東北大学法科大学院メールマガジン
第21号 08/24/2007
◇平成20(2008)年度入試情報
「平成20(2008)年度東北大学法科大学院学生募集要項」を掲載中です。東北大学法科大学院の修了者には,「法務博士(専門職)」の学位が授与され,新司法試験の受験資格が付与されます。入学を検討されている方は,ぜひご覧ください。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/info/boshuyoukou.html
出願書類の用紙の請求は,入試関係資料請求ページ(テレメールWeb)から行うことができます。請求方法の詳細は,以下のアドレスにアクセスした後,ページ内の指示に従ってください。
http://telemailweb.net/web/?420005
また,Q&A,パンフレットも更新掲載中です。あわせてご覧ください。
(Q&A)
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/qa/index.html
(パンフレットPDF)
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今回は,吉田正志教授に,担当授業「日本法曹史演習」についてご紹介いただきます。
授業「日本法曹史演習」紹介
吉田 正志
私の専門は日本法制史ですが、法科大学院では、2、3年生を対象とした「日本法曹史演習」という授業を担当しています。この授業は一体どんなことをしているのかといぶかる方もおありかもしれませんので、この場をお借りして、この授業の紹介をさせて頂きます。
1 授業の目的と方法
(1) 目的
私は、法科大学院の授業を担当するに当たり、はじめは日本がヨーロッパ法を継受して近代法化を実現する過程についての講義(いわゆる「日本近代法史」)をすることを考えました。しかし、法科大学院では双方向の授業を旨とするようですので、この講義を双方向形式で行う自信がもてず、また、この講義は学部1年生向けに開講していて、東北大学法学部出身者については同じような内容の授業を2回受けることになりますので、この講義をすることを諦めました。
そこで、双方向の授業ということからいえば、演習形式の授業がいいだろうとまず決めまして、そのうえで法曹を目指す学生が集う法科大学院だから、日本の法曹を取り上げる演習をしようと考えて、「日本法曹史演習」という授業をすることになりました。
この授業が目的とすることは、わが国の歴史のなかにみられる法曹を取り上げて研究することによって、演習参加者が自分は将来どんな法曹になりたいかを探ることです。したがって、研究対象とする法曹は参加者自身が決め、それは自分の理想とする人物でもいいし、逆に反面教師的人物でも構いません。また有名・無名も問いません。できるだけ近現代の人物が望ましいけれど、江戸時代やそれ以前の時代の法曹的人物でもいいことにしています。
(2) 方法
授業は後期に開講していますので、夏休み前に参加者に一度集まってもらい、誰を研究対象に取り上げるかや報告の順番を決めて、夏休み明けにすぐに報告ができるよう、夏休み中から研究を開始してもらいます。
参加者には授業の2コマずつを割り振り、1回目に研究報告をしてもらい、この報告に対する感想・質問を報告者以外の全参加者に文書で出してもらいます。この文書を踏まえて報告者はさらに必要な補足研究を行って、2回目の時間に質問に応えます。これらを踏まえて残る時間に全員で討論します。
したがって、授業のコマ数は15回ですので、参加者数は最大7名に制限せざるを得ません。また、参加者が少数の場合は、残る時間を利用してわが国司法制度の近代化過程の話をすることにしています。
2 取り上げられた法曹
それでは、この演習参加者によって取り上げられた法曹は誰かをご紹介します。
1) 2005年度(参加者4名)
・近藤綸二(裁判官)
・児島惟謙(裁判官)
・石田和人(裁判官)
・山口良忠(裁判官)
2) 2006年度(参加者7名)
・下田武三(外交官・裁判官)
・三淵嘉子(弁護士・裁判官)
・中坊公平(弁護士)
・遠藤誠(弁護士)
・石田和人(裁判官)
・江藤新平(政治家)
・団藤重光(学者・裁判官)
ついでに、2007年度後期の授業で取り上げられる予定の法曹も掲げておきましょう。
3) 2007年度(参加者7名予定)
・横山昭二(弁護士)
・升永英俊(弁護士)
・中坊公平(弁護士)
・三淵忠彦(裁判官)
・中田正子(弁護士)
・自分の父(弁護士)
・近藤綸二(裁判官)
ご覧のように、明治初年の司法卿から現在活躍中の弁護士まで、参加者それぞれの関心に応じて多彩な人物が取り上げられています。むしろ、私のまったく知らなかった人々もおりますので、私自身も大いに勉強になっているというのが実情です。
3 感想
私が、参加者に最初にいうのは、この授業はおそらく新司法試験にはまったく役に立たないだろうということです。なにしろ受験科目にはないのですから、試験に合格するためには受験科目の勉強が当然優先します。
ところが、参加者のほとんどは、新司法試験の役に立たないことは百も承知の上で、相当の時間をかけて準備して報告をしています。そのレジュメ・資料が1回目も2回目もA4用紙10枚以上などというのもよくあり、私の方が、報告のためにこんなに時間をかけて、試験勉強の方は大丈夫かと心配になることもあるほどです。
また、討論も実に活発といえます。参加者には、1コマに必ず1回は発言するよう最初に要求してありますが、私が口を挟む必要がないほど参加者間で、裁判官はどうあるべきか、弁護士や検察官はどうか、などが語られています。こうした授業の場で一番楽しく議論を聞いているのは、あるいは私かもしれません。
もっとも、私が理解する法科大学院のそもそもの理念は、幅広い知識や経験をもった人たちに法曹となる道を用意することだと思うので、法解釈学や訴訟技術を教えるわけでないこの「日本法曹史演習」も、決して法科大学院の授業として不適格と思いませんし、むしろ学生さんによっては楽しくなれる授業だと思います(そのためかどうかは分かりませんが、意外とコンパ回数も多い)。
しかし、現実の問題として、いかに理想の法曹像を語っても、最終的に新司法試験に合格して法曹にならなければ、その想いを実現することはできません。もちろん、たとえ法曹にならなくても人間として成長できればそれでよいとの見方もできますが、私としては、やはり理想の法曹像を熱く語ることのできるこの授業の参加者には、ぜひとも法曹の道を歩んで欲しいと思っています。
そのために、この授業が、たとえ新司法試験にまったく役立たないとしても、法曹になりたいという参加者の意欲をさらに強めることができるような授業にしたいと思っています。
◆編集後記
今回は,吉田正志先生に教員エッセイをお願いしました。吉田先生は日本法制史だけでなく,東北大学法学部の歴史についても造詣が深く,記念事業等についてもご尽力されておられます。
今年は東北大学創立百周年。明日からの2日間,片平キャンパスを開放して,「東北大学100周年記念まつり」が行われます。東北大学について知る絶好の機会ですので,入学を検討されている方も,ぜひ立ち寄ってみては如何でしょうか。
http://web.bureau.tohoku.ac.jp/100aniv/summer/maturi/index.html
(平塚記)
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発行:東北大学法科大学院広報委員会