東北大学法科大学院メール・マガジン

第13号 11/20/2006

◇平成19(2007)年度東北大学法科大学院入学試験の経過および日程について

平成19年度(2007年度)入学試験願書の受付は10月20日に締め切り、志願者総数は493名、内訳、法学既修者コース希望者262名、法学未修者コース希望231名となりました。数多くの出願をいただきまして、誠にありがとうございました。
志願者数の確定により,入学試験第1次選考における選抜は,実施いたしません。第2次選考会場は、出願時に各自が希望した会場のとおりとします。

今後の入学試験の日程は次のとおりです。

第2次選考:平成18年11月25日(土)(仙台,東京)
合格者発表:平成18年12月11日(月)

第3次選考:平成18年12月17日(日)
最終合格者発表:平成18年12月25日(月)

◇「新司法試験合格者と語る会」の実施報告

去る平成18年11月2日(木)18時より、東北大学片平キャンパス,材料物性総合研究棟「さくらホール」において、「新司法試験合格者と語る会」を行いました。本年3月に本法科大学院を卒業し,本年度の新司法試験に合格した草薙秀樹さん,細川卓也さん,村川耕平さんの3名にご講演いただいたのち,3名の合格者と在学生との間で活発な質疑応答が行われました。
ご講演いただいた3名の合格者の方々に心から御礼申し上げます。
3名の講演は,合格体験談として,本号以下逐次メール・マガジンにて配信する予定です。

◇新司法試験,合格体験談

上記「新司法試験合格者と語る会」における講演録です。今回は1人目として,草薙秀樹さん(仙台にて司法修習予定)の合格体験談をご紹介いたします。講演録の掲載にご快諾いただいた草薙さんに心から御礼申し上げます。

草薙秀樹

1 自己紹介

 先程,紹介がありました,草薙秀樹と申します。今年の3月に東北大学法科大学院を卒業しました。学部時代から東北大学に在籍していまして,その後,川内の研究大学院に入って,さらに2年間司法浪人をした後,この法科大学院に入りました。
 そちらにいる合格者の細川さん,村川さんよりも長く,法律の勉強や司法試験の勉強もしてきましたし,その分いろいろ失敗も多くしてきました。それゆえ,私からは,まずどういう失敗をしてきたのか,ということをお話ししたいと思います。そして,失敗の中で得られたことも沢山あったので,そのこともお話ししていこうと思います。

2 失敗の中で得られた三つの点

 先程,言いましたように,旧試験時代何度も司法試験を受けてきましたが,結果は,惨憺たるものでした。それゆえ,司法試験自体辞めようかと思っていたのですが,その時に法科大学院ができるという話を聞きまして,これに最後賭けてみようと思いました。
 入学後は,これが最後だと思っていたので,今までどうして失敗してきたのかということを,まず考えました。そして,突き詰めて考えてみると,三つ不十分な点があったのではないかと思いました。一つ目は,法律の体系的な理解を持つということ,二つ目は,特に試験直前期なのですが,広げない勇気を持つということ,そして三つ目が,自己分析を厳しくするということ,日頃からそうすることだと感じました。それぞれ,説明していきます。

3 体系的理解について

 まず,一つ目の体系的理解についてですが,私は,旧試験時代,予備校のテキストを使って,勉強していました。予備校のテキストというのは,択一知識や論文に必要な論証についてたくさん書いてあるものでして,それを何度も読みました。また,択一過去問集や論文過去問集を解いては覚えるということも,繰り返しました。これらの勉強によって,過去問に似た問題やズバリ論点を聞くような問題は解けるようになりました。しかし,やはり旧試験は,論点をズバリ聞くというようなものではなくて,ひねったような問題がほとんどでした。それに加えて,新試験になると,文章が長くなって,問題点がどこにあるのかわからないということもあって,それだけでは対応できないと思いました。
 その結果,予備校のテキスト中心から,基本書中心の勉強にしようと心に決め,読むことにしました。しかし,ずっと予備校のテキストを読んできていたので,始めはとても読みづらいし,そこから論証を覚えるなんて無理ではないかと思って,もう辞めようかとも思いました。けれども,その中でいろいろもがきながら一通り読んでみたら,何となくですけど,その法律の全体を掴めた感じになりました。それゆえ,それ以降は,一つ一つの論点についても,余裕をもって読むことができたし,その論点がどういう流れから出てきているのかといった,今までは得られなかった理解も得ることができたと思いました。
 そこから,やはり体系的な理解が必要だと感じましたし,基本書を読むにしても,最初は焦らず,まずは全体を掴むために読み,次に読むときは,その中にある制度を理解しながら読むような感じで,だんだん深く入っていく読み方をすれば,基本書だけであっても十分試験には対応できるかなと思いました。

4 広げない勇気について

 次に,二つ目の広げない勇気についてですが,私は旧試験時代,特に,試験の直前になると不安になることが沢山あって,直前チェックのような資料とか手当たり次第読んだりしていましたし,未知の論点など知らないことがあると,いろいろと手当たり次第に読んだりしていました。しかし,それが本番になると,逆に,本来持っていた知識があやふやになって,積極的な間違いをしたり,頭が真っ白になったりすることもありました。そこで,直前期になればなるほど,やることを広げないようにする,どれだけ不安になったとしても,今までやってきたもの,特に今までずっと読んできたものを読む,ということが大事だと感じました。
 その結果,法科大学院に入ってからは,普段の予習でも,一つの基本書を通して予習するようにしました。それで,基本書から考えて答えが出ないときは,初めて解説書や論文のコピーを読むなどして対応していました。日頃から,直前期には基本書を読むだけ,ということを意識して勉強していました。また,判例についてですが,それは,著名な判例のみを百選で直前に確認するということにしました。以上,基本書と百選読みを直前期にやりました。
 もっとも,直前期でも択一対策や論文対策が必要なのですが,択一対策として,過去問や問題集を解いたりはしませんでした。サンプル問題やプレテストを解いてみて,どういう形で聞かれているのかということは分かっていましたし,その結果,条文や基本的な知識を固めれば,択一は通ることができると思っていたので,知識を固めることを意識しつつ,基本書読みをやりました。やはり,勝負は論文かなと思っていまして,対策としては,基本書を読みながら,どういう感じで問題提起に移っているのかとか,どうゆう視点で論証しているのかといったことを,何度も確認するようにしました。

5 自己分析について

 そして,三つ目の自己分析についてですが,先程言いましたように,何度も不合格を繰り返してきましたが,それにもかかわらず,自己分析が足りなかったように思われました。やはり,不合格を顧みるというのはすごく辛いことですが,それをちゃんとしなければ,同じ失敗を繰り返す可能性もあったし,実際に繰り返していたようにも思われます。
 そこで,日頃から授業でわからないことがあったら,その日のうちに確認するようにしました。あとは,週一か二回のペースで,休みの日に,学校の仲間と,主に旧試験の論文の過去問を解くという勉強会をしていました。そこではきっちり時間を計って,何も見ずに解くことを,徹底するようにしていました。それによって,何も見ることができないので,自分に何が足りないのかということを,真に感じることができましたし,限られた時間なので,自分がその限られた時間でどれだけの分量を書くことができるのかということを,日頃から確認することができました。
 また,私は,今回の新試験については予備校の答練や模試を受けませんでした。答練や模試の良いところは,時間を計って真剣に問題を解く機会を提供してくれる,という点が一番大きいと思っています。もっとも,勉強会でも,真剣に問題を解く状況を作ることができて,自分のためにおかしいことならおかしいと言ってくれる人がいれば,予備校のそれに近いものを作ることができると思っていました。それゆえ,まずは勉強会を一生懸命やるということをやりました。

6 学校へのお願い

 最後に,これは,私の体験記というより,学校へのお願いということになるのですが,私は,日々の授業を通して,また,未修からL3になられたうちの一部の人たちとの勉強会を通して,感じたことがあります。それは,やはり学校でも,なんらかの答案を書く訓練みたいな場を提供することが必要ではないかということです。未修の人たちとの勉強会であったのですが,問題を解こうとしても,問題の意味がわからないということもあるのですが,むしろ,どういう風に書けばいいか分からない,と皆さん強く感じているようだったのです。この経験を通して,ある程度,書く訓練は必要ではないかと感じました。
 そこで,やはり先生方から,小テストなど何らかの訓練をする場を提供していただいて,法律的な文章の表現をどのようにすればよいのか,テクニックの部分ではなくて一般的な話でいいと思うので,どのように表現すればよいのか,ということを指導していただけたらと思います。なんとなく勉強するよりも,書く訓練を通して,そのためにどのように基本書を読めばよいのか,またどのように授業に挑めばよいのか,といったことを感じるだけで,日々の授業に向かう時や勉強に向かう時の意識が変わると思います。よろしくお願いします。

7 おわりに

 以上,私の合格体験記なのかわからないですけど,司法試験や受験勉強を通して感じたことを話しました。いろいろな勉強法があると思いますので,これを受け入れてくださいということではなくて,あくまで,参考にしていただけたらと思います。どうもありがとうございました。

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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