東北大学法科大学院メールマガジン

第65号 08/26/2010

◇平成22(2010)年度東北大学法科大学院オープン・キャンパスについて(再々掲)

 東北大学法科大学院では、下記のとおり、オープン・キャンパスを開催します。
 エクステンション教育研究棟の新たな施設をご覧いただく最初の機会です。

 東北大学法科大学院の受験を希望される方はもとより、法曹の仕事に関心のある方、法科大学院への進学を考えている方など、たくさんの方のご参加をお待ちしています。

日時:2010年8月28日(土)13:00-17:00(受付12:30〜)
場所:東北大学片平キャンパス・エクステンション教育研究棟
 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/gaiyou/access.html
(JR仙台駅から片平キャンパスまで徒歩約15分)

プログラム:
13:00-13:15 法科大学院案内 法科大学院長 佐藤隆之 教授
13:15-14:15 法科大学院入試・カリキュラムの説明
 法科大学院カリキュラム等委員会委員長 佐々木弘通 教授
 法科大学院入試委員会委員長 蘆立順美 准教授

14:30-15:30 模擬講義
 1) 「民事法」(既修者対象) 石井彦壽 教授(実務民事法)
 2) 「憲法」(未修者対象) 中林暁生 准教授(憲法)

15:35-17:00 施設見学・個別相談・懇談会
 1) 施設見学
 法政実務図書室、自習室、情報処理コーナー室ほか
 2) 個別相談・懇談会
 ・実務家教員:石井彦壽 教授
 ・研究者教員:佐々木弘通 教授、蘆立順美 准教授
 ・在学生:数名
 *希望する会場へご出席下さい。中途の出入りも自由です。)

お問い合わせ・参加申込み方法:
 オープンキャンパスに関するお問い合わせは、東北大学法学研究科専門職大学院係宛てに電話(022-217-4945)またはメール(opencampus@law.tohoku.ac.jp)でお願いします。

 参加のお申し込みは、東北大学法学研究科専門職大学院係宛てのメール(opencampus@law.tohoku.ac.jp)に、住所・氏名・電話・模擬講義のクラス希望(既修者クラス/未修者クラス)を明記の上、事前にご連絡いただけると幸いです。
 ご連絡の際に、質問等あらかじめございましたら、お書き添えください。質問を提出していただいた場合には、できる限り資料等を用意したうえで、プログラム「個別相談・懇談会」等でお答えすることができます。

 事前の申込をなされていない方も、当日のご参加を心から歓迎いたします。

http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/opencampus/#sendai

◇連続講演会のお知らせ(再々掲)

 東北大学法科大学院では、現在、修了生・在学生・教職員を対象に連続講演会を開催しています。

 第4回(最終回)は、本法科大学院の修了生である庄司智弥弁護士をお迎えして下記のとおり開催します。講演では、少年事件についてお話し頂く予定です。皆様是非ご来場下さい。

第4回 9月1日(水) 18:00〜19:30
「少年事件最前線」
講師 本学2007年修了生 庄司智弥弁護士
場所 片平キャンパスエクステンション教育研究棟3階303講義室

◇平成23(2011)年度東北大学法科大学院パンフレットについて

 平成23(2011)年度東北大学法科大学院パンフレットがホームページに掲載されております。
 是非ご覧下さい。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/download/

◇平成23(2011)年度東北大学法科大学院学生募集要項について(再掲)

 「平成23(2011)年度東北大学法科大学院学生募集要項」がホームページに掲載されております。東北大学法科大学院の修了者には、「法務博士(専門職)」の学位が授与され、新司法試験の受験資格が付与されます。入学を検討されている方は、ぜひご覧ください。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/info/boshuyoukou.html

 出願書類の用紙の請求は、入試関係資料請求ページ(テレメールWeb)から行うことができます。請求方法の詳細は、以下のアドレスにアクセスした後、ページ内の指示に従ってください。
http://telemailweb.net/web/?420005

◇トピックス —連続講演会その1

 東北大学法科大学院では、現在、修了生・在学生・教職員を対象に連続講演会を開催しています。
 第1回は、さる6月24日(木)に片平キャンパス法学研究科第4講義室において、本法科大学院の卒業生である佐瀬充洋さん(現司法修習生)、押見和彦弁護士をお迎えして、法科大学院での学び方等についてお話いただききました。

 今回は、佐瀬充洋さんによるご講演の概要をお送りします。ご講演では、法科大学院での学び方の他に、司法修習についても詳しくお話いただきました。

夢をかなえるために —法科大学院でどう学ぶか—

新63期司法修習生・本学2009年修了生 佐瀬充洋さん

<自己紹介>
 司法修習生の佐瀬充洋と申します。最初に自己紹介をしたいと思います。私は東京の方の大学を卒業しまして、2006年に東北大学のロースクールの未修者コースに入りました。2009年にロースクールを修了して、2009年度の新司法試験に合格し、去年の11月末から仙台で司法修習しており、今も修習中です。

<司法修習について>
 私がロースクール生だった頃、修習があるということは知っていたのですが、修習とは何か、何をするところかということは全くわからず、そのまま修習に突入してしまいました。ですから、修習とは何かということを少しお話したいと思います。

 スケジュールとしては、皆さんが卒業したら、5月に司法試験があり、6月に択一の発表、9月上旬に合格発表があります。その後色々な手続をした上で、11月末から修習ということになっています。

 修習では何をするかというと、大きく分けると2つ、実務修習と集合修習というのに分かれています。実務修習の中では、さらに、分野別実務修習と選択型実務修習に分かれていて、現在私は分野別実務修習をしています。実務修習というのは10ヶ月間で、集合修習は2ヶ月間です。集合修習では、二回試験(司法修習生考試)の勉強をしますが、これは結構苦しいものです。その前に実務修習があり、その中の分野別実務修習では、民事裁判、刑事裁判、弁護修習、検察修習をします。それぞれ2ヶ月間、それぞれの配属先に行き、実際の修習をするわけですが、簡単にどんなことをするのか内容をお話します。

○検察修習
 私の場合、最初は検察修習でした。検察修習では、最初の一週間は講義があり、その後1人1件ずつ事件を配布されて、その案件について終局処分をすることになりました。終局処分というのは、警察から事件が送致されてきますが、その事件を検察官としてどうするか、起訴するかどうかを決定するということです。そのために、事件記録を読み、処理方針を決めた上で、実際に事件を処理することになります。

 まずは、被疑者を取り調べます。取調べの後は、供述調書を作成し、必要があれば警察に補充捜査の指示をしたりします。検察庁は組織ですから、事件の処理に当たっては、決裁が必要になります。事件を全て説明した上で、何故この処分でいいかということを全部説明して、決裁をもらって事件を処理することになります。それを3件程度2ヶ月間かけて行いました。

○刑事裁判修習
 その次は刑事裁判修習でした。刑事裁判修習では、刑事事件の裁判の傍聴と起案をしました。皆さんは起案という言葉はまだあまり聞かないかもしれませんが、要するに法律の文書を作成するということです。判決を起案したり、判決全部でなくても事実認定の部分を起案したりします。事件記録を読んだ上で傍聴し、それから起案をするということがメインとなります。

 その過程で、実際に事件を担当されている裁判官の方と、意見を交換したり、議論をしたりします。議論では、裁判官からいろいろ突っ込まれたりします。たまたまですが、私が刑事裁判修習の際に付いて頂いた裁判官が東北大学法科大学院の刑事裁判演習で教鞭をとられている丹羽裁判官でして、大変鍛えられたという思いがあります。

○弁護修習
 その後、私の場合は弁護修習でした。修習生はそれぞれ弁護士の事務所に配属されますが、修習の内容は事務所の先生によって違います。私の場合は法律相談に立ち会ったり、先生と問題点について議論をしたり、内容証明を作成したり、訴状や答弁書、準備書面等を起案したり、裁判の立会等をやらせて頂きました。

 たまたま、私の修習が、検察修習、刑事裁判修習ときていたので、先生から刑事の案件を頂いて、被告人(在宅の被告人)と色々話をして、どのようなことを裁判所に訴えていくか等を考えたり、弁論要旨を作成したりしました。また、刑事裁判では、被告人質問というものがあり、そこで質問する事項を考えて、その練習をしたりしました。修習生は法廷には行きますが質問をすることができないので、代わりに先生にやってもらうことになります。この案件については、残念ながら、思い通りの結論にはなりませんでした。この刑事裁判以外でも、民事事件についても、起案をしたり、一緒に法律相談に入ったりしました。

○民事裁判修習
 今は、最後の民事裁判修習をしています。民事裁判修習でも、傍聴と起案等をしています。私が今配属されているのは仙台の第二民事部というところですが、起案が多くて、しかも相当難しい起案が与えられています。その部長をされている方が、以前、東北大学法科大学院L2の民事要件事実の講義を担当されていた畑裁判官という方なのですが、私が自信を持って起案できたと思っても、そのあとの講評で、日々打ちのめされています。別に怒られるわけではありませんが、裁判官が実際に起案した判決書を後から見せてもらうと、これはとても自分では書けないと思う日々を送っております。

○その他の修習
 民事裁判修習の後は、選択型実務修習というものがありますが、これは人それぞれ行きたいところに行くというものです。その後、集合修習があります。集合修習はまだ経験していないのでよくわからないのですが、大変苦しいものだと聞いております。私は司法試験を受けるまでは、司法試験よりも時間の長い試験はないだろうと思っていたのですが、集合修習の二回試験は7時間という長い試験もあるようなので、皆さん気合いを入れておいて下さい。

 実務修習中でも、集合修習の教官が来て起案をするというものがあります。その趣旨は、二回試験の練習ということだと思いますが、裁判官になりたい、検察官になりたいという人にとってはその成績をみられますので重要です。ちなみに、私は、今日まさにその試験でした。内容は民事裁判の起案で、なかなか大変でした。

<ロースクールでの勉強方法>
 これから私がどういう勉強をしてきたかを話します。予め断っておきたいのですが、司法試験の合格を目標とした場合、合格するための方法はたくさんあると思います。それは人それぞれだと思いますので、ここでは、あくまで私が思ったこと、経験してきたことをお話します。実際にどうするかについては、ご自分でご判断して下さい。皆さんの判断の助けになればいいなという趣旨でお話したいと思います。

○ロースクールでの勉強方法
 私はたまたま1回目の試験で合格したので、正直なところ、自分のやってきた勉強の中で、何が良くて何が悪かったのかあまり分析できていません。大学受験では、私は1年目の受験を失敗して、2年目で受かったのですが、2年目のときは1年目よりも、何が良くて何が悪かったのかが遙かにわかりました。そういう意味では、このようなお話をすることについてあまり適任者ではないかもしれませんが、本日講演するにあたって、周りの修習生の方にもお話を聞いてきたので、それも含めてお話します。

 私の場合、L1、L2のときは、毎日授業の内容の予習をして授業に臨む、試験前になったら試験対策をする、基本的にそれしかやっていませんでした。あくまで、授業中心にやっており、特別なことは何もやっていませんでした。L3のときも基本的には授業中心でした。

 L3にもなると、同期生が授業についていろいろ批評したりしていましたが、それに関して私が思うのは、どんないい授業でも自分が学ぼうとしなければ、何も掴めないということです。同じ先生の同じ授業を聞いても、皆が同じ理解に達するということではなく、何かをより学び取ろうという意識で授業を聞かないと何も学びとれないものだと思います。積極的に理解しようという姿勢がないと授業を聞いても意味がないので、私の場合授業の予習を中心に勉強していました。復習は試験前にしかしませんでした。とはいえ、授業によっては膨大な予習の量がありますが、そこは適宜うまくやって、後は授業を真剣に聞いていました。

 中には授業中に寝ている人もいました。寝る人だから合格しないということはありませんが、私は寝ませんでした。あまりダラダラ勉強するのは嫌だったので、勉強するときは集中して勉強する、授業に折角出ているのですから、集中して聴くというスタンスで臨んでいました。

○授業について
 授業のいいところについて、自分なりに考えてみたのですが、例えば、自分1人で教科書を読んでいると、訳のわからない学説がいっぱい出てきたりします。それは、最新の教科書を使えば使うほど最新の議論が掲載されており、いきなり最新の議論を見たところで、何を言っているのかわからない、いきなりカオスに陥れられるわけです。しかし、法学というものは歴史がいろいろあって、それが積み重なって現在の到達点にあるわけで、それで現在の到達点をいきなり見せられたところで理解はできないと思います。

 例えば、ある判例が出たとします。その判例が出た背景、それまではどういう状況だったのか(学説の状況も含めて)を考慮した上で、判例は出ていると思います。ですから、歴史的な背景というか、そういうものも含めて理解したことは忘れないと思います。最近の修習でも、新たな問題があってそれを課されたときに、裁判官に、その判例が出た経緯等を説明して頂いて、より深く理解できたということがありました。ですから、歴史的な積み重ねの中での理解をすることが重要なのだと思います。

 そして、それを学べるのが授業なのだと思います。授業は、各分野で専門の研究をされている先生方が行うものですから、授業でなければ学べないことも多く、なかなか自主的には学びにくいところが多々あると思います。ですから、そういう意味でも授業は意味があります。

 また、司法試験というのは学説を覚えたから受かるというものではありません。基本的なところを押さえた上で、それを応用して、その場で考えるものです。本当に基本的なところを押さえて考えるということは、司法試験だけではなく、どんな事案に当たっても、同じ事案なんてないですから、まずは基本の基本を理解する、次に、この事案だとどのように処理するのかを考えていくというスタンスだと思います。

 また、学説というものは、どんなにその見解が異なっていても、共通して認識している部分、同じ認識を持っている部分が必ずあるはずです。その部分を掴みとれば(それは何かというのは難しくて言葉にできないのですが)、細かい学説の問題ではなくなると思います。特に実務家になるという観点からすれば、自分はこの説をとるんだと言ってもあまり意味がありません。法律家が共通して持っている認識、理解、そういうところをしっかり押さえることができるのが授業だと思います。

 私が勉強していた方法の1例ですが、これは皆さんに勧めているわけではなのですが、私は受験生時代刑法が好きで刑法の基本書を総論各論それぞれ3冊程並行して読んでいました。それぞれ見解がバラバラなのですが、違う角度からみると全てに共通している部分が見えてきたような気がしました。ですから、そういう勉強も1つかなと思っています。私がそういう勉強をしたのはL2の頃からでしたが(刑法だけですが)、個人的にはよかったと思っています。ただ、皆さんにお勧めするというわけではないので、皆さんそれぞれの方法でやって下さい。

○ロースクールで学ぶ意義
 ロースクールで学ぶ意義ですが、一番のメリットは、やはり仲間がいるということだと思います。1人で考えていると煮詰まってしまうことがあります。そういったときに、仲間と話をしたりできることがメリットだと思います。中には、1人で勉強する人もいます。私もロースクール時代にいろいろな方と話をしましたが、ものすごく知識はあるのですが、話が何か噛みあわないという人もいました。そういう方は大抵1人で勉強している人でした。1人で勉強することについて私は全然否定しません。でも、正しい方向で1人で勉強することはすごくいいと思いますが、間違った方向で勉強するとどうにもならない、何故合格しなかったのか原因もわからないということになってしまい、大変だと思います。

 ですから、仲間を活用することが大切です。私は仲間と議論をするのが好きで、くだらないこと、どうでもいい論点を話し合ったりしました。どんなことでもいいと思いますが、仲間と議論すると自分の理解も深まっていきます。自分はこう思うと主張しようとしたら、それを説得的に言わなければならないです。相手を説得するためにはやはり真の理解が必要です。そして、人に自分の言葉で説明できるレベルになれば、それは本当に理解していることになると思います。そのためにも、また、勉強の方向性を間違わないためにも、仲間を作って下さい。せっかく皆さん一緒に同じ目標を目指して頑張っているわけですから、勉強会のような機会を積極的に作っていくといいと思います。

○将来に向けて
 皆さんは今ロースクール生で司法試験に向けて勉強していると思います。司法試験の合格を短期的な目標にしておくのはいいと思いますが、やはり長期的には、どういう法曹になりたいかを理解して日々を過ごすことがすごく重要だと思います。

 現実問題として、新司法試験制度になってから合格者がたくさん出るようになりました。そうすると、やはりダメな法曹は仕事をやっていくことができないと思います。現在の裁判修習の裁判官の意見を聞いても、これからは訴訟当事者、その代理人がダメだったらその裁判は負けるという方向、当事者主義を重視する方向に向かっていくとのことでした。それは刑事であっても民事であっても、皆さんそうお話しています。皆さんは、プロになるわけですから、責任を持ってきちっとした仕事ができるようにならなければなりません。だから単に法曹になるだけでは意味がない、これからの時代は、いい法曹、自分の目指す理想の法曹にならないといけないと思います。

 司法試験のみに向けて一生懸命勉強をしていても、そのあとも大変です。修習も実際楽しいですし、受験時代の苦しい感覚はないのですが、就職活動もしなければならないということもあり結構忙しくて大変です。ですから、司法試験で燃え尽きてしまっては仕方がない、司法試験はあくまで始まりの始まりです。ですから、司法試験の合格だけを目標にして日々を過ごしていると行き詰ってしまいますので、短期的な目標として司法試験の合格を前提とした上で、さらにいい法曹になるために今何をしたらいいのかをぼんやりでも考えていると、少しは勉強に気がはいるかなと思います。

 これに少し付随してですが、L3くらいになると、司法試験の科目に関係ないことについては、内職したり寝ていたりする人がいましたが、今考えるとそれはすごくもったいないことだと思います。修習では実務を教わることで手一杯になるので、幅広い法律の範囲を教わるということはなかなか難しいです。まとまった勉強の時間、例えば、自分は倒産法を選択しなかったから破産法を勉強しようと言っても、なかなかまとまった時間なんてとれないですし、労働法を選択していないから労働法をまとめてやろうといってもなかなか出来ません。

 実務になると、どんな法律が必要になるか、どんな法律の問題があるかはわかりませんし、この事案は「自分はやったことがないのでできません」とは言えません。特に、見たことのないような法律の問題や、色々細かいことが問題になったりすることもあります。ですから、L3の時期も、できるだけ幅広い法律の範囲を教わることができるという貴重な機会なので、ぜひ授業を活用してほしいと思います。

 そして、そのことは司法試験に向けてという意味でも決して無駄にはならないと思います。やはり、法律というのは科目が違っても根本的に考え方は全部似ている、根本的なことは同じではないかという気がしています。もちろん、手続は違っていたりしますが、例えば、刑法で出てきた議論が民法でも出てくるとか、行政法でやっていたことが別の科目で出てくることはよくあることです。法律別や科目別ということではなく、法律全般に流れている考え方を学ぶという意味でも、積極的に授業に参加するとよいと思います。

<最後に>
 これが最後となりますが、やはり法曹というものは、自分で考えて理解し結論を出すということだけではダメだと思います。さらに、それを表現できないと人にわかってもらえないですから意味がないです。

 司法試験でももちろんそうです。勉強会等で、色々な人の答案をみる機会がありましたが、「理解はしていると思うが、ただ何を言いたいかよくわからない」というものが、自分のものも含めて、よくありました。自分が書こうと思ったこと、自分が伝えようとしていることが文章になること、言葉が法曹にとって一番武器になりますから、言葉には常に敏感であってほしいと思います。

 自分はこの文章を書いたがこれは人にはどのように理解されるだろうか。特にその文章のもつ性質、ロースクールの答案だったら担当の先生方が採点される、司法試験だったら司法試験委員が採点される、法律文書だったら裁判官が読む。ですから、誰が読むのかを意識して、かつ、その人に自分が考えていることが伝わるのかというところを常に意識してほしいと思います。そうでないと、理解はしているけれども、言葉の使い方が間違っているというようなことがあると、どんなに理解していても評価されないです。文章を書く力は、一朝一夕でつく力ではないので、日々の勉強の中で自分の言葉で表現するということを大事にして頂ければと思います。

 あとは、私の方から積極的に何を話したらいいのかわかりませんので、何でもいいので質問して下さい。ご静聴ありがとうございました。(拍手)

質1:予習を重視されているというお話でしたが、具体的に予習はどのようにやっていましたか?
答1:刑法や刑事訴訟法は課題が出されていましたので、予め自分で全部解いて、授業を受けました。他の科目についても指示があったので、指示されたことは全部やるというスタンスで授業に臨んでいました。予習をしている途中でわからないことがあったときは、横道にそれて色々なことを調べたりもしました。
質2:授業の復習はどのようにしていましたか?
答2:復習は、授業が終わったらその日にするということではなく、基本的には試験前にやっていました。私は勉強会をしていたので、仲間同士で担当を割り振って、その学期の授業の内容のおさらいをしていました。試験前に、北門食堂のドリンクバーを注文して、5〜6時間かけて仲間同士で1科目の復習をするというのもよくやりました。
質3:今振り返ってみて、ロースクール時代に受けなかった授業のうち受けておけばよかったと思うものを教えて下さい。
答3:私は、選択科目として国際公法を選択して、L3の前後期ともとりました。労働法や倒産法については、前期はとったのですが、後期は試験の前ということもあり、受けられる授業も限られてきますので受けることができなかったのですが、今になってみれば受けておけばよかったなと思います。
質4:毎日予習復習で忙しいと思いますが、週末や休みの日はどのように過ごしていましたか?
答4:L1、L2のときはそれ程切羽詰まっていないということもあって、休みの日は基本的には勉強をしていませんでした。だいたい金曜日中に次の月曜日の予習を全部終わらせてから、土日は自宅で過ごしたり,友人と遊んだりしていました。ただ、L1の最初のときは、周りの皆がすごいのではないかと思って、先々の授業までの予習をしていましたが、前期が終わるとそれがなくなってしまったということもありました。L3になると、試験の直前になるので土日も勉強していたことが多かったです。
質5:自主ゼミをうまく動かすコツがあれば教えて下さい。
答5:失敗例としては、L3のときに、答案を書いて皆で訂正するというゼミを3人でやっていましたが、そのうち1人が来なくなってしまい、3ヶ月くらいで崩壊してしまいました。
 もう1つ、判例百選を全部読むというゼミを行いました。例えば1人5つずつで1日20の判例というように、担当を決めて、皆がその事案概要と判旨を読んでそれなりに理解をし、担当の人は解説までしっかり読んで解説をするというものでした。始めたのはL3の9月くらいで少し遅く、終わったのがL3の3月か卒業後の4月の上旬くらいだったので、もう少し早く始めればよかったと思います。このゼミは、私にとってすごく役にたちました。私は、択一が苦手だったのですが、択一は判例から出ることが非常に多いので、判例を全て覚えようという感じではないのですが、一通り終わった段階で、択一の点数が10〜20点は上がりました。
質6:択一の勉強はいつからどのような形で始めましたか?
答6:私の場合、択一だけのためには特に何もしませんでした。L3になってから夏にTKC模試があったと思いますが、そこでは足切りスレスレのような成績でした。それで、このままではいけないと思い、判例百選の勉強会を始めました。その後、直前の模試を受けたのですが、足切りにあうことはないというレベルになりました。本番では模試よりも成績が良かったです。やはり判例の理解は重要だと思います。
 予備校でも色々な対策本が出ていますが、私の予備校に対するイメージは、新司法試験にまだ対応し切れていないというのが実情だと思います。それは択一についても同じだと思います。新司法試験は新司法試験委員の方が問題を作成していますが、予備校は今のところそのレベルで問題を作ることができていないと思います。予備校の問題もみてみましたが、やはり本番の試験とは、問題の傾向が違っていると感じています。
 ほかに、択一対策としては、条文を読むことがとても重要で、条文がそのまま出されたらそれは○に決まっていますし、条文と違うことを出されたらそれは×に決まっていますから、条文をよく読むということが大事だと思います。
質7:実際の修習や弁護士と、学生時代に持っていたイメージとの違いがありますか?
答7:学生のときですと、問題では事実が確定していて、それについてどう考えるかという感じですが、実務になると、まず事実がわからないところから始まります。何が真実なのかを確定して、それから初めて法律問題が出てきて、法律の適用があるわけですが、やはりその事実認定が深いです。現在裁判修習ですが、裁判官の証拠の見方はものすごいので、そこは驚きとともに、自分もそんな力をつけたいなと思っています。あとは、実際の事件では、ある問題が、どういう形で問題になってくるのか、どういう経緯を辿って問題になってくるかというのも、事実が与えられているわけではないですので、そこが興味深いですし、面白いと思います。
質8:就職活動について、昨今弁護士の就職難が叫ばれている中で、実情はどうなのかを教えて下さい。
答8:試験に受かり修習が終わると裁判官、検察官、弁護士になれるわけですけれども、弁護士の就職については結構厳しいです。私の班では12人が一緒に修習をしていますが、その中の弁護士志望の人で就職が決まっていない人が4人くらいいます。ただ、最終的には決まると思いますけども。東京の大手の事務所ですと、試験直後、合格発表前から就職活動が始まっているので、修習に入る前に内定をもらうという状況です。そのような事務所に行きたい方は、なるべく敏感に情報収集をして、見切り発車でとりあえず就職活動するみたいです。仙台での就職ですと、もっと後なのでそんなに焦る必要はありませんが、人とのつながりや人間性等が重要になってきます。
質9:就職活動の際に、ロースクールの成績や司法試験の成績はどの程度みられるのですか?
答9:裁判官や検察官の場合はあまりみられないと思います。基本的には修習での成績が重要になります。実務修習ですと起案の成績や、検察官の場合ですとさらに取調べや報告能力等もみられるようです。あとは、人柄もみられると思います。

◆編集後記

 今回は、佐瀬充洋さんによるご講演「夢をかなえるために —法科大学院でどう学ぶか—」の概要をお届けしました。
 講演概要の掲載にご快諾いただいた佐瀬さんに心から御礼申し上げます。

 今週末の8月28日(土)には、東北大学法科大学院オープン・キャンパスが開催されます。
 本年6月末に完成したばかりのエクステンション教育研究棟の施設をご覧いただく最初の機会ですので、皆さん是非お越し下さい。

(杉江記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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