東北大学法科大学院メールマガジン

第103号 04/10/2015

◇東北大学法科大学院 新入生オリエンテーション開催

 新年度を迎え、4月2日(木)に東北大学法科大学院において新入生オリエンテーションが開催されました。
 法学研究科長・法学部長の平田武教授および法科大学院長の成瀬幸典教授によるご挨拶をメルマガ読者の皆様にもお届けします。

法科大学院新入生の皆さんへ

東北大学大学院法学研究科長 平田 武

 皆さん、東北大学法科大学院ご入学おめでとうございます。東北大学大学院法学研究科長を務めます平田武です。

 この法科大学院は、東北大学の大学院法学研究科の中に設けられているために、研究科長の私が新入生オリエンテーションの場で、まず挨拶をすることになっているのですが、私自身は専門が政治学、具体的にはヨーロッパ政治史ですので、法学者ではありませんし、法科大学院でも授業は持っておりません。そのような私が、新入生に向けてどのような挨拶を出来るのか、はなはだ心許ないところです。

 もちろん、新入生の皆さんに対して、法とは、とか、法学とは、といった話をする資格がないのはもちろんのことですが、東北大学の法科大学院が養成することを目標としている「優れた法曹」とはいかなるものかということについても、私が話すべきではないでしょう。そういう話は、むしろ法科大学院長の成瀬先生にお聞きして下さい。私は、むしろ大学院法学研究科長という立場で、少しお話しさせていただきます。

 法科大学院が設置されて、法曹養成の仕組みが、司法試験の一発勝負に代わって、法科大学院での2〜3年の教育を経た後に司法試験を受け、合格すれば司法修習に進んで、法曹の職に就くという、予備試験のようなルートを除けば、長いプロセスを要するものになってから既に10年以上経ちました。この間の事態の推移は、法曹養成の仕組みが、当初想定されたようなものにはならず、司法試験の合格率は、以前のものとは比べものになりませんが、それでも想定されていた水準を大きく下回り、合格して司法修習を終えても就職が必ずしも保証されない、など幾つかの問題点を抱えていることは、皆さんもご存じの通りです。ただ、法曹を目指す人たちは、大学を出た後、予備校などで何年も受験勉強を続けることに代わって、法科大学院に進学することが一般的なルートになりましたから、そういう意味では、研究者を目指して大学院に進学する人たちと人生の行程が少し類似してきたように思います。ある一定の期間を経た後に一定の水準に達した成果を求められ、にもかかわらず、その後の就職が保証されていないことを含めて、研究者を目指す人たちも同じような環境の中で苦しみながら努力を続けるわけです。

 かつて、私も研究者を目指して大学院に進学したときは、自分で選んだテーマであるとは言え、研究は大変な労力を要することであるのに、いつまでたっても収入は確保されないし、定職に就く展望はないし、家庭を持つことも遠い先の話のように思えて、ずいぶんと浮世離れした人生コースを選んだものだと思ったものでした。ですが、現在では、4年で大学を出て実社会に旅立っていくとは限らず、研究者を目指す人も、法曹を目指す人も、大学院に進学しますし、あるいは公共政策大学院のような別の専門職大学院に進学する人もいるわけですから、こういった表現を使ってもよければ、「社会化」を遅らさせられる人々の数が、以前よりもずいぶん増えたという気がします。皆さんも、そういう社会化遅延組に仲間入りすることになったわけです。もっとも、研究者の場合には、修士号を取得しても、その先に更に博士課程があり、ポスドクの期間もあります。外国研究の場合には更に必要になる留学期間も考えますと、もっとも法学・政治学分野では、これは就職してからでも可能な場合がありますが、「社会化」には、場合によっては気の遠くなるほど時間がかかります。それでもそうした道を選ぶ人がいるのは、端的に言えば、自分の調べていることが面白いからです。

 皆さんの中には、もちろん、2年とか3年の課程を経て、「優れた法曹」としての資質と能力を身につけて、実社会へと旅立っていく人たちも多くいるでしょう。それは素晴らしいことであり、是非それを目指して下さい。ですが、もし、法科大学院で学んだことに面白みを感じて、それを更に探求したいという欲求を感じたら、博士後期課程への進学も考えてみて下さい。法学研究科の博士後期課程には、修士号をもっていなくとも、司法試験合格者を受け入れるための後継者養成コースが設けられています。更に数年の「社会化」の遅れを覚悟しなければなりませんが、学問に携わることはそれに値すると私は思っています。

 以上をもって、新入生の皆さんへの挨拶に代えさせて頂きます。皆さんが、同級生達と切磋琢磨し、研鑽を積まれることを祈念します。

法科大学院オリエンテーションご挨拶

東北大学法科大学院長 成瀬 幸典

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 皆さんもご存じのとおり、法科大学院は、司法制度改革の一環として、法曹養成の一翼を担う教育機関として、平成16年に、新たに設けられました。今年は、法科大学院ができて12年目、皆さんは、法科大学院の12期生であり、東北大学法科大学院は35名の新入生を迎えました。法曹を目指す皆さんが、東北大学法科大学院を選択して下さったことについて大変嬉しく思っています。ただ、本法科大学院は、昨年度から1学年の定員を50名としましたので、今年度の定員に対する入学者の割合は70%であり、法科大学院に対する全国的な逆風はありますが、厳しいものがあると感じています。そして、入学された皆さんの中にも、法科大学院を取り巻く環境が厳しいため、少なくない不安を抱えている方が少なくないのではないかと思います。

 このような状況に陥った原因には様々なものがあるでしょう。①当初は7〜8割ともいわれた司法試験の合格率の低迷、②司法修習終了後の弁護士の就職難、③法科大学院の教育に対する不満や不安など、複数の要因が「じわじわ」と法科大学院制度に対するマイナスの影響を与えていったように思います。

 このように法科大学院を取り巻く状況が厳しくなる中、皆さんが不安を感じる気持ちはよく分かります。しかし、皆さんは、このような厳しい状況にもかかわらず、法曹を目指して、敢えて一歩を踏み出しました。法曹という仕事の内容は、法科大学院制度を取り巻く環境がどのように変化しようと変わることはありません。皆さんの先輩方の多くがそうしてきたように、後は、自らのなすべきことについて、与えられた環境の中で全力を尽くすのみです。それは、2年間あるいは3年間、司法試験の合格に向けた勉強を中心とした生活を送るということです。そして、試験に合格し、法曹となったのちは、それぞれの仕事において、自らの最善を尽くしてください。私が皆さんに望むことは、ただこれだけです。「自らの持ち場で最善を尽くす」、それはとても難しいことでしょうが、最も大切なことだと思います。しかし、法曹養成制度を取り巻く厳しい環境の中、敢えて法曹を志望し、東北大学法科大学院に入学された皆さんは、その困難を成し遂げることのできる熱い志を持っているものと信じます。

 私たち法科大学院の教員も、同じく、自らのなすべきことに全力を尽くすつもりです。法曹になりたいと強く願う気持ちを抱えて、法科大学院に進学した皆さんに対して有益な講義を行うことは、法科大学院で教鞭をとる者の義務でしょう。本法科大学院では、近年、修了生を対象とした法務学修制度の導入、本学を修了した弁護士によるオフィスアワーの充実といった学習支援の面での改革を実現してきました。また、法学研究科全体としても、法科大学院修了・司法試験合格・司法修習終了後の後継者の養成あるいは法曹に対する継続教育の一環として、後継者養成コースの充実化を図ってきました。今年度からは、法科大学院のカリキュラムのあるべき姿を検討するカリキュラム等検討委員会を創設し、未来を見据えた法科大学院教育の実現に取り組んでいく体制を整えました。

 各々が自らの持ち場でその責務を果たす。環境がどのように変化しようとも、このことを実践すれば、必ずや良い結果が得られると信じています。

 多くの人が、選択しない道、あるいは、回避しようとする道を、敢えて選びとった人には、その道を敢えて選んだ理由があるはずです。私の前に座っている皆さんは、法科大学院の設置当初に入学した学生と比べて、法曹として社会に貢献したい、社会的な弱者のために働きたいという思いが、強く、純粋なのかもしれないし、そうであって欲しい。今抱いているその思いを、今日から、司法試験、司法修習を経て法曹としての職に就くまで、そして就いた後も、そのまま持ち続けて欲しい、強くそう思います。私たちも、逆風の中、敢えて、法科大学院に進学し、法曹の道を志した皆さんの傍らで、共に歩んで行こうと思います。来週から、早速講義が始まります。しっかりと、勉強に励み、なすべきことをなしてください。

 私からの挨拶は以上です。

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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