法学既修者として合格された方へ

東北大学法科大学院
基幹科目担当教員一同

 東北大学法科大学院への合格おめでとうございます。
 皆さん、新たな目標に向け、意欲に満ちておられることと思います。

 さて、法学既修者の皆さんは、来年4月から、早速第2年次の必修科目の授業を受けることとなります。
 特に、実務民事法、実務刑事法、実務公法という基幹科目は、東北大学法科大学院における教育の中核をなすもので、法律基本7科目(憲法、行政法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)に関する基本的知識に対する理解を、判例・実務の視点を加えて定着させ、より広い視野の下に法的問題を適切に解決する力を養うために設けられたものです。これらの授業は、教員と学生との質疑によって進められることもあり、そこで取り上げられる内容を確実に理解するうえで、皆さんのたゆまぬ努力(予習・復習)は欠かせません。
 そこで、基幹科目の授業に、よりスムーズに取り組めるよう、講義が始まるまでに、是非行っておいてもらいたいことを以下に挙げました。これらを参考に、しっかり準備をしておいて下さい。

 それでは4月にお会いするのを楽しみにしています。

【実務民事法】

(民法分野)

 法科大学院における第2年次以降の授業では、法学部の授業に使用される一般的な民法の教科書に書かれている事柄をきちんと理解していることが前提とされます。すなわち、民法の定める各制度の趣旨や関連する諸制度間の関係を正確に把握していること、事実関係の中から法的な問題点を探し出して整理し、民法及び関連する法令の条文を的確に解釈適用することができることが必要になります。そのため、入学前には、各自が使用する教科書類を改めて精読するなど、復習を十分に行っておいて下さい。
 なお、平成26年度に法科大学院の第1年次科目で指定された民法の教科書は次のとおりですので、参考にしてください。
  内田貴・民法Ⅰ[第4版](総則・物権総論)(東大出版会)
  永田眞三郎他・物権〔エッセンシャル民法〕(有斐閣)
  中田裕康・債権総論[第3版](岩波書店)
  潮見佳男・基本講義 債権各論Ⅰ[第2版](新世社)
  橋本佳幸=大久保邦彦=小池泰・民法Ⅴ事務管理・不当利得・不法行為(有斐閣)
  高橋朋子他・民法7[第4版](親族・相続)(有斐閣)

(商法分野)

 実務民事法(商法)では、商法(特に会社法)について一通り基礎的な知識や理解を習得していることを前提とし、重要な判例を読み込んだり事例問題を解いたりすることを通じて、法的に重要な事実を抽出・分析して条文をあてはめて法的問題を解決する応用的な能力を養うことを授業の目標としています。授業は原則として質疑応答形式で進めます。
 したがって、入学時までに、商法(特に会社法)の教科書・概説書を読み直すなどして、基礎的な知識や理解を確実にしておいてください。概説書は、これまで自分が読んできたものでかまいません(が、違う概説書を読んでみたいという人には、神田秀樹『会社法[第16版](弘文堂、2014年)伊藤靖史ほか『会社法[第2版]』(有斐閣、2011年)あたりを薦めます)。教科書・概説書を読み直す際には、それぞれの制度が具体的にどのような役割を果たしているのかをイメージしつつ読み進めるとともに、適宜条文を引いてみて、会社法の条文の引き方・読み方にも慣れるようにしてください。時間に余裕のある人は、基礎的な知識の定着度を測るために、短答式試験の過去問題を少しずつ解いてみて、わからないところについては教科書・概説書にその都度戻って確認する、という形で学習を進めると、理解がいっそう進みます。
 また、商法を学ぶには、民法の基礎的な理解が前提になりますので、民法に不安のある人は民法の復習もしっかりしておいてください。
 新たに概説書等を購入する際には、平成26年改正を織り込んだものにしましょう。

(民事訴訟法分野)

 既修者の皆さんは、早速、実務民事法の講義が始まります。特に、前期から民事訴訟法の学びがスタートします(教科書は『ロースクール民事訴訟法』です)。これに準備するために、参考書の一つである山本弘=長谷部由起子=松下淳一著『民事訴訟法(有斐閣アルマ)』を読んでおいてください(より進んだものとしては、伊藤眞『民事訴訟法』(有斐閣)高橋宏志『重点講義民事訴訟法』上・下(有斐閣)松本博之=上野泰男『民事訴訟法』(弘文堂)三木浩一=笠井正俊=垣内秀介=菱田雄郷『民事訴訟法』(有斐閣リーガルクエスト)が挙げられます)。それから、実務を学ぶうえで必要不可欠な民事訴訟法判例百選(第4版・有斐閣)を読んでおかれることを希望します。

【実務刑事法】

(刑法分野)

 刑法は、第2年次に開講される「実務刑事法」(通年・8単位・各学期週2回)のなかで講義を行います。
 教科書は、特に指定しませんので、基本的な概念や基本原理の確認には、これまで使用している体系書・概説書を使用してください。講義では、総論・各論に関する重要な判例を素材としつつ、教員が予め示した予習課題に沿って授業を進めることとなりますが、特定の理論的立場を前提にした内容ではありませんので、どの概説書を使用するかは、重要ではありません。ただ、近年、理論的な発展が著しいテーマもあり、また、講義では近時の判例を取り上げることが少なくありませんので、近年、出版されたものが好ましいとはいえます。
 「実務刑事法」における刑法の講義は、受講者自らが、条文の文言を出発点として、問題の解決に向けた模索を重ねることを通じて、理論的に説得力のある主張を展開する能力を養うことを目指しています。そのためには、知識の獲得と同時に、それを表現する訓練を行うことが重要です。そのために、入学されるまでの間に、これまでの新旧の司法試験の問題を自ら解いて、制限時間内に答案形式にまとめてみることが有益であると思います。自らの知識が不正確・不十分なところを認識し、その点については、4月までの間に補っておいて下さい。また、解説を読んでも理解しにくい・納得できないところについては、問題意識を抱えて4月からの講義に臨んでください。そして、その問題意識については、講義の中で、あるいは、講義の後の質問等において、解消するように努めてください。
 覚えるだけでなく、自らの頭で考えることが重要であることを念頭において、学習されることを希望します。

(刑事訴訟法分野)

 刑事訴訟法は、第2年次に開講される「実務刑事法」(通年・8単位・各学期週2回)のなかで講義を行います。
 教科書は、宇藤崇=松田岳士=堀江慎司『刑事訴訟法』(有斐閣,2012年),判例集は,三井誠編『判例教材刑事訴訟法〔第4版〕』(東京大学出版会,2011年)を使用します。これらの教材について改訂が行われる場合は,最新版を用います。
 講義は,受講者が既に基本的な知識を十分に習得していることを前提として進めます。あくまでも司法試験の論文式試験を念頭に置き,そのために押さえておくことが必要な重要判例の分析・検討を中心に行います。

【実務公法】

(憲法分野)

 新年度の前期に開講される「実務公法(憲法)」(2単位)では、受講生が憲法に関する基本知識をすでに身につけていることを前提に、応用力の養成を目指します。そこで、入学時までに、憲法の教科書及び判例集を読みなおすなどして、基本知識を確実に身につけておいてください。
 なお、授業では、テキストとして,小山剛『憲法上の権利の作法〔新版〕』(尚学社、2011年)を使用します。

(行政法分野)

 実務公法の行政法分野の授業では、受講者が行政法についての基本的な知識を有していることを前提に、判例を手がかりとして、具体的な行政紛争を解決するための手法を学びます。
 授業では、中原茂樹『基本行政法〔第2版〕』(日本評論社、2015年3月)の内容を1年間かけて学びます。同書の出版までしばらくお待ちください。既に同書の初版をお持ちの方はそれを、お持ちでない方はこれまで用いてきた行政法教科書を、読み返しておいてください。また、授業では、判例を学ぶために、稲葉馨=下井康史=中原茂樹=野呂充編『ケースブック行政法〔第5版〕』(弘文堂、2014年)を用いますので、授業開始までに読んでおかれれば、授業の理解が進みます。

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