2008(平成20)年度

日時 4月19日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 曽我 洋介
事件 東京地判平成18年10月3日 判例集未登載
総務省の後援するコンピュータネットワークセキュリティに関する国際セミナーにおける講演につき,総務省の担当職員が,後援者として,主催者に対し,上記講演の問題点や懸念される点を指摘し,その解消を求めた行為が検閲に当たらず,表現の自由を侵害する違法行為にも当たらないとされた事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 和泉田 保一
事件 東京高判平成18年9月27日 判時1961号45頁
(1)河川区域が廃川敷地となったと認定され、河川管理権限に基づいて行なわれた工事請負契約等が違法とされた事例。
(2)先行する原因行為を前提としてなされた当該職員の行為自体は違法なものとはいえないとして、当該職員に対して賠償命令をすることを求める請求が棄却された事例。
日時 5月17日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 佐藤 雄一郎
事件 札幌高裁判決 平成19年6月26日 判例集未登載
市がその所有する土地上に、神社の建物等を設置することを許し、土地を同神社の敷地として無償で使用させるなどしていることは、政教分離原則に違反する行為であり、当該使用貸借契約を解除し、前記神社建物等の撤去を請求しないことは、違法に財産の管理を怠るものであるとして、市の住民である原告らが市長である被告に対し、上記怠る事実の違法確認を求めた事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
報告者 高橋 正人
事件 長野地裁判決 平成17年2月4日 判例タイムズ1229号221頁
薬事法に基づく医療用具の回収命令処分について、弁明の機会の付与(行政手続法13条1項2号)の手続が執られず、その手続の省略が許される緊急の必要性(同条2項1号)があるとも認められないから違法であるとして、医療用具の回収命令処分が取り消された事例。
日時 6月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 早川 のぞみ
事件 最二小判平成19年9月28日 民集第61巻6号2345頁
(1)国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)が,同法所定の学生等につき国民年金の強制加入被保険者とせず,任意加入のみを認め,強制加入被保険者との間で加入及び保険料免除規定の適用に関し区別したこと,及び立法府が上記改正前に上記学生等を強制加入被保険者とするなどの措置を講じなかったことと憲法25条,14条1項。
(2)立法府が,平成元年法律第86号による国民年金法の改正前において,初診日に同改正前の同法所定の学生等であった障害者に対し,無拠出制の年金を支給する旨の規定を設けるなどの措置を講じなかったことと憲法25条,14条1項。
報告者 大沼 洋一
事件 大阪高判平成20年3月6日 判例集未登載
場外車券発売施設設置許可処分取消請求訴訟における周辺住民の原告適格。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 7月19日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 佐藤 寛稔
事件 東京地判平成18年3月31日 判例タイムズ1209号60頁
(1)有名芸能人がテレビ番組等で公開していた性的趣向と同一性を有する記事についてプライバシーの権利の侵害を認めなかった事例
(2)被写体が原告本人であるか否かにかかわらず、写真の説明と併せ読むと読者が原告であると考えるような場合に、肖像権侵害と同様に、その人格的利益を侵害したといえるか(積極)
(3)防犯ビデオの映像を写真週刊誌に掲載した場合に、防犯ビデオの設置目的を超えて違法に肖像権を侵害するものであるとされた事例
報告者 稲村 健太郎
事件 福岡高判平成19年10月25日
相続の対象である生命保険契約に基づく年金受給権に基づき毎年受け取る個々の年金に所得税を課すことの可否※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 9月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 西山 千絵
事件 最二小判平成20年4月15日 判時2006号159頁
(1)捜査機関が公道上及びパチンコ店内にいる被告人の容ぼう,体型等をビデオ撮影した捜査活動が適法とされた事例。
(2)捜査機関が公道上のごみ集積所に不要物として排出されたごみを領置することの可否。
報告者 荒木 修
事件 東京地判平成19年10月3日 判例集未登載
建築基準法上のいわゆる「2項道路」に該当するにもかかわらず、被告区役所の職員から該当しない旨の誤った回答により損害を被ったとして提起された国賠訴訟において、その損害賠償請求が棄却された事例。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 10月18日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 阿部 智洋
事件 最大判平成20年6月4日 判時2002号3頁
(1)国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認めていることにより国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅くとも平成17年当時において,憲法14条1項に違反する 。
(2)日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子は,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の国籍取得の要件が満たされるときは,日本国籍を取得する。
報告者 太郎良 留美
事件 (1)福岡地判平成20年01月29日 判時2003号43頁
原告が、住宅を譲渡したことにより長期譲渡所得の計算上損失が生じたとして、所得税に係る更正の請求をしたところ、法律の改正により損益通算できなくなったとして、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、本件通知処分の取消しを求めた事案で、本件改正で遡及適用を行う必要性・合理性は一定程度認められはするものの、本件改正の遡及適用が、国民に対してその経済生活の法的安定性又は予見可能性を害しないものであるということはできず、本件改正は、特例措置の適用もなく、損益通算の適用を受けられなくなった原告に適用される限りにおいて、租税法規不遡及の原則(憲法84条)に違反し、違憲無効というべきであるとし、請求を認容した事例。
(2)東京地判平成20年02月14日 判例集未登載
原告らが、平成16年分の所得税につき、同年2月に不動産を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を所得税法69条1項の規定に従い他の各種所得の金額から控除すべきであるとして更正の請求をしたところ、理由がない旨の通知処分を受けたことから、その取消を求めた事案で、平成16年改正所得税法附則27条1項により平成16年改正租税特別措置法31条1項後段の規定を平成16年1月1日から同年12月31間での間に行われた土地等又は建物等の譲渡について適用することは、その個々の譲渡についてみれば納税者が一定の不利益を受け得ることは否定できないものの、納税者の平成16年分所得税の納税義務の内容自体を不利益に変更するのではなく、遡及適用することに合理的必要性が認められ、かつ、納税者においても、既に平成15年12月の時点においてその適用を予測できる可能性がなかったとまではいえないのであるから、平成16年改正所得税法附則27条1項が租税法律主義に反するということはできないとされた事例※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 11月15日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 石澤 淳好
事件 東京地判平成18年10月12日 判時1966号63頁
宗教法人の代表役員等の地位にあることの確認を求める訴えにおいて、その地位にかかわる懲戒処分は、当該処分が全く事実上の根拠に基づかない場合、当該処分の手続が著しく正義に反する場合、処分内容が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱したと認められる場合にのみ無効と判断すべきであり、当該処分についてこれらの無効事由は認められないとされた事例。
報告者 佐々木 洋一
事件 (1)最小三判平成18年10月24日 民集第60巻8号3128頁
(2)最小一判平成18年11月16日 判時1955号37頁
(3)最小二判平成19年7月6日 裁時1439号4頁
納税者が所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例。
日時 12月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 岡本 寛
事件 最二小判平成19年2月2日(平成16(受)1787) 民集第61巻1号86頁
従業員と使用者との間において従業員が特定の労働組合に所属し続けることを義務付ける内容の合意がされた場合において,同合意のうち,従業員に上記労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は,公序良俗に反し無効である、とされた事例。
報告者 日野 辰哉
事件 (1)大阪地決平成19年8月10日(平成19年行ク第40号)賃金と社会保障1451号38頁
市町村の教育委員会が当該市町村の区域内に住所を有する児童生徒等について,就学すべき学校として当該市町村の設置する特別支援学校を指定した上,児童生徒等の保護者に対し,当該学校の入学期日を通知する行為の行政処分性
(2)大阪高決平成20年3月28日(平成19行ス第25号)
未成年の子の母親が,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいてした市教育委員会が前記未成年の子を市の設置する特別支援学校である養護学校に就学させるべき旨の指定通知をすべきことの仮の義務付けを求める申立てが,認容された事例※(2)判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 1月17日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 山岸 喜久治
事件 最二小判平成18年11月27日(平成17(受)1158 民集 第60巻9号3437頁
(1)大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質。
(2)大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質。
(3)大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否。
(4)大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力。
(5)大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無。
(6)大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質。
(7)大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性。
(8)大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号所定の平均的な損害等の主張立証責任。
(9)大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果。
(10)専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
報告者 松澤 陽明
事件 広島地決平成20年2月29日 判例集未登載
公有水面埋立法2条に基づく公有水面の埋立免許付与処分の仮の差止めが、一部の申立人に対しては「償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性」があるとは言えないとの理由で、一部の申立人に対しては申立人適格を有しないとの理由で却下された事案。※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。
日時 2月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 山元 一
事件 平成17年12月28日大阪高裁判決(京都大学事件)判例タイムズ1223号145頁
(1)平成15年法律第117号による改正前の大学の教員等の任期に関する法律(任期法)による任期及び同法3条1項を受けて定められた当該大学の規則等による任期制は、いずれも憲法23条に違反しないとされた事例。
(2)国立大学の学長が、任期法に基づき任期付き教授として任用された者に対して行なった任期満了の通知は、再任をしないとの決定をしたことと併せて考慮しても、行政事件訴訟法3条2項の処分に当たらないとされた事例。
報告者 高橋 正人
事件 千葉地判平成19年8月21日 判時2004号62頁、判タ1260号107頁
(1)産業廃棄物処理施設の設置許可処分の取消訴訟と周辺住民の原告適格。
(2)県知事が事業者に対してした産業廃棄物処理施設の設置許可処分につき、周辺住民が生命、身体等に係る重大な被害を直接に受けるおそれのある災害等が想定される程度に事業者の経理的基礎を欠く違法があるとして、右許可が取り消された事例。
日時 3月21日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学部大会議室
報告者 新井 誠
事件 平成18年9月26日東京地裁判決 判時1952号105頁
平成19年10月31日東京高裁判決 判時2009号90頁
(1)私立学校の教育内容の変更が生徒の保護者の学校選択の自由を違法に侵害するとして、学校側の損害賠償請求が認められた事例。
報告者 中嶋 直木
事件 大阪地判平成19年6月6日(大和都市管財事件一審) 判時1974号3頁・判タ1263号71頁。
大阪高判平成20年9月26日(控訴審) 判例集未登載
(1)抵当証券業者に対して財務局長が行なった更新登録が、登録更新居比重の存在を看過してなされた違法なものであったとして、更新登録後に抵当証券業者から抵当証券を購入した顧客に対して、国賠法一条一項に基づいて国が責任を負うとされた事例。
本報告では、主に各判決の以下の部分が扱われます。
一審は、『第四 争点に対する判断 1 争点1について』(判時30〜37頁;判タ166〜173頁)、『5 争点5について(1)、(2)、(4)〜(7)』(判時68〜72頁、108〜126頁;判タ206〜210頁、249〜268頁)、『6 争点6について』(判時 126〜128頁 判タ268〜270頁)。
控訴審は、『第3 2 本件登録更新について国賠法上の違法性の判断基準』(公判HP5〜11頁)、『3 本件登録更新時・・・近畿財務局長も認識し又は認識しえたといえるか (1)、(5)〜(6)』(公判HP11頁、56〜60頁)、『4 近畿財務局長・・・その裁量逸脱の程度〜7 本件更新登録の国賠法上の違法性の有無(まとめ)』(公判HP60〜67頁)、『9 近畿財務局長の故意、過失の有無について』(公判HP68頁)。」※本件判決は、未だ判例集未登載であり、裁判所のホームページにも掲載されておりませんので、郵送で通知を受けている方については判決文を同封いたしますが、そうでない方については、こちら をクリックして頂ければ入手できるようになっております。