2016(平成28)年度

日時 4月16日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 川口 かしみ 氏(早稲田大学大学院博士課程)
事件 大阪地決平成27年1月27日(平成26(わ)124号他)判例集未登載

被告人に対する窃盗、建造物侵入被告事件において、(1)泳がせ捜査については、捜査機関が一連の犯行の後まで被告人らを逮捕しなかったことは適法であり、検察官の公訴提起に裁量権の逸脱はなく、(2)GPS捜査については、令状主義の精神を没却するような重大な違法はないとし、検察官の公訴提起に裁量権の逸脱はなく、弁護人指摘の各証拠の証拠能力も否定されないとし、取調べ済みの証拠のうち一部更新して取調べ、検察官から証拠調べ請求のあった証拠を証拠として採用すると決定した事例。

報告者 飯島 淳子 氏(東北大学教授)
研究報告 「社会」改革と行政法理論

 

日時 5月21日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 菊地 洋 氏(岩手大学准教授)
事件  大阪地判平成26年12月17日(平成24(行ウ)222号)判時2264号103頁

大阪市交通局長は、被告大阪市交通局自動車部の職員である原告に対し、同人が入れ墨の有無等を尋ねる調査に所定の書面で回答しなかったことが職務命令違反(地方公務員法32条)に当たるとして、地方公務員法29条1項1ないし3号並びに大阪市職員基本条例28条1項及び別表11号に基づき、懲戒処分としての戒告処分をしたことにつき、前記調査は憲法13条等に違反する違憲・違法な調査であるから、前記調査に回答するよう命じた職務命令及び本件処分も違法であるとして、本件処分の取消しを求めるとともに、前記調査、本件処分等により精神的損害等を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用相当額75万円の損害賠償並びに遅延損害金の支払を求める事案において、原告の請求のうち、本件処分の取消しを求める訴えは理由があるとして認容することとし,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は理由がないとして棄却した事例。

報告者 高橋  正人 氏(静岡大学准教授)
事件 最三小判平成27年3月3日(平成26(行ヒ)225号)民集69巻2号143頁

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条1項7号のぱちんこ屋の営業に該当する風俗営業を営む上告人が、北海道函館方面公安委員会から風営法26条1項に基づく営業停止処分を受けたため、同委員会の所属する被上告人を相手に、同処分は違法であると主張して、その取消しを求めたところ、原審では、上告人が、処分の効果が期間の経過によりなくなった後においてもなお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)には当たらないとし、本件訴えを却下したため、上告人が上告した事案で、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当であるとし、上告人は、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準である本件規程の定めにより将来の営業停止命令における停止期間の量定が加重されるべき本件処分後3年の期間内は、なお本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものというべきであり、これと異なる見解の下に、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第一審判決を取消し、本件処分の違法事由の有無につき審理させるため、本件を第一審に差し戻すべきであるとした事例。

(一審)札幌地判平成25年8月23日(平成24(行ウ)39号)民集69巻2号160頁

(控訴審)札幌高判平成26年2月20日(平成25(行コ)28号)民集69巻2号176頁

(差戻第一審)札幌地判平成27年6月18日(平成27(行ウ)9号)判例集未登載

 

日時 6月18日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 高橋 勇人 氏(東北大学大学院)
事件  最大判平成27年12月16日(平成26(オ)1023号)判時2284号38頁

原告(控訴人、上告人)らが、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定は、憲法13条、憲法14条1項、憲法24条1項及び2項等に違反すると主張し、前記規定を改廃する立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由に、被告(被控訴人、被上告人)国に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めたところ、第一審及び控訴審とも原告らの請求が棄却されたため、原告らが上告した事案において、前記規定を改廃する立法措置をとらない立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではなく、原告らの請求を棄却すべきものとした原審の判断は是認することができるとして、上告を棄却した事例。

一審:東京地判平成25年5月29日(平成23(ワ)6049号)判時2196号67頁

原審:東京高判平成26年3月28日(平成25(ネ)3821号)判例集未登載

報告者 中嶋  直木 氏(熊本大学専任講師)
事件  仙台高判平成27年7月15日(平成27(行コ)5号)判時2272号35頁

目的外に使用された補助金にかかる交付決定を取り消してその返還を求めないことが違法な怠る事実であると主張して提起された住民訴訟において、その取消決定が行われていない時点においても、地方自治法242条1項所定の「財産」に属する補助金返還請求権の管理を怠る行為に該当すると解された事例。

一審:盛岡地判平成26年12月19日(平成25(行ウ)4号)判時2272号37頁

 

日時 7月23日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者  成原 慧 氏(東京大学大学院情報学環客員研究員)
事件  大阪高判平成27年2月18日(平成26(ネ)2415号)判例集未登載

控訴人(原告)が、インターネット上で検索サービス等を提供するウェブサイトを運営する被控訴人(被告)に対し、同サイトで控訴人の氏名を検索語として検索を行うと、控訴人の逮捕に関する事実が表示されるところ、これにより控訴人の名誉が毀損され、プライバシーが侵害されているとして、不法行為に基づき、損害賠償金の支払いを求めるとともに、控訴人が逮捕された旨の事実の表示および同事実が記載されているウェブサイトへのリンクの表示の各差止めを求めたところ、原審は請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案において、控訴人の不利益と公表する理由とを比較すると、後者が前者に優越するから、違法性が阻却され、不法行為は成立しないとして、控訴を棄却した事例。

一審:京都地判平成26年8月7日(平成25(ワ)2893号)判例集未登載

報告者  和泉田  保一 氏(山形大学准教授)
事件   最一判平成27年12月14日(平成27(行ヒ)301号)最時1642号26頁

鎌倉市長が、都市計画法29条1項による開発許可をしたことについて、開発区域の周辺に居住する被上告人らが、上告人を相手に、上記開発許可の取消しを求め、原審は、上記許可に係る開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付された後においても、本件許可の取消しを求める訴えの利益は失われないと判断し、これが失われるとして被上告人らの訴えを却下した第1審判決を取消して本件を第1審に差し戻すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、原審の判断は、正当として是認することができるとして、上告を棄却した事例。

一審:横浜地判平成26年9月10日(平成25年(行ウ)69号)判自406号80頁

原審:東京高判平成27年2月25日(平成26年(行コ)408号)判自406号77頁

 

日時 9月10日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 松村 芳明 氏(専修大学非常勤講師)
事件 高松高判平成28年4月25日(平成27(ネ)144、254号)判例集未登載

一審被告在特会の会員らである一審被告らが、一審原告らを抗議対象者とする街頭宣伝活動を行った際、一審原告組合の事務所内に住居侵入の上、一審原告bらの執務する事務所内において、拡声器を用いて大音量による示威活動を行い、一審被告fにおいてその映像をインターネットを通じて公開したことなどについて、一審原告組合が、上記示威活動等やその映像をインターネットで公開する行為は、業務を妨害し、名誉を毀損する不法行為に該当すると主張して、一審被告在特会に対しては民法715条1項に基づき、一審被告dらに対しては民法709条、民法719条1項に基づき、損害賠償を求めた等の事案において、一審原告bは、本件各示威行動等やその映像をインターネット上で公開するという不法行為により、私生活の平穏・人格権を侵害されるとともにその名誉を毀損され、外傷後ストレス障害に罹患した等として、一審原告らの控訴に基づき、原判決を変更した事例。

(一審)徳島地判平成27年3月27日(平成25(ワ)282号)判例集未登載

報告者 笹村 恵司 氏(弁護士)
事件 大阪高判平成27年10月13日(平成27(行コ)2号)判時2296号30頁

大阪市の公立小中学校等に勤務する教職員によって組織された職員団体である被控訴人(原告)が、主催する教育研究集会の会場として、各小学校の施設の目的外使用許可の申請をしたところ、各校長が不許可とする処分をしたことから、控訴人(被告。大阪市)に対し、各不許可処分の無効確認を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、1審が、無効確認を却下し、国家賠償請求を一部認容した事案において、両校長に国家賠償法上の違法及び過失を認めることはできないとして、原判決中控訴人敗訴部分を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例。

(一審)大阪地判平成26年11月26日(平成24(行ウ)164号)判時2259号114頁

 

日時 10月22日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 西山 千絵 氏(琉球大学准教授)
事件 最一判平成27年12月7日(平成26(あ)1118号)裁判所HP

旅館業法違反事件の上告審において、被告人本人の上告趣意のうち、旅行業の登録制度に関し、憲法22条1項違反をいう点について、旅行業法29条1号、旅行業法3条、旅行業法2条1項は、憲法22条1項に違反する旨主張するが、旅行業法の上記各規定は、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的として、旅行業を営む者について登録制度を採用し、無登録の者が旅行業を営むことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであるため、上記各規定が、憲法22条1項に違反しないとした事例。

(原審)東京高判平成26年6月20日(平成26(う)462号)判例集未登載

報告者 稲村 健太郎 氏(福島大学准教授)
事件 最一判平成27年10月8日(平成26(行ヒ)167号)判タ1419号72頁

権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該 社団からの借入金債務の免除を受けることにより得た利益が所得税 法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に当たるとされた事例。

(一審)岡山地判平成25年3月27日(平成24(行ウ)6号)税資263号12184順号

(原審)広島高判平成26年1月30日(平成25(行コ)9号)訟月62巻7号1287頁

日時 11月19日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 佐藤 雄一郎 氏(熊本県立大学准教授)
研究報告 政治活動と財政法-政治倫理条例の視点から
報告者 中原 茂樹 氏(東北大学教授)
研究報告 課徴金制度をめぐる最近の動向について参考文献: 中原茂樹「景品表示法上の課徴金について」小早川光郎先生古稀記念『現代行政法の構造と展開』(有斐閣、2016年)793頁独占禁止法研究会「課徴金制度の在り方に関する論点整理(案)」

 

日時 12月17日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 仲野 武志 氏(京都大学教授)
研究報告 武力行使・武器使用の法的規律
報告者 奥田 喜道 氏(跡見学園女子大学助教)
事件 福岡高裁宮崎支部決定平成28年4月6日(平成27(ラ)33号)判例集未登載

人格権侵害を理由として九州電力の川内原発の稼働などを差止めることを求める申立が却下されたことに対してなされた即時抗告に対して、主に①リスクの取り扱いにかかわる司法審査のあり方、②地震による原発事故の可能性と人格権侵害およびそのおそれの有無、③火山による原発への影響の可能性と人格権侵害およびそのおそれの有無、④その他の事象(竜巻、テロリズム・戦闘行為)による原発への影響の可能性と人格権侵害およびそのおそれの有無、⑤避難計画等の実効性と人格権侵害およびそのおそれの有無について審査し、いずれにも理由がないとして棄却した事例。

一審:鹿児島地裁決定平成27年4月22日(平成26(ヨ)36号)判例集未登載

 

日時 1月28日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 高橋 勇人 氏(東北大学博士課程後期)
研究報告 フランス憲法判例研究Décision n° 2003-475 DC du 24 juillet 2003 ( Loi portant réforme de l’élection des sénateurs )
報告者 千葉 実 氏(岩手県立大学特任准教授)
事件 公害等調整委員会裁定平成25年3月11日(平成24(ふ)1号)判時2182号34頁

申請人が、砂利採取法16条に基づき砂利採取計画の認可申請をしたところ、不認可処分を受けたことから、同処分を取り消すとの裁定を求めた事案において、砂利採取跡地の埋戻しの履行を担保する保証措置を具体的に裏付ける書面を提出することを砂利採取認可の要件とする条例の条項は、当該地方公共団体の砂利採取の実情に適合した有効かつ合理的なものであり、かつ、確実な埋戻しを図るための必要最小限度の規制方法で、それによって砂利採取業者に過大な負担や不当な義務を負わせるものではないときは、砂利採取法及び砂利の採取計画等に関する規則との間に矛盾抵触はなく、適法であるとして、申立人の本件裁定申請を棄却した事例。

 

日時 2月18日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(法学研究科棟3階)
報告者 久村 靖高 氏(東北大学大学院修士課程)
事件 東京高判平成25年2月19日(平成24(ネ)1030号)判時2192号30頁

本件総選挙において、帰化により日本国籍を取得したものの、公職選挙法21条1項の3か月記録要件を満たさないとして選挙人名簿へ登録がされず、選挙権を行使できなかった原告(控訴人)が、同項は、憲法前文等に違反し、原告の選挙権を不当に制約・剥奪するものであり、国会による同条の立法行為及び選挙直前3か月以内に帰化した者が選挙権を行使できるような立法措置を怠った不作為により精神的損害を被ったとして、損害賠償を求めたところ、請求が棄却されたため、控訴した事案において、3か月という期間は決して短期のものとはいえないが、実効性のある不正投票防止を実現するために要する期間として上記期間を設定したことが、国会に委ねられた裁量を逸脱した合理性を欠く許容しがたいものと断ずることはできないとし、控訴を棄却した事例。

一審:東京地判平成24年1月20日判時2192号38頁

上告審:最一判平成26年5月26日判例集未登載

報告者 千國 亮介 氏(岩手県立大学専任講師)
事件 広島地判平成28年7月20日(平成27(行ウ)25号)判例集未登載

受刑者である原告が次回の衆議院議員及び参議院議員の総選挙において投票することができる地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年12月14日に実施された衆議院議員選挙において選挙権の行使を否定され、精神的苦痛を受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案において、公職選挙法11条1項2号が受刑者について選挙権及び被選挙権を有しないものと定めたのは、受刑者が、重大な犯罪を犯し、一般社会とは厳に隔離されるべき者として拘禁されていることに着目して、そのような者に対する制裁として選挙人の資格を停止することとし、そのことが選挙が公明かつ適正に行われることに資するとした趣旨と解されると示し、受刑者であることを欠格事由とする上記規定は、立法府の合理的裁量の範囲を逸脱するものではなく、刑罰に伴う制裁として必要かつ合理的なものであるとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。

 

日時 3月18日(土)14時~17時
場所 東北大学 片平キャンパス エクステンション教育研究棟 3階301講義室(〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2丁目1−1)
講演 「持続可能性について、人口減少社会に鑑みて」※講演と質疑の言語はドイツ語になりますが、太田匡彦教授(東京大学)による通訳があります。今回の研究会は、科学研究費助成事業・基盤研究A「人口・復興・地方創生―「人口減少社会」論の構築に向けて」(研究代表者・渡辺達徳)及び同・基盤研究B「行政法の法典化に関する基礎的研究」(研究代表者・山本隆司)との共催となります。
講演者 ヴォルフガング・カール教授(ハイデルベルク大学)(講演者プロフィール)カール教授は1965年生まれ。アウグスブルク大学およびミュンヘン大学で法学・政治学を学んだ後、アウグスブルク大学でライナー・シュミット教授のもと、博士学位(博士論文「環境原理と共同体法」)および教授資格(教授資格申請論文「国家監督」)を取得し、ギーセン大学教授に就任。バイロイト大学教授在任中の2005年、ドイツ国法学者大会で報告(テーマ「文化財・法益としての言語」)。2009年に、エバーハルト・シュミット-アスマン教授の後任として、ハイデルベルク大学教授に就任。基本法ボン版コンメンタールの共編者、Mohr社「行政法叢書」の共同監修者、環境法の代表的な概説書の共著者をつとめるなど、ドイツで憲法、行政法、環境法の分野を代表する公法学者の一人である。