東北大学法科大学院メールマガジン

第72号 02/28/2011

◇新司法試験 合格体験談

 去る平成22年10月14日(木)に開催された「新司法試験合格者と語る会」における講演概要の第3弾です。
 今回は、須佐千春さんの合格体験談をご紹介いたします。

合格者体験談

須佐千春さん

<自己紹介>
 はじめまして。こんにちは。修了生の須佐と申します。皆さん、今日は勉強の時間を割いてこの会に来て下さり、ありがとうございます。

 私は、平成20年に東北大学を卒業して、その年に東北大学ロースクールに入り、今年の22年に卒業して、試験を受けて、今に至っております。今日は、私の試験までの勉強の取り組み方とそれに対しての自分なりの反省点とよかった点をお話することで、皆さんの今後の試験勉強の何かに役に立てればという風に思います。

<試験本番までの取組み>
 では、まず試験本番までの取り組みということで、L2からL3の前期と、L3の夏季から修了時までと、修了時までから本番という風に分けて話していきたいと思います。

○L2〜L3前期
 まず、L2からL3前期ということですが、私は本当に授業で勉強をしたようなもので、授業の予習・復習が中心になって毎日が忙しく過ぎていくという感じでした。予習では、大体課題が出されると思いますが、それを自分なりにまず考えて、一応答えを出してから、とりあえず基本書を読んで調べ、間違っていたところがあったらそれを考えなおす、そのような感じで予習をして授業に臨んでいました。

 授業では、先生の新たな話を聞いて、知識を増やしたり、考え方を養ったりしました。復習では、授業で勉強した点について、その関連部分について基本書を読むということにしていました。私は基本書を読んでもなかなか頭にあまり定着しない方だったので、自分でワードを使ってノートを作成し、自分なりの言葉でノートを作り、それを定期試験の前に読む、そのような感じで勉強していました。

 このような私の勉強の取り組みに対する評価ですが、多分勉強の仕方は人それぞれで、試験勉強はするが授業についてあまり勉強しないという方もいるかもしれません。しかし、授業の予習・復習というのは、基礎力をつけるのにすごく効率的だと思います。毎日授業がありますし、しかも先生に質問すればちゃんと回答を得られます。私の場合、授業の予習・復習で力をつけていけたと感じております。

○L3の夏期〜L3修了時
 次に、L3の夏期からL3の修了時までの勉強の取り組みですが、この時期になると、だんだん試験勉強について意識し始め、数人で論文対策のゼミを組んでいました。公法系と刑事系、民事系の3つのゼミを組んで、授業の予習復習と並行して、答案を書く練習をしました。赤石さんや佐藤さんもお話されていましたが、書くことは本当に重要で、それも、きちんと時間内に自分で考えて書くことができるというのが大事だと思います。

 答案の型というのはあまり意識しませんでしたが、とりあえず結論を書いて理由を書く。そして、理由の中でその結論を導く際の問題点とその問題に対する回答を書くという感じで、答案の型というものはあまり意識せずに、それぐらいの大きな枠で考えていけるようにしていました。ゼミの他に、試験勉強としては択一対策をどうしてもやらなければいけないということで、時間を決めてタクティスを何問かやるようにしていました。そして、間違った箇所があれば基本書を読んでいました。

 この期間の自分の勉強に対する評価ですが、答案を書く練習はよくできてそれはよかったのですが、択一対策を始めるのが遅かったと思います。確か昨年の9月か10月くらいから始めました。模試もTKCの模試も2回しか受けなかったのですが、その点数もとても褒められたものではなく、確か足きりが215点だったと思いますが、9月と12月の模試の時点では215点に到達していなかったと思います。これは、本当にやばいと思い、試験直前の4月、5月に焦って択一の勉強をしていたような感じです。

 ですから、択一はおろそかにせずに頑張ってやって下さい。多分、素振りと同じでやればやるだけ力がつくので、忙しいとは思いますが、時間を取ってやって頂きたいと思います。

○L3修了時〜試験当日
 L3修了時の3月から試験本番の5月までの試験直前2ヵ月ですが、私は、確かその年の1月末に「コア・カリキュラム」というものが文部科学省から発表されました。いわゆる、公式の論点集のようなものだという話を聞いて、私はこれに飛びつき、「コア・カリキュラム」を一問一答形式で解いていくというすごい事をやろうと思いました。

 それで、実際に民法と会社法と民事訴訟法はやりました。確かにすごく力はつきます。問題がよく考えられていますし、模範的なのでいいのですが、ただ問題数が多すぎて(民法だけで86頁くらいあります)、これを試験直前にやることはお薦めできません。時間があるうち、例えばL2のときとかには、是非やっておいた方がいいと思います。「コア・カリキュラム」の勉強にほとんど時間が取られてしまい、それで択一対策を兼ねるという感じでした。択一の問題集も解くけれども、「コア・カリキュラム」で基本知識をもう一回確認するという感じでした。

 論文対策は、あまりこの時期に答案を書くということはしなくて、一日に一本くらい、今日は刑法というように決めて書いていました。あとは、授業のノート、ゼミのノートを見るという感じでした。やはり自分で作ったノートは、今まで親しんで勉強してきたものですから、すごく知識の定着がよい、頭に入りやすいものでした。

<試験本番での取り組み>
 試験当日の取り組みですが、試験問題は、本当に毎年毎年傾向というものがあまりなく、びっくりするような問題が出ます。今年もびっくりするような問題で、行政法の問題を見たときに会場中がため息でいっぱいになったというような感じでした。

 そのように分からない問題が何問か出ますが、とにかく諦めないで考えるようにしました。答案作成上の技術的な問題というのはあまり気にせずに、とりあえず結論を先に私は書く方だったので結論を書く、そして理由を書く、条文はちゃんと示すというような形で、いつもと変わらずに考えるようにしていました。

<試験までの自分を振り返って>
 試験までこんな感じで勉強してきましたが、自分を振り返って、よかった点と、反省点を総論的にお話したいと思います。

○勝因
 勝因、よかった点は、試験中とにかく諦めなかったことです。今回は本当に予想もしないようなところが出題されてびっくりしましたが、とりあえず考えることができました。よかったと思われる点は、授業の予習・復習を通じて考える訓練をしていたことではないかと思います。

 もちろん基礎知識があるというのはすごく大事ですが、多分司法試験の出題趣旨を見ると、おそらく知らない論点はないと思いますが、それに気付くかどうかというのがすごく重要で、諦めずに考えることができればその問題を発見できます。日々、何か知らない問題でも考えることが大事ではないかなと思います。

○反省点
 反省点は2つありまして、まず1つ目は択一の勉強不足です。択一の発表は6月3日でしたが、私は足切りされるのではないかと恐れて、その日まで過ごしていました。ですから、皆さん、本当に択一は勉強して下さい。

 もう1つは、基本書の読み込みが少し足りなかったのではないかと思います。基本書は決めて使っているものがありましたが、何人かの先生が書いている本を何冊か読んでみる方がよかったのではないかなと思います。

 というのは、今年の民事系、民訴の問題ですが債務不存在確認訴訟の既判力に関する問題が出題されまして、その問題形式が最高裁判例と異なる法律構成が2つ出され、その長所と短所を書きなさいというものでした。これは、判例だけを知っていても分かりません。ですから、何冊か何通りかの考え方を読んで知っているというのは大事だと思います。その問題の縛りとして、「信義則上の主張はしてはならない」という風に書いていたので、途中で考えるのをやめて、信義則に逃げればいいやと思っているとなかなか解けないので、すごく反省させられました。

<最後に>
 最後に、皆さんへのメッセージですが、先程、佐藤さんは「あと200日しかない。焦りなさい。スケジューリングしなさい。」とお話されました。確かにスケジューリングはとても大事ですが、あと200日、まだまだ時間があります。

 私の場合、昨年の今頃択一が足切りのレベルに達していなくて、とても不安になっていましたが、そこからなんとか挽回できました。まだ時間があるので、今からできることがたくさんあると思います。まず諦めないで、とりあえず最後まで頑張って下さい。あと、択一は本当に勉強して下さい。私からは、以上です。

質1:選択科目は何を取っていましたか?また、その勉強方法について教えて下さい。
答1:選択科目は倒産法でした。倒産法は、『ロースクール倒産法』という演習の本があり、河崎先生の授業で、毎週勉強しておりました。その問題をまず授業の予習として解いて、さらに復習としてもう一回書き直す、そして、試験本番前にはそのノートを見返して考えるようにしていました。ゼミは特に組んでいませんでした。
質2:基本書が苦手でワードでノートを作成していたという話がありましたが、私も基本書を読み込めていないようなところがあります。ノート作成の際に工夫したことがありましたら、教えて下さい。
答2:工夫していた点は、まず基本的な知識を書き込む、判例を調べたものをそのままノートにペタっと貼っておいて、ノートを見たときにもう一度読めるようにしておきました。あとは、授業のポイントを書き込んだりして、知識がすぐに喚起できるように工夫していました。

◆編集後記

 明日から3月になります。仙台では、先週は穏やかで春の訪れを感じる日もありましたが、本日は雪が降っています。季節の変わり目ですので、健康に気をつけてお過ごしいただきたいと思います。

 今回は新司法試験の合格体験談・第3弾をお送りしました。今回の講演内容の掲載にご快諾いただいた須佐さんに、心から御礼申し上げます。

(杉江記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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