23(行ヒ)18号)民集66巻2号148頁
土壌汚染対策法3条2項の通知が抗告訴訟の対象になる行政処分であるとされた事例。
(一審)旭川地判平成21年9月8日(平成20(行ウ)9号)民集66巻2号158頁
(控訴審)札幌高判平成22年10月12日(平成21(行コ)14号)民集66巻2号176頁
日時 3月16日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室(法学部棟3階)
報告者 松村 芳明 氏
事件 大阪高判平成22年12月21日(平成21(ネ)792号)判時2104号48頁
靖国神社に合祀されている戦没者の遺族が、本件合祀及びその継続行為は、遺族が戦没者との家族的なつながりによって感じる敬愛追慕の情を機軸とする人格権を侵害すると主張したことにつき、遺族が、靖国神社への合祀継続により戦没者に対する遺族としての敬愛追慕の情が害され、耐え難い苦痛を感じているからといって、直ちに遺族の権利又は利益が侵害されたことにはならず、本件では敬愛追慕の情を機軸とする人格権が、損害賠償や差止請求の根拠となるような法的利益であると解するのは相当でないとされた事例。
(一審)大阪地判平成21年2月26日(平成18(ワ)8280号/平成19(ワ)9419号)判時2063号40頁
報告者 前川 勤 氏
報告内容 租税法規の解釈における検討課題
1)最一小判平成21年12月3日(平成20(行ヒ)43号)民集63巻10号2283頁、および、2)最一小判平成22年6月3日(平成21年(受)第1338号)民集64巻4号1010頁を素材として-