東北大学法科大学院メールマガジン

第82号 04/18/2012

◇平成25(2013)年度 東北大学法科大学院入試説明会の開催のお知らせ

 東北大学法科大学院では、下記のとおり入試説明会を開催します。

日時:4月23日(月)12:10-13:30(予定)
場所:東北大学川内南キャンパス 法学部第3講義室
内容:1.東北大学法科大学院の概要
2.平成25(2013)年度 法科大学院入学試験について
3.修了生の弁護士からのお話
4.質疑応答

 事前の申込みは必要ありません。
 東北大学法科大学院の受験を希望される方はもとより、法曹の仕事に関心のある方、法科大学院への進学を考えている方など、多くの方のご参加をお待ちしています。

 問合せ先:東北大学法学研究科専門職大学院係 (022)217-4945

 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/admission/2013/120417-notice.html

◇東北大学法科大学院長ご挨拶

 法科大学院長の佐藤隆之教授による、新入生オリエンテーションでの挨拶をお届けします。

平成24年度オリエンテーション 歓迎の挨拶

東北大学法科大学院長 佐藤隆之

Ⅰ 新入生の皆さん、東北大学法科大学院へのご入学おめでとうございます。
 本日こうして、第9期生として、未修者コース19名、既修者コース39名の総計58名の新入生を迎えることができたことを大変うれしく思います。
 私たちの法科大学院を研鑽の場として選ばれ、新たに仲間となられた皆さんを心から歓迎いたします。

 今年度の入学者数は、80名の学生定員を大きく割り込むこととなりました。東日本大震災の影響が原因であろうと考えていますが、一昨年竣工したエクステンション教育研究棟内の教室や学生自習室は、授業の実施や普段の学習に全く支障のない状態であり、むしろ、教育面では、1クラスの受講者数が少なくなることをうけ、教員一同、よりきめの細かい指導に努めたいと考えているところです。

 さて、法科大学院は、平成16年春、司法制度改革の一環として、わが国の法曹養成制度の一翼を担う重要な教育機関として、全国に新たに設けられました。東北大学法科大学院も、その一つとして、「優れた法曹」となるべき資質と能力を持つ者の養成に努めてきました。
 東北大学法科大学院で教育を受け、平成23年までに新司法試験に合格した者は268名にのぼり、実務法曹として活躍しています。平成17年度(第1期)から平成22年度(第6期)までの修了者が合わせて509名ですので、現時点での合格率は52%余りということとなります(今年5月に初めて受験する平成23年度修了生を除く)。

Ⅱ 本日は、この数字を出発点として、いくつかお話したいと思います。

1 法科大学院制度や司法試験制度をめぐっては、克服すべき課題が山積しており、実際に、多くの批判も聞かれるところです。しかし、東北大学法科大学院では、これまで、研究者、実務家の別を問わず、教員が互いに協力、協働して、教育課程を練り上げ、また日々の教育に取り組んできました。
 多くの修了生が実務法曹となり、また現在修習生として法曹への途を歩んでいることは、私たちの努力が、その内容・方向性において、決して間違ったものでないことを示しているものと自負しています。
 皆さんにおかれても、法曹としての職責を全うする上で不可欠の基盤となる知識、能力を養うために工夫された授業と、指導にあたる教員を信頼して、学習に専心していただきたいと思います。
 もとより、法科大学院の主役は、日夜弛まぬ努力を続けている学生の皆さんです。その努力を評価する上で、新司法試験の合格者数が唯一の基準となるものではありませんが、先に述べた結果は、何よりも、皆さんの先輩達が積み重ねた努力の賜物というべきでしょう。特に、昨年は、試験の2か月前に発生した東日本大震災後の困難を乗り越え、多くの修了生が気持ちを立て直して試験に臨み、その底力を見せてくれました。
 彼らは特別の存在ではありません。このことは、いま、期待と不安の中で、第一歩を踏み出そうとする新入生の皆さんにとって大きな励みとなることでしょう。ぜひ皆さんも先輩方に続いていただきたいと思います。
 また、震災との関係では、皆さんの先輩には、自ら被災しながら、被災地のただ中で法律相談に乗っている弁護士が複数います。今後、法科大学院の行事の中で彼らと交流する機会もあると思いますが、皆さんの中からも、被災者の方の気持ちに寄り添うことのできる法曹が生まれることを期待しています。

2 ただ、法曹となるためには、法科大学院の授業を漫然と受けているだけでは十分ではありません。心に留めておいていただきたいのは、答えが与えられるのを待つ、受け身の姿勢でいてはだめだ、ということです。
 皆さんは、実務法曹として必要とされる素養を身につけるために、自ら、大学院への進学を選択されました。
 しかしながら、授業や採点の際に、出来合いの論証に何ら疑問を感じていないかの応答や答案に出くわすと、この学生は、法律学を学ぶことを面白いと感じているのだろうか、人の人生を左右する法律を一生の仕事として選ぼうというのでしょう、と尋ねたくなります。
 法科大学院の授業は、教員が正解を与えるものではなく、むしろ、学生が提示する、正解であるようにみえる見解を、敢えて俎上に載せ、いろいろな側面から、批判的に点検することによって、それが、どの程度緻密な考慮を行った上で選択された判断なのか、また、他の主張に比して、相対的に説得力に勝る議論といえるのか、の確認に主眼が置かれることなります。判例や基本書の記述を丸暗記しただけでは、そこでの点検によく耐えることができません。求められているのは、見かけ上きれいに整った、誰かが考えた答えではなく、見映えは悪くともその人の思考を経たことばです。
 皆さんは、まず、知識を身につけ、これまでに蓄積された議論を理解することを求められることとなりますが、大学院生である以上、出来合いのお手本の暗記にとどまることなく、従来の議論に疑いを持ち、自ら考え抜く、という経験をできるだけたくさん重ねてほしいと思います。
 弁護士、検察官、裁判官いずれの途を選ぼうと、実務法曹は、これまでに出会ったことのない問題が含まれている紛争に直面した場合に、そこに含まれている問題が何かを見極め、最後は、誰に頼ることなく、自らの力で、また自らの責任で、適切な解決策を導き出していく必要があります。しかし、そのような主体的な判断は、自分の頭で考え抜く日頃の訓練を重ねることなしにできるものではありません。
 倦まず弛まず、学習を続けていくうちに、いつしか、知識の習得だけでは飽き足らなくなり、体得した法的知識を駆使しながら行う、主体的な判断にこそ、面白さを見いだせるようになる、そのときを目指して励んでいただきたいと思います。
 無論、皆さんの知的好奇心を喚起し、また満足させられるような授業をするには、教員の側にも、高度な理論研究と豊富な実務経験による裏付けが不可欠です。東北大学法科大学院の先生方は、実務法曹になるという将来の目標を定めた皆さんの期待をしっかりと受け止め、充実した教育を提供してくださることでしょう。

3 さて、再び数字の話に戻りますと、法科大学院に入学した者の半数近くがその目的を果たせないでいるという事実もまた、法科大学院として重く受け止めなければなりません。
 そこで、私たちは、教育課程を見直し、昨年度から、3年次に、「応用基幹科目」という科目群を新たに設け、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の基本法律7科目について、重要判例や事例問題の検討を通じて、2年次までに学んだ事項に関する理解を確認・補充するとともに、事案の中から問題となり得る点を発見し、その解決に向けた法的議論を論理的に展開し、説得的な結論を導き出すために必要な能力を高めるための教育を行うこととしました。
 第1年次科目、2年次の基幹科目、さらに、新設された3年次の応用基幹科目において、基本法律7科目の理論的基礎を、「なぜそうなるのか」について本当に理解できるまで、つまり、腑に落ちるまで、繰り返し、そして段階的に学ぶことが、足腰の強い法曹を養成するためには重要だと考えています。
 この教育課程の充実が、どのような実を結ぶか、期待しながら見守っているところです。

4 今述べた教育課程とともに、修了生に対する支援のあり方もまた、法科大学院の大きな課題です。
 3月末、私たちは、89名の新修了生(第7期)を送り出しましたが、希望者には、引き続き学生自習室の座席の使用を認めることとしました。彼らの姿を間近で目にすることにより、きっと皆さんも、法曹への道の厳しさを知ることとなるでしょう。
 また、法科大学院修了者の進路についても、裁判官、検察官、弁護士に限らず、例えば、7月には、企業法務部の活動の実際について、広く知ってもらう機会を設けることを予定しています。弁護士の仕事の内容について尋ねられたら、いま皆さんの頭に浮かぶのは、いわゆる法廷弁護士の姿なのではないかと思います。法科大学院修了者の職域として実際にどのようなものがあるのか、今後、情報提供を拡充していきたいと考えています。
 さらに、東北大学法科大学院では、すでに皆さんの先輩方の力を借りて、種々の講座や講演会が実施されています。一昨年11月には、同窓会組織も設立され、昨年に続き、この夏にも、修了生との交流の機会を持つ予定です。また、もう少し時間が経てば、修了生の中から、実務家教員として教壇に立つ者が出てくることになるでしょう。さらに、実務法曹となった修了生から、研究会や講演会の場で、私たち教員が刺激を受けて、理論研究を深化させるといった例も増えてくることと思います。
 法科大学院は、今お話ししたように、修了生と緊密な関係を築きながら発展してゆくべき組織であり、法科大学院のコミュニティというとき、そこには、重要な構成員として、修了生が意識されなければならないという思いを強くしています。
 皆さんが修了生となるのは、まだ何年か先のことですが、東北大学法科大学院が、在学生、そして修了生とともに歩む法科大学院を目指していきたいと考えていることを、是非心に留めておいていただきたいと思います。

 なお、法科大学院修了後の進路としては、実務法曹のみならず、研究者への道も開かれています。
 将来の研究・教育を担う人材を養成する研究大学院では、博士後期課程に、昨年度から、後継者養成コースを設けて、法科大学院修了者を対象に、法科大学院で教鞭を執るべき後継者の育成指導を始めています。
 関心をお持ちの方は、遠慮なく、担当の教員に相談し、3年次に開講される「リサーチペーパー」を受講してみて下さい。
 このコースには、この4月にも、2名の入学者があり、フェローとして、大学から特別の経済的支援を受けながら、研究生活を始めています。
 皆さんの中から、将来の法学研究、法学教育を担う人材が生まれることを期待しています。

Ⅲ 法科大学院では、法曹を目指す多くの仲間と一緒に学習することができることが、従来の司法試験受験生と大きく違う点だと思います。皆さんは、これから、教室のみならず、学生自習室で多くの時間を過ごすこととなるでしょう。法科大学院では、一人ではなかなか前に進めないときも、仲間の考えをよく聞き、自分の考えをぶつける中で、互いに、法の理論と実務についての理解を深めていくという機会を持つことができます。皆さんには、そのような機会を、どうか授業の内外で積極的に持っていただきたい、そして、そうした議論のできる、自由闊達な雰囲気作りに、主体的に関わっていただきたいと思います。
 皆さんは、縁あって同期生となられました。信頼できる友人を一人でも多く得て、法曹としての人生をより豊かにしていただきたいと思います。
 皆さんが法曹を目指されるのは、それぞれが法に精通することを通じて、よりよい社会の実現に貢献したいと考えられているからだと思います。
 本法科大学院において、その原点を忘れることなく、皆さんが互いに切磋琢磨し、高い志を持って法の理論と実務を学ばれることを、そして、よき友人、先輩、教師に出会い、充実した学生生活を送られることを期待しています。

 以上をもちまして、歓迎のご挨拶といたします。

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 アドレスは以下のURLです。ぜひアクセスしてください。

 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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