東北大学法科大学院メールマガジン

第7号 12/09/2005

◇教員エッセイ

 今回は,実務外国法,リーガルリサーチ,トランスナショナル情報法を担当されている芹澤英明教授に,本法科大学院の学習環境について説明して頂きました。本法科大学院への入学を考えている読者の皆さんの参考になれば幸いです。

片平法政実務図書室便り

片平キャンパスの東北大学法政実務研修棟(学生の自習室棟)の1階には、法政実務図書室(ローライブラリー)があります。私は、昨年、法科大学院設立に際して図書担当の委員をしていましたので、今回は、この図書室の特徴や現在の蔵書状況等、ローライブラリー周辺の学習環境について簡単に紹介いたします。

アメリカのロースクールでは、ローライブラリーが学生の学習環境の中心的役割を果たしています。学生は、授業の予復習のために、ケースブックに出ている判例の原文にあたらなければなりません。そこでローライブラリーには、連邦裁判所や各州裁判所の判例を搭載した膨大な数の判例集が備えられています。これは、学生がケースブックのような編集者(実務家や学者)の視点でまとめられている二次資料ではなく、あくまでも一次資料にあたって、そこから理論的に見通しのきいた柔軟かつ説得的な法解釈論を自ら展開できるようになることが、ロースクールにおける法学教育の目的であると考えられているからです。アメリカ法では、過去の判例を学ぶことが、その特定の事案を超えた広範な仮想事例への法的対応を考える上でよい訓練になるとされています。

我が国の新しい法科大学院における教育でも、ケースメソッドが採用され、これまで以上に判例法理の内在的な理解が学生に求められるようになりました。

東北大学法政実務図書室は、法科大学院の授業で使われる教材(判例、法令、著書、論文)は全て、その場で学生がその原文にあたれるように、蔵書の充実に日夜努めています。この図書室では、授業の予復習の便宜のためショートローン方式を採用しました。法科大学院生への資料貸し出しは、原則として一回につき3冊まで、翌日昼12時までとなっています。毎日、法政実務図書室では、熱心に資料を渉猟する法科大学院生の姿が見られます。

また、東北大学の法政実務図書室では、東北大学とつながりの深い、小田滋名誉教授(元国際司法裁判所判事)、故菅原菊志名誉教授、故杉本正雄判事(元仙台地方裁判所長)、故逸見惣作弁護士(元仙台弁護士会会長)等から、その貴重な蔵書コレクションの寄贈を受けました。法科大学院生は、これら先人法曹の蔵書を繙くとき、後進の育成を思う彼らの熱い思いを直に感じることでしょう。

もちろん、私たちは、伝統的な著書雑誌参考図書類だけではなく、電子的な法律データベースの収集にも力を入れています。DVD/CD-ROM類の電子データベース(最高裁判所判例解説DVD、労働判例DVD、ジュリストDVD、金融商事判例DVD等)や、オンラインデータベース(TKCのLEX/DB、 第一法規の判例大系、日本評論社法律時報文献月報、有斐閣判例百選、判例六法、法律学小辞典、Lexis-Nexis等)も充実しています。院生は、紙媒体資料だけでなく、これらの電子媒体資料を縦横無尽に駆使して、リーガルリサーチを行うことができるようになりました。このような実践的な技能を養成するため、カリキュラムの中に実務基礎科目として「リーガルリサーチ」という授業科目も設けられています。

片平法政実務図書室は、東北大学法科大学院とともに平成16年4月に呱々の声をあげました。私自身、調べ物をするためによくこの図書室に行きます。その度に、あれこれとおもしろい本を見つけてしまい、思わず立ち読みしているうちに時間がたつのを忘れたりいたします。この図書室が、法科大学院生のみなさんの法学学習やリサーチの支柱、センターとして、今後一層発展していくことを願ってやみません。

(参考)
●2005年6月1日現在
所蔵冊数12526冊数(内訳:図書7755冊、製本雑誌4771冊数)。

●法政実務図書室ウエブ・ページ
Webページ:http://www.law.tohoku.ac.jp/library/katahira.html

●東北大学附属図書館オンラインカタログ
http://www.library.tohoku.ac.jp/T-LINES/opac/index.html

メールマガジンの配信停止をご希望の方は,
lawmm-contact
まで,登録されたメールアドレスと配信不要の旨を記載したメールをご送信下さい。

発行:東北大学法科大学院評価広報委員会

< 前のページに戻る

△ このページの先頭へ