2015(平成27)年度

日時 4月18日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 松村 芳明 氏(専修大学他非常勤講師)
事件 大阪高判平成27年1月21日(平成26(う)705号)判例集未登載
被告人は、設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせるクラブを経営するものであるが、共犯者と共謀の上、大阪府公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、不特定の来店客にダンスをさせ、かつ、酒類等を提供して飲食させ、もって許可を受けないで風俗営業を営んだとして、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反として起訴された第一審判決で、風営法2条1項3号に定める「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」の意義について、形式的にその文言に該当するだけでなく、「その具体的な営業態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにととまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる営業を指す」との限定的な解釈を行った上で、被告人の本件営業はこれに該当しないとして、無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、原判決は、3号営業に対する規制目的を性風俗秩序の維持と少年の健全育成に限定し、他の規制目的を考慮していないと解される点で相当でなく、また、3号営業の解釈自体においても、3号営業に対する事前許可性と両立し難い不適当な基準を定めた点で、法令の解釈適用を誤ったものではあるが、ダンスをさせる営業をその態様を問わず一律に規制対象とすることは合理性を欠くと解釈したことは相当であり、本件公訴事実について3号営業を営んだことに当たらないため犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した原判決の結論は正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
(一審)大阪地判平成26年4月25日(平成24(わ)1923号)裁判所HP
報告者 千葉 実 氏(岩手県立大学特任准教授)
事件 最二小判平成24年4月20日(平成21(行ヒ)235号)判時2168号45頁
大阪府大東市の住民である上告人が、市が非常勤職員に退職慰労金を支給していることは給与条例主義を定めた地方自治法204条の2等の規定に違反し違法で あるとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、市長であったAに対する損害賠償請求等をすることを求めるとともに、同項1号に基づき、公金の支 出の差止めを求めたところ、控訴審係属中に市議会が市の損害賠償請求権を放棄する旨の議決をし、これによって当該請求権は消滅したとして控訴審が上告人の 請求を棄却したことから、上告した事案において、退職慰労金の支給に係る違法事由の有無及び性格やAらの故意又は過失等の帰責性の有無及び程度を始め、退 職慰労金の支給の性質、内容、原因、経緯及び影響、上記議決の趣旨及び経緯、当該請求権の放棄又は行使の影響、本件訴訟の経緯、事後の状況などの考慮され るべき事情について審理を尽くすことなく、上記議決が適法であるとした原審の判断には審理不尽の違法があるとして、原判決を一部破棄し、本件を原裁判所に 差し戻した事例。
(第一審)大阪地判平成20年8月7日(平成19(行ウ)232号)判タ1300号172頁
(差戻控訴審)大阪高判平成25年3月27日(平成24(行コ)79号)判例集未登載

 

日時 5月16日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 菊地 洋 氏(岩手大学准教授)
事件 東京高判平成26年1月30日(平成25(ネ)5975、6802号)判例地方自治387号11頁
原告(被控訴人兼附帯控訴人)が、被告秦野市(控訴人兼附帯被控訴人)の農業委員会及び環境保全課の職員らに対し、秦野市内の原告所有土地について農家用住宅を建築することや井戸を設置することなどを相談したところ、その職員らが違法な説明をしたために、農家用住宅の建築が遅延し、また、水道を敷設せざるを得なくなったなどと主張して、被告に対し国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償の支払を求めたところ、請求を一部認容したため、被告が控訴し、原告が附帯控訴をした事案において、被告職員の説明ないし対応が国家賠償法上違法であるとは認めることはできないなどとして、原判決中の被告敗訴の部分を取り消して原告の請求を棄却し、原告の附帯控訴を棄却した事例。
(一審)横浜地裁小田原支部判平成25年9月13日(平成23(ワ)955号)判例地方自治383号9頁
報告者 中原 茂樹 氏(東北大学教授)
事件 大阪地判平成26年5月23日(平成26(行ク)58、59、60、61、62号)裁判所HP
一般乗用旅客自動車運送事業を営む申立人らが、運輸局長に届け出た運賃が、運輸局長が本件公示によって指定するタクシー事業に係る旅客の運賃の範囲内にないことを理由として、輸送施設の当該タクシー事業のための使用の停止又は事業許可の取消しを受けるおそれがあるなどと主張して、本件不利益処分等の差止め等を求める本案事件を提起するとともに、本件不利益処分等の仮の差止めを求めた事案において、本件公示は運輸局長の有する裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものといえるから、運輸局長が申立人らに対して本件運賃変更命令、本件運賃変更命令に違反したことを理由としてする本件自動車等の使用停止処分等をすることもまたその裁量権の範囲を超え又はその濫用となるものといえるとし、申立てを一部認容した事例。
(抗告審)大阪高裁決定平成27年1月7日(平成26(行ス)29号)判例集未登載

 

日時 6月20日 土曜日 13時半〜
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 西山 千絵 氏(沖縄国際大学専任講師)
事件 東京地判平成26年1月15日(平成23(ワ)15750号,32072号,平成24(ワ)3266号)判時2215号30頁
イスラム教徒である原告らが、警視庁、警察庁及び国家公安委員会は、モスクの監視など、原告らの信教の自由等の憲法上の人権を侵害し、また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律や東京都個人情報の保護に関する条例に違反する態様で個人情報を収集、保管及び利用し、その後、情報管理上の注意義務違反等により個人情報をインターネット上に流出させた上、適切な拡大防止措置を執らなかったもので、これらの行為は国家賠償法上違法であると主張し、警視庁の責任主体である被告東京都並びに警察庁及び国家公安委員会の責任主体である被告国に対して、国家賠償法1条1項等に基づき、損害賠償等の支払いを求めた事案において、被告東京都の責任を認め、被告東京都に対する請求を一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
(控訴審)東京高判平成27年4月14日(平成26(ネ)1619号)判例集未登載
報告者 高橋 正人 氏(静岡大学准教授)
事件 最一小決定平成26年9月25日(平成26(行フ)2号)民集68巻7号781頁
厚生労働大臣が徳島県内に居住する抗告人に対して国民年金法による障害基礎年金の裁定請求を却下する旨の処分をしたため、抗告人が相手方を相手にその取消しを求めて徳島地方裁判所に提起した本案訴訟(徳島地方裁判所平成26年(行ウ)第2号障害基礎年金不支給決定取消請求事件)につき、相手方が、管轄違いを理由に、行政事件訴訟法12条4項により、抗告人の普通裁判籍の所在地を管轄する高松高等裁判所の所在地を管轄する高松地方裁判所に移送することを申し立てたところ、原審は、日本年金機構の下部組織である事務センターは行政機関に当たらないから行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当せず、本案訴訟は徳島地方裁判所の管轄に属しない旨を判示して、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法16条1項により、本案訴訟を高松地方裁判所に移送すべきものとしたため、抗告人が抗告した事案において、原審の判断には、審理不尽の結果、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原決定は破棄を免れないとし、本件事務センターによる本件裁定請求の審査の方法及び内容や厚生労働大臣に対する審査結果の報告の内容等について審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
(一審)高松地判平成27年3月27日(平成26(行ク)1号)民集68巻7号788頁
(抗告審)高松高判平成26年5月9日(平成26(行ス)2号)民集68巻7号791頁

 

日時 7月18日(土)13時30より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 川口 かしみ 氏(早稲田大学博士後期課程)
事件 最三小判平成27年3月10日(平成25(行ツ)230号)裁判所時報1623号8頁
日本国籍を有する父とフィリピン共和国籍を有する母との間に嫡出子として同国で出生し同国籍を取得した原告(控訴人・上告人)らが、出生後3か月以内に父 母等により日本国籍を留保する意思表示がされず、国籍法12条の規定によりその出生の時から日本国籍を有しないこととなったため、出生により日本国籍との 重国籍となるべき子で、国外で出生したものにつき上記の国籍留保の要件等を定める同条の規定が上記子のうち日本で出生した者等との区別において憲法14条 1項等に違反し無効であると主張して、被告(被控訴人・被上告人。国)に対し、日本国籍を有することの確認を求めた事案の上告審において、国籍法12条は 憲法14条1項に違反するものではないとした同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、上告を棄却した事例。
(一審)東京地判平成24年3月23日(平成22(行ウ)38号他)判タ1404号106頁
(控訴審)東京高判平成25年1月22日(平成24(行コ)177号)判タ1404号122頁
報告者 太郎良 留美 氏(山梨学院大学准教授)
事件 最二小判平成25年7月12日(平成24年(行ヒ)79号)民集67巻6号1255頁
区分建物を共有し、その敷地権に係る固定資産税の納税義務を負う上告人が、土地課税台帳に登録された上記敷地権の目的である各土地の価格を不服として、市 固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の決定を受けたため、その取消し等を求めた事案の上告審において、土地の基準年度 に係る賦課期日における登録価格が、当該土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るとき、あるいは、これを上回るものでは ないが、その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定すること のできない特別の事情が存する場合であって、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るときは、当該登録価格の決定は違法とな るとした事例。
(一審)東京地判平成22年9月10日(平成22(行ウ)59、119号)民集67巻6号1292頁
(控訴審)東京高判平成23年10月20日(平成22(行コ)336号)民集67巻6号1304頁
(差戻控訴審)東京高判平成26年3月27日(平成25年(行コ)285頁)判例地方自治385号36頁
日時 9月12日(土)13時30より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 池田 弘乃 氏(山形大学専任講師)
事件 静岡地裁浜松支部判平成26年9月8日(平成24(ワ)627号) 判時2243号67頁
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた原告甲及び同人が代表取締役を務める原告会社が、株主会員制のゴルフ場を経営する被告会社及び同ゴルフ場の運営団体である被告クラブに対し、原告甲の性別変更を理由とする被告らの一連の行為は、憲法14条1項の趣旨等を包含する公序良俗に反し違法であると主張して、共同不法行為に基づき、損害賠償金の支払いを求めた事案において、被告らによる入会拒否及び株式譲渡承認拒否は、憲法14条1項及び国際人権B規約26条の趣旨に照らし、社会的に許容し得る限界をこえるものとして違法であるとして、原告甲の請求を一部認容し、その余の請求及び原告会社の請求を棄却した事例。
(控訴審)東京高判平成27年7月1日(平成26(ネ)5258号)判例集未登載
報告者 米田 雅宏 氏(北海道大学教授)
研究報告  「現代法における請求権-「客観法違反の是正を求める権利」の法的位置付け-」
参考文献:「団体訴訟の制度設計」論究ジュリスト12号(2015)所収の各種論文
・千葉恵美子ほか編『集団的消費者利益の実現と法の役割』(商事法務、2014年)所収の各種論文
・山本隆司「客観法と主観的権利」長谷部恭男ほか編『現代法の動態(第1巻:法の生成/創設)』(岩波書店、2014年)
・曽和俊文「法執行システムの展開と行政法理論」公法研究65巻(2003年)(『行政法執行システムの法理論』(有斐閣、2011年)所収)
・仲野武志『公権力の行使概念の研究』(有斐閣、2007年)
・小早川光郎『行政訴訟の構造分析』(東京大学出版会、1983年)

 

日時 10月31日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 関 俊彦 氏(東北大学名誉教授(商法)・弁護士)
研究報告 憲法における財産権の保障に関する異次元説
報告者 和泉田 保一 氏(山形大学准教授)
事件 名古屋高裁金沢支部判平成27年6月24日(平成26(行コ)8号)判例集未登載
原告会社が、処分行政庁たる県公安委員会から風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律に基づく店舗型性風俗特殊営業の廃止命令を受けたため、被告県に対して同処分の取消しを求めた件につき、原告の請求を認容した原判決を不服として被告が控訴した控訴審において、原判決は失当であり、本件控訴に理由があるとして、原判決が取り消され、原告(本件被控訴人)の請求が棄却された事例。
(一審)金沢地判平成26年9月29(平成24(行ウ)1号)判例地方自治396号69頁

 

 

日時 11月28日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 千國 亮介 氏(岩手県立大学専任講師)
事件 大阪地判平成25年4月19日(平成22(行ウ)35号、(ワ)3293号)判時2226号3頁
生活保護を廃止する処分を受けた原告が、再度生活保護の申請を行ったところ、本件第二次申請を却下する処分を受けたことから、被告に対し、本件却下処分が違法であるとして、その取消しを求めるとともに、損害賠償を求めた事案において、原告は、本件指示及び本件廃止処分当時、「障害の状況により利用し得る公共交通機関が全くないか又は公共交通機関を利用することが著しく困難であり、自動車による以外に通院等を行うことが極めて困難であることが明らかに認められる」場合に該当していたと認められ、自動車保有要件をいずれも充足していたものであり、原告に対して本件自動車の処分を指示した本件指示は、生活保護法4条1項の解釈適用を誤った違法なものであり、原告が本件指示に従わないことを理由としてされた本件廃止処分も違法であるとし、請求を一部認容した事例。
報告者 斉藤 徹史 氏(東北公益文科大学専任講師)
事件 札幌高判平成24年5月25日(平成23(行コ)32号)判例地方自治370号10頁
北海道瀬棚郡今金町の住民である控訴人が、被控訴人に対し、地方自治法242条の2第1項2号に基づき、今金町長が平成22年8月13日付けでした、被控訴人の行政財産である本件土地をA社及び有限会社B社に駐車場として使用を許可する旨の処分の取消しを求めた事案の控訴審において、本件使用許可処分と本件使用料減免処分は一体の関係にあり、本件使用料減免処分を含めた本件使用許可処分は住民訴訟の対象となる財務会計行為に該当するが、上記処分に係る今金町長の裁量権の行使に逸脱又は濫用があると認めることはできないから、本件使用料減免処分を含めた本件使用許可処分の取消しを求めた控訴人の請求は理由がなく、控訴人の請求は全体として棄却されるべきであって、本件使用許可処分取消しの訴えを却下した原判決は相当でないとして、これを取り消した事例。
(一審)函館地判平成23年11月11日(平成22(行ウ)4号)判例地方自治370号17頁
日時 12月19日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 杉山 有沙 氏(早稲田大学助教)
事件 大阪高判平成27年6月19日(平成25(行コ)211号)裁判所HP原告(被控訴人)の妻が、公務により精神障害を発症し、自殺したため、原告が、遺族補償年金の支給請求をするとともに、遺族特別支給金等の支給申請をしたが、いずれも不支給とする旨の決定を受けたため、被告(控訴人)地方公務員災害補償基金に対し、上記処分の取消しを求めたところ、請求が認容されたため、被告が控訴した事案において、今日の社会情勢の下においても、妻については、年齢を問わずに「一般に独力で生計を維持することが困難である」と認めて、遺族補償年金を受給できるものとするが、夫については、「一般に独力で生計を維持することが困難である」と認められる一定の年齢に該当する場合に遺族補償年金を受給できるものとする旨の遺族補償年金の受給要件に係る区別を設けた本件区別は、合理性を欠くということはできないとし、原判決を取り消し、原告の請求を棄却した事例。(原審)大阪地判平成25年11月25日(平成23(行ウ)178号)裁判所HP
報告者 須田 守 氏(京都大学准教授)
研究報告 研究報告: ドイツ取消訴訟における事案の成熟性参考文献: 須田守「取消訴訟における『完全な審査』(1)~(3)」法学論叢178巻1~3号

 

日時 1月16日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 高橋 勇人 氏(東北大学大学院博士課程後期)
事件 大阪高判平成26年11月14日(平成26(行コ)107号)

判例集未登載死刑確定者として大阪拘置所に収容中の被控訴人(原告)が、被控訴人が書いた原稿が同封された信書の発信の申請をしたところ、不許可処分を受けたことから、控訴人(被告、国)に対し、同処分の取消しを求め、原審は、同処分は裁量権の範囲を逸脱したとして、請求を認容し、処分を取り消したとの事案において、控訴審は、同信書について、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条2項所定の「その発受を必要とする事情」があるとは認められないから、同処分には、裁量の範囲を逸脱した違法があるということはできないとして、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例。

(一審)平成26年5月22日(平成25(行ウ)96号)判例集未登載

報告者 高畑 柊子 氏(東北大学大学院博士課程後期)
事件 最一小判平成26年10月9日(平成26(受)771号)民集68巻8号799頁、(平成23(受)2455号)判時1613号13頁

大阪府泉南地域に存在した石綿(アスベスト)製品の製造、加工等を行う工場又は作業場において、石綿製品の製造作業等又は運搬作業に従事したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する者又はその承継人である被上告人(原告)らが、上告人(被告)国に対し、上告人が石綿関連疾患の発生又はその増悪を防止するために労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前)及び労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、第一審では原告の請求を一部認容・一部棄却したため、双方が控訴し、原審では、上告人は石綿関連疾患にり患した本件元従業員らにつき、各損害の2分の1を限度として、損害賠償責任を負うと判断したため、上告人が上告した事案において、原判決中、被上告人X1に関する上告人敗訴部分は破棄を免れず、同部分につき、同被上告人の請求を棄却した第一審判決は正当であるとして同被上告人の控訴を棄却し、上告人のその余の上告は棄却した事例。

(控訴審)大阪高判平成25年12月25日(平成24(ネ)1796号) 民集68巻8号900頁、平成23年8月25日(平成22(ネ)2031号)判時2135号60頁

(一審)大阪地判平成24年3月28日(平成21(ワ)14616号他)裁判所HP、平成22年5月19日(平成18(ワ)5235号他)裁判所HP

日時 2月20日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 山岸 喜久治 氏(宮城学院女子大学教授)
事件 大判昭和34年12月16日(昭和34(あ)710号)刑集13巻13号3225頁

アメリカ合衆国空軍の使用する飛行場内民営地の測量に反対する集団によって境界柵が破壊されたところ、右集団に参加していた被告人らが、他の参加者と意思相通じて、正当な理由がないのに右境界柵の破壊された箇所から右飛行場に立入った事実につき、被告人らに無罪が言い渡されたため、検察官が上告した事案で、本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであるとした事例(いわゆる砂川事件)。

(一審)東京地判昭和34年3月30日(昭和32(特わ)368号、367号)刑集13巻13号3305頁

(差戻一審)東京地判昭和36年3月27日(昭和35(特わ)6号)判時255号7頁

(差戻控訴審)東京高判昭和37年2月15日(昭和36(う)951号)判タ131号50頁

(差戻上告審)最二小判昭和38年12月25日(昭和37(あ)994号)判時359号12頁

報告者 北島 周作 氏(東北大学教授)
研究報告 「行政上の主体と実定法」
日時 3月12日(土)13時30分より※研究会終了後、年度納めの懇親会を予定しております。
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 御幸 聖樹 氏(横浜国立大学准教授)
事件 最大判平成27年12月16日(平成25(オ)1079)裁判所HP
原告(控訴人、上告人)が、女性について6箇月の再婚禁止期間を定める民法733条1項の規定は、憲法14条1項及び憲法24条2項に違反すると主張し、前記規定を改廃する立法措置をとらなかった立法不作為の違法を理由に、被告(被控訴人、被上告人)に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求め、第一審及び控訴審とも原告の請求が棄却されたため、原告が上告した事案において、平成20年当時、女性について6箇月の再婚禁止期間を定める民法733条1項の規定のうち100日超過部分が憲法に違反するものとなってはいたものの、これを国家賠償法1条1項の適用の観点からみた場合には、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反することが明白であるにもか
かわらず国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないとして、立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきであり、原告の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、上告を棄却した事例(意見、補足意見、反対意見がある)。
(一審)岡山地判平成24年10月18日(平成23(ワ)1222号)判時2181号124頁
報告者 松澤 陽明 氏(弁護士)
事件 十和田市立新渡戸記念館廃館処分取消訴訟