東北大学法科大学院メールマガジン

第116号 04/07/2016

◇掲載内容
(1)東北大学法科大学院 新入生オリエンテーション開催
(2)東北大学法科大学院 2016年度シラバスの掲載

◇東北大学法科大学院 新入生オリエンテーション開催 

 新年度を迎え、4月5日(火)に東北大学法科大学院において新入生オリエンテーションが開催されました。
 法学研究科長・法学部長の平田武教授および法科大学院長の中原茂樹教授によるご挨拶をメルマガ読者の皆様にもお届けします。

法科大学院新入生の皆さんへ

東北大学大学院法学研究科長 平田 武

 皆さん、東北大学法科大学院ご入学おめでとうございます。東北大学大学院法学研究科長を務めます平田武です。

 この法科大学院は、東北大学の大学院法学研究科の中に設けられているために、研究科長の私が新入生オリエンテーションの場で、まず挨拶をすることになっているのですが、私自身は専門が政治学、具体的にはヨーロッパ政治史ですので、法学者ではありませんし、法科大学院でも授業は持っておりません。そのような私が、新入生に向けてどのような挨拶を出来るのか、はなはだ心許ないところです。

 もちろん、新入生の皆さんに対して、法とは、とか、法学とは、といった話をする資格がないのはもちろんのことですが、東北大学の法科大学院が養成することを目標としている「優れた法曹」とはいかなるものかということについても、私が話すべきではないでしょう。そういう話は、むしろ法科大学院長の中原茂樹先生にお聞きして下さい。私は、むしろ大学院法学研究科長という立場で、少しお話しさせていただきます。

 法科大学院が設置されて、法曹養成の仕組みが、司法試験の一発勝負に代わって、法科大学院での2〜3年の教育を経た後に司法試験を受け、合格すれば司法修習に進んで、法曹の職に就くという、予備試験のようなルートを除けば、長いプロセスを要するものになってから既に10年以上経ちました。この間の事態の推移は、法曹養成の仕組みが、当初想定されたようなものにはならず、司法試験の合格率は、以前のものとは比べものになりませんが、それでも想定されていた水準を大きく下回り、合格して司法修習を終えても就職が必ずしも保証されない、など幾つかの問題点を抱えていることは、皆さんもご存じの通りです。ただ、法曹を目指す人たちは、大学を出た後、予備校などで何年も受験勉強を続けることに代わって、法科大学院に進学することが一般的なルートになりましたから、そういう意味では、研究者を目指して大学院に進学する人たちと人生の行程が少し類似してきたように思います。ある一定の期間を経た後に一定の水準に達した成果を求められ、にもかかわらず、その後の就職が保証されていないことを含めて、研究者を目指す人たちも同じような環境の中で苦しみながら努力を続けるわけです。

 かつて、私も研究者を目指して大学院に進学したときは、自分で選んだテーマであるとは言え、研究は大変な労力を要することであるのに、いつまでたっても収入は確保されないし、定職に就く展望はないし、家庭を持つことも遠い先の話のように思えて、ずいぶんと浮世離れした人生コースを選んだものだと思ったものでした。ですが、現在では、4年で大学を出て実社会に旅立っていくとは限らず、研究者を目指す人も、法曹を目指す人も、大学院に進学しますし、あるいは公共政策大学院のような別の専門職大学院に進学する人もいるわけですから、こういった表現を使ってもよければ、「社会化」を遅らさせられる人々の数が、以前よりもずいぶん増えたという気がします。皆さんも、そういう社会化遅延組に仲間入りすることになったわけです。もっとも、研究者の場合には、修士号を取得しても、その先に更に博士課程があり、ポスドクの期間もあります。外国研究の場合には更に必要になる留学期間も考えますと、もっとも法学・政治学分野では、これは就職してからでも可能な場合がありますが、「社会化」には、場合によっては気の遠くなるほど時間がかかります。それでもそうした道を選ぶ人がいるのは、端的に言えば、自分の調べていることが面白いからです。

 皆さんの中には、もちろん、2年とか3年の課程を経て、「優れた法曹」としての資質と能力を身につけて、実社会へと旅立っていく人たちも多くいるでしょう。それは素晴らしいことであり、是非それを目指して下さい。ですが、もし、法科大学院で学んだことに面白みを感じて、それを更に探求したいという欲求を感じたら、博士後期課程への進学も考えてみて下さい。法学研究科の博士後期課程には、修士号をもっていなくとも、司法試験合格者を受け入れるための後継者養成コースが設けられています。更に数年の「社会化」の遅れを覚悟しなければなりませんが、学問に携わることはそれに値すると私は思っています。

 以上をもって、新入生の皆さんへの挨拶に代えさせて頂きます。皆さんが、同級生達と切磋琢磨し、研鑽を積まれることを祈念します。

平成28年度新入生オリエンテーション 院長あいさつ

東北大学法科大学院長 中原 茂樹

 皆さん、東北大学法科大学院への御入学、おめでとうございます。この4月から法科大学院長を務めています中原茂樹と申します。法科大学院長としては、皆さんと同じく新人でありまして、緊張しておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、皆さんに2つのことをお話ししたいと思います。

 皆さんがこれから法科大学院で学んでいかれる法律学は、様々な考えをもった多様な人々が共に生き、幸せに暮らしていけるために、人類が生み出してきた「知恵の結晶」です。もちろん、世の中は法律だけで動いているわけではありませんし、法律だけであらゆる問題を解決できるわけでもありませんが、少なくとも、よりよい社会を作っていくために不可欠のツールであるということは言えるでしょう。そして、東北大学法科大学院は、——先日、入学前オリエンテーションの司会を務め、先生方のお話を伺って改めて感じたことですが——そのような知恵が詰まった宝庫であります。皆さんは、せっかく法曹を志してこの東北大学法科大学院に入学して来られたわけですから、どんどんこの宝庫を活用して、貪欲に知恵を吸収してください。私を含め、この職業に就いている先生方は、基本的に教えることが好きですし、質問をされれば、目を輝かせて、喜んで答えてしまう、という人が多いと思います。これからの2年ないし3年間で、少しでも多くの知恵を自分のものにできるよう、積極的に取り組んでください。

 もう1つは、これからの2年ないし3年間を、法律を学ぶだけではなく、自分自身について考える期間にしていただきたいということです。皆さんは法科大学院の門を叩かれたわけですから、法律学に興味があり、法律を使う職業に就きたいと考えておられると思いますが、改めて、自分は法律を使ってどんなことがしたいのか、また、法律を使う仕事のどのような点にやりがいを感じるのかについて、考えてみてください。ご承知のとおり、法曹を取り巻く現状には厳しいものがありますが、一生の職業を考えるためには、本来、現状だけではなく、20年先、30年先まで見通す必要があると思います。しかし、20年先、30年先の社会を予測することは非常に難しい。これは、たとえば今から30年前に今の社会を予測できたかを考えてみると、明らかなことです。それに対して、自分の好きなこと、やりがいを感じることは、時間が経ってもそれほど大きくは変わらないように思います。その意味で、時を経ても変わらない、自分が本当にやりたいことは何なのか、をじっくり見極めてください。法科大学院には実務家の先生もたくさんいらっしゃいますので、法律を使った仕事の具体的な内容ややりがいについて、伺ってみるのもよいでしょう。

 先ほど研究科長から、社会化を遅らせられるというお話がありましたが、今お話しした2つのことが、社会化を遅らせ、法科大学院で学ぶことの積極的な意味ではないかと考えています。

 それでは、これからの2年ないし3年間、一緒に頑張っていきましょう。

◇東北大学法科大学院 2016年度シラバスの掲載 

 東北大学法科大学院のウェブサイトでは、2016年度シラバスを掲載しています。

 法科大学院での教育内容は、法科大学院の受験をお考えの方や法曹分野にご関心のある方にも興味深い内容だと思います。ぜひ、下記のリンク先URLの内容を参照してみてください。

 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/education/syllabus/pdf/syllabus2016.pdf

◇東北大学法科大学院ウェブサイトにアクセスしてみてください!

 東北大学法科大学院についての各種情報を見やすく掲示しています。
 アドレスは以下のURLです。ぜひご覧ください。
 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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