東北大学法科大学院

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東北大学法科大学院メールマガジン

第69号 12/27/2010

◇平成23(2011)年度 東北大学法科大学院入学試験の結果について

 平成23(2011)年度東北大学法科大学院入学試験の結果およびその概要がホームページに掲載されています。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/info/101221-happyo.html
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/info/101221-gaiyo.html

 入学手続の期間は、1月4日(火)〜5日(水)となっていますので、ご注意下さい。

◇東北大学法学部同窓会法科大学院部会の設立について(ご報告)

東北大学法科大学院長 佐藤隆之

 平成22年11月12日(金)、東北大学法学部同窓会宮城支部総会に先立ち、法科大学院部会の設立総会が開催されました。

 設立総会には、多くの修了生が出席し、同窓会会長の芹澤英明法学研究科長の祝辞、法科大学院長の挨拶に引き続いて、会則の制定、役員の選任及び今後の活動方針について審議が行われ、部会長には、伊藤佑紀弁護士(第1期)が選出されました。そして、締め括りに、同窓会副会長の阿部純二・東北大学名誉教授よりご挨拶をいただき、和やかな雰囲気のうちに会を終えました。

 東北大学法科大学院は、平成18年3月の第1期から本年3月の第5期まで、法学既修者(2年修了)コース266名、法学未修者(3年修了)コース145名、あわせて411名の修了生を送り出してきました。

 この同窓会部会の設立により、法科大学院の修了生同士の、また、修了生と在学生との結びつきを強めるうえで、しっかりとした基礎を得たことは、大変喜ばしいことです。本部会の設立にご理解とご尽力をいただいた関係各位に深く感謝したいと思います。

 今年は、エクステンション教育研究棟が竣工し、素晴らしい学習環境が整備されたことに加え、ここに長らく懸案であった同窓会部会も設立され、東北大学法科大学院にとって、まさに節目となる一年でした。今後は、同窓会部会と手を携えて、在学生との交流も含め、同窓生の皆さんが繋がりを深めることのできる場を提供していきたいと考えています。

◇トピックス ―連続講演会その5

 去る9月1日(水)に片平キャンパスのエクステンション教育研究棟において、庄司智弥弁護士をお迎えして開催された、第4回連続講演会「少年事件最前線」の概要をお送りします。

 ご講演では、少年事件における弁護士の活動について、庄司弁護士ご自身のご経験を踏まえて詳しくお話いただき、質疑応答も活発なものとなりました。

少年事件最前線

庄司 智弥 弁護士

<自己紹介>
 ただいまご紹介頂きました庄司と申します。宜しくお願いします。

 私は、東北大学大学院の文学研究科に元々在籍しておりましたが、法科大学院ができるときに、何かの縁と思いロースクールを受験し運良く合格したので、法科大学院に入学しました。文学部の時には法律を勉強することはなかったので、全く法律の勉強をしないまま、法科大学院に入学したことになります。その後は色々ありましたが、運良く司法試験にも1回目で合格することができました。

 私の成績ですが、悪い方だったと思います。授業は真面目に受けていたつもりでしたが、いわゆる司法試験に関係する科目ですと、ほとんどC評価でした。特に、1年目のときの成績表をみると、リーガルリサーチ以外は全部Cという状態でした。L3の時に受けたTKCの模試も、偏差値30とか、そのくらいだったと記憶しています。

 一方で、司法試験に関係しない科目、実務基礎科目、模擬裁判やローヤリングなどの科目も全部取れる限り取って受けていましたが、そういった科目については成績がまあまあよかったです。実務基礎科目は、実際に事件処理をしていくというイメージを作る上で、すごく良かったと思います。勉強面でも、当初はどうやって勉強したらいいのかも分からない状態で、勉強を始めることすらできなかったのですが、実務基礎科目を経て、法律が使われる場面がどのようなものかをイメージできるようになってからは、法律の勉強も自分なりにある程度できるようになったと思います。

 司法修習は、秋田修習になりました。今から考えますと、司法修習も大きなところではなく、小さな地方に行ってよかったと思っています。事件はどの地域でもありますが、小さい地方の方がよりバリエーション豊かに経験できると思いました。

 司法修習が終わり、仙台弁護士会に登録して1年目から少年事件をいくつか受任しています。今回の講演は、「少年事件最前線」というタイトルになっていますが、私よりももっと前にいる人がいますので、今日の私の話よりも最前線はもっとずっと先にあると考えて頂ければと思います。また、私の話が少年事件の全てではないこともご理解下さい。

<少年事件を受任するようになったきっかけ>
 実際のところ、ロースクール在学中は少年事件についてほとんど全く考えていませんでした。少年法の講義がありましたので、履修しようかなと思い登録をしたことはあったのですが、1回目の授業で、非常に分厚い資料を見せられ、「これはとてもじゃないがついていけない」と思い、速やかに撤退しました。

 ただ、少年事件を修習中に経験してからは、弁護士になったら少年事件に取り組もうと思うようになりました。私は、修習中に、少年事件を4件経験できました。1件は弁護修習の時で、あとの3件は裁判所での修習のときでした。私の同期の話では、修習中の少年事件は1〜2件という方が多かったので、4件というのは多い方だと思います。

 数だけではなく、弁護士と裁判官の両方の立場からみることができたのも大きいと思います。特に、裁判所では、実際の審判に加えて、少年に対して働きかけを行った結果少年が更生をした事件の記録もみせて頂きました。少年事件のやりがいを目の当たりにしたので、少年事件を積極的にやってみようと思うようになったのだと思います。

 弁護士になってから、私は4件の少年事件を受任しています。全て昨年度受任した事件で、今年度はまだ1件もありません。少年事件を受任する経緯としては、当番弁護士の制度、あるいは被疑者国選の制度等から引き続き担当することもありましたし、あるいは、法律相談センターから紹介で受けたものもありました。

<少年事件の特徴>
 少年事件の特徴として、私が感じているのは、大体以下の3つです。色々な本ではもっと書いてありますが、私自身が実感しているものは以下の3つという風にご理解下さい。

○少年の更生・立ち直りへの関与の度合いが大きい
 私がこれまで担当した少年事件というのは、14〜15歳の少年でした。中学校の2〜3年生で、大人に対して抵抗感がある場合とそうでない場合がありました。が、どの場合でも比較的素直に私の話を聞いてくれたと感じました。そのお蔭で、私も少年に対して色々関与が出来たのかなと感じています。

○裁判所との意見交換が重要
 少年事件の特徴の2つ目として、裁判所と意見交換をするという機会が非常に多いということがあります。

 調査官あるいは書記官と話をするのは当たり前で、裁判官(審判官)と直接話をすることもあります。その少年に対してどういう働きかけをするのが一番よいかを、裁判所と弁護士とが一緒になって考えて行く場面が非常に多い。裁判所がどのように考えているか、また、こちらがどのように考えているかをきちんと意見交換していかないとうまくいかなくなります。

 ただ、もちろん、事件の類型によって、対応は全く変わってきます。例えば、争いがない事件の場合、いわゆる自白事件の場合は、どのようにして少年を立ち直らせることができるかという点に焦点を当てることができます。

 一方で、争いがある事件、否認事件の場合は、全く変わってくると思います。私は、これまで否認事件、犯人が違う、あるいは、正当防衛を主張するという事案には当たったことがなく、裁判所と鋭く対立することがありませんでした。だから、裁判所と弁護士が一緒になって考えていく、というイメージが強いのだと思います。

 それでも、傷害事件を起こした少年について、少年の言い分と裁判所の認識とが異なる部分があったことがありました。「確かに怪我をさせたことは間違いないが、それにはこういう事情があった」ということを少年本人がすごく主張していました。そのような場合には、裁判所に対してもきちんと主張することになります。

○期間の短さ
 少年事件の特徴の3つ目としては、期間の短さがあります。

 観護措置決定がなされた場合は、実務上3週間程で審判が行われることが多いように感じています。この3週間という期間は 非常に短いです。家、学校、勤務先、あるいは被害者、色々な関係者がいますので、その関係者それぞれから話を聴かなければいけない。そして、その内容を少年に伝えて、少年から事情を聴かなければいけない。それから、そういった関係者の話を聞いた少年から更にリアクションがあれば、そのリアクションを今度は関係者に伝えなければいけない。そういったことをしていくと3週間なんてとても足りないです。その少年事件だけではなく、他の事件も担当していますので、時間がないのです。

 短時間で多くの事をしなければいけないので、動き回ることになります。そうすると、色々なことをしている気になってきます。そのため、弁護士として充実感を感じる部分もありますが、逆にいうと自己満足、「自分はこれだけやったのだからいいだろう」という気持ちになりがちになると感じています。

 以上、私が感じている少年事件の特徴を3つ挙げました。本にはもっと色々書いてありますので、詳細はそちらに譲りたいと思います。

<少年事件における付添人弁護士の活動>
 少年事件における付添人弁護士の活動で重要なことは、少年が社会に戻って生きていくにあたって、今後二度と同じようなことにならないように、環境を調整していくことだと思います。少年事件での弁護士の活動について、これまで私が担当した事件も含めて、紹介をさせて頂きたいと思います。

○逮捕・勾留段階
 まず、少年が逮捕・勾留されたときには、一般の刑事事件と同様に、事件に関すること、家庭環境、職場環境、あるいは学校関係のこと等の身の回りのことについて聞き取りを行います。ただ、そのときに、事件のことを聴いただけでおわらないことが少年事件の特徴だろうと思います。

 少年事件は最終的に家庭裁判所に送致されて、審判手続になることが多いので、その審判を見据えて活動をしなければなりません。先ほど述べたように、観護措置決定から約3週間の期間しかないですので、逮捕から送致までの期間も無駄にはできません。

 私の場合、傷害事件を起こしてしまった子に対して、何故事件を起こしてしまったのかを聴くために、質問事項を書いて差し入れをして、それに答えてもらうという形でやったことがあります。

 ただ、これは少し誘導的だったかもしれないと感じています。質問の内容は、「今回どんなことをしてしまったのか?」、「何故そういうことをしたのか?」、「そういうことをしてしまったことについて、自分としてはどこが良くなかったのか?」、「相手には落ち度はあるか?」というようなことでしたが、ある程度勘のよい子だと、次の質問の内容をみると、こちらが回答してほしいことが分かってしまいます。私が担当した少年は1つ1つ順に答えてくれましたが、場合によっては、先に質問を読んでしまい、結局弁護士が答えて欲しいことを答えているだけになってしまう恐れがあります。

 先輩弁護士に聞いた話ですが、審判の時に、裁判官(審判官)から「少年自身が振り返ってない」と指摘をされたことがあるそうです。要するに、弁護士と会って話をすると弁護士が答えて欲しいことが分かるので、ある程度答えられていたが、全く違う角度から裁判官から質問をされた時には、きちんと答えられなかった。それは、少年本人がきちんと考えているのではなく、弁護士を見て答えているからだ……ということのようです。このような話を聞くと、やはり、回答を誘導する、弁護士の考えを押し付けるということでは、少年事件に対する対応として不十分なのだろうと思います。

○観護措置決定
 仙台弁護士会では、鑑別所に行くかどうかの判断がされる観護措置決定のところで、弁護士が立ち会うという申し入れをして、その決定の時に少年に立ち会うことがあります。ただ、これについては、最近裁判所の扱いも少し変わってきているようですので、絶対に立ち会えるというわけではありません。

 その後、裁判所による調査が入ります。ここから家庭裁判所の調査官が活躍されるわけですが、平行して弁護士の方でも色々活動しなければなりません。

○観護措置決定後
 観護措置決定後、審判まで約3週間とすると、何度も言うようですが、時間が足りません。私は最短で2週間というケースがありましたが、2週間ですとほとんど何もできませんでした。

 その時間がない中でどうするかということですが、私は、基本的に何回も面会に行くようにしています。面会回数について、審判までに3〜4回と書かれた本もあるようですが、私の場合は、時間に余裕があったこともあって、平均すると2〜3日に1回は行くようにしていました。だいたい、1件につき7回前後面会に行っています。

 面会に行くことの意味ですが、これは関係作りにあると思います。鑑別所に入った少年は不安に思っています。そして、不安に思っている少年に対して何回も面接に行くことで関係が出来ていく。「信頼関係」と言えればいいのですが、少年が本当にこちらを信頼してくれているかどうかは分からないので、私は「何らかの」関係作りだと考えています。

 何回も面会に行くと、信頼してくれているかどうかは分からないにしても、さすがに多少は話をしてくれるようになります。1回目の面会のときは、少年からすれば私が誰なのか分からないですし、弁護士とそれ以外の人との区別もついていないですから、ほとんどの場合警戒して話をしてくれません。

 それで、私の場合は、1回目の面会のときは、ジュースを2本買って、差し入れとして持って行き、「どっちを飲む?」と訊くところから始めます。そして、「何が好き?」とか、「どんな歌が好き?」とか、どうでもいい話をして帰ってきます。

 もちろん、1回目の面会でも、「私は弁護士(付添人)として、今回の事件についてあなたの味方をすることになりました」という説明はしますが、それ以上、事件に関連するような話はしません。2回目の面会のときも事件の具体的な話はほとんどしません。

 3回目の面会で、ようやく事件の話をするのが、私のパターンだと思います。ただ、審判まで2週間しかなかったときは、そんな悠長なことはできなかったので、1回目の面会のときから事件の話もしましたし、2回目の時は事件の話しかしませんでした。

 1回の面会でどれくらいの時間話をするかもなかなか難しいところです。私は、たいてい、後ろに予定を入れないようにして、何となく話が切れたら帰るようにしています。1回の面会でだいたい1時間半から2時間くらい話をしていると思います。

 審判まで2週間しかなかったケースでは、1回の面会も30分位で済ませてしまいました。結局、このケースでは、話はしても会話は成立しなかったと思います。会話が成立しなかった理由としては、1つは、こちらの「時間がない」という焦りが、その少年に感じられてしまったのではないかということが考えられます。もう1つは、親との関係が上手くいっていなかった子でしたので、私も親から話を聞いて、少年と親についての話を色々していたのですが、私の話が「親サイドからの話」として受け止められてしまったようです。

 少年が自分から話をしてくれるのを待てなくて、少年に、親に対してどう思っているかを私から色々と問いかけてみたのですが、これもこちらからの一方的な質問になってしまい、十分な聴き取りができなかったような気がします。「こうだったのではないの?」と答えを押し付けてはいけないですし、かといって漠然と質問をすると少年は答えづらい。時間があれば色々な聴き方もできると思いますが、余裕がない中でやってしまったのもあって、少年が親に対しての感情や要求をきちんとまとめきれない状況のまま、進めてしまいました。これも良くなかったと思います。

 少年との付添人弁護士との関係、先ほど「信頼関係」とお話しましたが、これについては弁護士が一方的に上手くいっていると勘違いしてしまうこともあります。少年の場合、学校の先生に対して「いい顔」をするというのと同じで、弁護士や裁判所の職員、鑑別所の職員に対していい顔をするというのはよくあることだと思いますから、注意をしなくてはいけません。

 これに関しては、鑑別所の教官や職員の方の情報が非常に有益になります。鑑別所の職員の方は色々な少年をみていますし、子供の心理について専門的にやっている方ですから、ちょっとした仕草や表現の仕方、セリフなどから少年の気持の在り方を察することが出来るからです。

 私も、鑑別所の教官や職員の方に、「私が帰った後に、少年が弁護士についてどのように言っていましたか?」とか、「弁護士との話についてどう言っていましたか?」とか、「事件についてどう言っていましたか?」などの話を聞いたことがあります。そうすると、色々なお話をしてくれます。傷害事件を起こした少年については、「少年は強がっている部分がある」という話をしてもらいました。

 別の少年のときには、「弁護士さんが帰った後に泣いていましたよ」と聞きました。このような話を聞くと、泣いた原因は何かとか、その子との会話の中から振り返ってみます。確かこんな話をしていたと思いつくと、次回はそこから話をしていこうと考えることもできます。

 面会をして、少年と弁護士の関係が上手く築ければいいのですが、上手く築けなくても、少年には自分の問題点を考えてもらわなければいけません。少年審判は、罪を犯した少年を処罰するというスタンスではないからです。極端な話をすると、私は、「その少年が今後社会の中で生きていくために今のうちに直さなければいけないところを、どのように直していくのか」を考えるのが少年事件だと思っています。審判の結果、どんな処分になったとしても、少年自身が問題点を認識していなければ、いずれまた同じこと繰り返すことになってしまう可能性が高いと思います。ですから、少年には、とにかく自分の問題点だけは意識してもらうようにしなければならないと思っています。

 それで、私の場合、面会のときの話の流れで、「また2〜3日後に来るから、その時までに○○を考えておいてね」と必ず宿題を1〜2個置いてくるようにしています。そのようにして、本人に色々考えてもらう。考えてもらう内容は、少年の問題点だけに限ったものではなく、将来の夢、両親や家族に対する気持ちであったりします。やはり、自分で自分のことを考えることができない子もいますので、自分のことについて、できるだけ客観的に振り返ってもらう機会を作らなければいけないと感じています。

 最終的には、自分の問題点は何かということを認識してもらうところまで少年が辿り着ければいいと考えていますが、そうは言っても、うまくいかない子もいます。私は割と理屈っぽいので理屈で話をしてしまいますが、理屈に頭から反発してしまう、頭に入ってこない、どうしても納得できないという子もやはりいます。そのような子の場合に、どのようなアプローチがいいのかを本当は考えなければいけないのですが、この点は私も十分ではなかっただろうと反省しています。

 こういう場合、調査官や鑑別所の方と話をして役割分担をする、「こちらでは○○というところまでいっています。ですから、次は○○からスタートして下さい」という形で、役割分担をすることも考えられたのではないかと思っています。

○親との関係について
 親との関係も問題になります。少なくとも私が担当した4件の少年の場合は、親に対してすごく不満を抱えていました。

 一方、親からも「もうこの子はもう無理です。自分では立ち直らせることができません。面倒をみていくこともできません。だから少年院に入れて下さい。」と言われることが結構あるようです。私も4件中2件でそう言われました。親は親で不安なのだと思います。その子に対してどのように接したらいいのか分からない。ですから、その親自身の不安も受けとめてあげることが大切だろうと思います。

 「不安」といいますが、その「不安」の原因は一体どこにあるのかも考えていかなければなりません。例えば、私が経験した中では、家出をして売春行為をさせられた事件で、親からいくら注意してもだめだったという少年がいます。逆に、親が突き放したら、遊んでばかりだった。「注意してもダメ、突き放してもダメ、じゃあどのように子供と接したらいいのですか?」というのが、親の側の不安だったのだと思います。

 接し方が分からないということで、私の方では、子供が親に対してどう思っているのか、どうして欲しいと思っているのかを聞いて、それを親の方に伝えることを試みました。また、親自身からも、生活の中で、どうしたら負担を感じないで子供に接することができるのか、そういったところまで話をすることが必要だと思いました。実際に、それをやりきれたかと言われると自信はないのですが、このケースではそれを目指して取り組みました。

 ところが、両親それぞれで子供をどのように扱うか、子供とどう接するかで食い違いがある場合もあります。こうなると大変です。両親が離婚をすると言っているという少年の事件も受任したことがありますが、このケースは色々な要素がありました。家庭の問題、子供の問題、親の問題などですが、それぞれ別の問題として考えてみました。

 子供はどんなところで問題を抱えているのか、親はどんなところで問題を抱えているのか、家族として見た時にどんな問題を抱えているのか、そういったところを私なりに分析をしようと思って、「ご両親それぞれは子供に対してどう思っているのですか?」、「それぞれ配偶者に対してどうしたいと思っていますか?」等全部聴き取りをして、その上で「今回の事件を踏まえて家族としてどうありたいと思っていますか?」という話を聴いていきました。

 ただ、時間がない中で、子供から聴いて、父親から聴いて、母親から聴いて……と個別にやっていると、本当に回らなくなってしまいました。結局、聴いた話を上手く整理したり伝えたりできないままになってしまったところもあります。ですが、それでも全くやらないよりはよかったかと思っています。このケースでは、最終的には、母親と少年とが、赤の他人である私や鑑別所の教官の前で、大喧嘩をして本音をぶつけ合うというところまでいきました。この点からすると、家族の問題をそれぞれが自分一人で抱えないというところまでにはなったのかなと感じています。

 もっとも、問題を自分一人だけで抱えないところまでいっただけでは不十分で、本来は、その問題をどうやって克服していくかというところまで共有しなければいけないと思います。そこまで踏み込めなかったのは残念ですが、今後の課題と思っています。

○学校との関係
 少年事件の場合、更に、学校の問題があります。公立中学校であれば、退学というのはありませんが、高校や大学ですと退学処分がありますから、とてもシビアな問題になります。私は、今のところ、中学生までしか担当していませんが、それでも、学校に通っている少年の事件であれば、直接その学校に行って、担任の先生や教頭先生、校長先生から話を聴くことは不可欠だろうと思います。

 担任の先生がその少年に対してどのようなイメージを持っているか。学校として問題のある生徒として認識しているか。問題がある生徒だと認識している場合、どのような意味で問題だと考えているか。そういったことを聴いておく必要があります。というのは、審判の結果、少年が社会に戻ることになったときに、その少年はもともと通っていたその学校に再び通うようになるわけです。ですから、学校の先生がどのようなスタンスで少年をみているかは、非常に大切になります。

 少年事件になると、「問題を起こした子である」というイメージになりますから、学校もやはり色眼鏡で見てしまうことがあります。それで公平に扱ってくれないとなると、そのことは少年自身も分かりますから、自暴自棄になってしまうということはよくあることです。そうならないように、きちんと学校の先生とも協力していく必要があります。少年本人を立ち直らせるためには、戻って来てからどのような生活をさせてあげられるのかが大切だと思います。ですから、家庭と同様に学校との関係も大切であると考えています。

 学校の対応は本当に様々です。ただ、学校というよりは、むしろ個々の先生のキャラクターによるところが大きいと思っています。先生によっては非常に協力的に動いてくれる先生もいて、鑑別所に何回も面会に行ってくれたりする先生もいます。ですが、一方で、「こいつはもうだめだ。絶対にすぐに同じこと繰り返す」と言い切る先生もいます。ですから、学校の先生のキャラクターによるところが大きいです。ただ、先生のキャラクターによるからといって諦めていいわけではないので、「私としては○○と考えています」ときちんと伝えることが大事だと思います。学校の先生全員が「こいつはまた絶対やる」ということはあまりないので、少年の味方を少しでも増やしておいてあげることが大切だと思います。

○調査官との関係
 裁判所との関係では、先ほども述べましたが、一番はやはり調査官との関係になります。ここで、調査官よりも先に少年と会っていると、「この少年はこういうところがあります。こういう点に気を付けて下さい」と伝えられます。

 逆に、調査官の方が先に少年と会っていると、少年に関する情報は得られますが、調査官がその少年に対して先入観を持ってしまうことになりますから、少年の言い分を伝えるという意味ではマイナスになります。調査官が少年に対してマイナスのイメージを先に持ってしまうと、後で、「少年にこういう事情があったのです」と言っても、言い訳としか聞いてくれなくなるという面があります。

 また、調査官の方が、付添人である弁護士よりも少年と付き合いが長い場合もあります。調査官も少年事件の専門家ですから、色々な少年をみています。中には、同じ少年が何回も事件を起こしているという例もあります。そうなってくると、付添人よりも調査官の方がずっと長い付き合いだったということがあり得て、私が担当した事件でもそのようなことが1件ありました。そうなると大変で、私が「この子は△△なのです」と言っても、調査官が「前に○○ということがありましたよ」と言われてしまう。こちらが知らないことを調査官が知っているものですから、こちらからの話の説得力がなくなってしまいます。

 こちらから「以前は○○だったかもしれませんが、今は△△です」ということをどうやって積み重ねていくかが大切ですが、結局のところ、私自身が掴んだ少年のイメージについて、少年から出てきた具体的な言葉、少年の行動をもって説得するしかないです。ですが、それは非常に難しいですし、先入観を持っている人に対してはなかなか伝わりにくいという印象を持っています。

○裁判官(審判官)との関係
 裁判官と会う場面は色々ありますが、私も裁判官から「この件は○○という見通しです。ですから、問題点は××にあると思っています。このうち、△△の点については、裁判所で動くわけにはいかないので、弁護士の先生から□□の方向で動いてもらえませんか」と言って頂いたことがありました。

 事件の見立てがはっきりしていても、裁判所として動くことができない点があるというときに、弁護士にお願いすると率直に連絡してくれたのは本当に良かったと、私は考えています。この点については、色々な考え方があって、裁判所と慣れ合いでやっているのではないかという考え方ももちろんあります。しかし、私としては、少年が今後社会の中でどうやって生きていくのかを考えたときに、問題意識を裁判官と共有して、解決するために少年と一緒に頑張っていくことができるのであれば、裁判官との意見交換もよいのではないかと思います。

○少年審判
 少年審判では、裁判官と少年の一問一答のやり取りが続いていくというイメージです。さらに、少年だけでなく、家族がいれば家族も裁判官から質問されますし、学校の先生がいれば学校の先生も質問されることがあります。裁判官から一通りの質問があった後に、付添人の弁護士から質問をするという流れになることが多いと思います。

 弁護士からの質問をどのように行うかですが、審判に入る前に、質問事項の準備はもちろんしておきます。ただし、準備はあくまで準備であり、審判の場で対応しなければいけないこともあります。裁判官から少年への質問は、裁判官が確認したいこと、少年に考えてほしいこと、少年に問題だと認識して欲しいことを中心に組み立てられていますから、裁判官の問題意識と全く噛みあってない質問をいくらしても仕方がありません。裁判官の問題意識に対して、少年がきちんと答えられていればいいのですが、答えられていない場合は、その点について弁護士から質問をして、自分なりに考えてもらうことが必要です。

 その上で、裁判官の問題意識に対する質問とは別に、私が事前に準備をしておいた質問ももちろんやります。その事件・少年に対する問題意識は裁判所だけにあるわけではなく、弁護士にもありますから、少年が社会に戻った時に問題になると思われることは、裁判官が意識している問題だけとは限りません。ですから、こちらの問題意識を審判の場で示すこともあります。

 私の場合、少年審判の前に裁判官と話をして、私の問題意識を裁判官に伝えておくこともあります。「私としては○○と話をしてきましたが、少年には、私からだけではなかなか伝わっていないかもしれません。裁判官からもこの点について聴いて頂けないでしょうか?」という形で話をしたこともありました。私の持っている問題意識について、審判の場で隠したままとはせずに、裁判官に伝えておいて、裁判官からもこの点が問題だよと少年に言ってもらうわけです。

 私のこのようなやり方がよいかどうかについては、おそらく色々な意見があって、わざわざ不利な情報を裁判官に与えることはないという人もいると思います。ただ、私としては、少年の更生に向けて裁判所と協力関係ができているのであれば、少年事件についてはこういうやり方もありうると考えています。

 少年審判で気をつけないといけないと感じていることですが、自己満足に浸り易い点です。裁判官と話もして、こちらからの要望も聴いてもらい、少年もきちんとそれに答えたとなると、自分の活動に拍手喝采をしたくなりますが、それではよくないのだと思います。本当に良い活動ができたのかどうかは、少年が実際に社会に戻ってみないとわかりません。

 私が少年と審判の後にも関わったのは試験観察になった子のときだけですが、その子の時は、周りときちんと話もできるようになって、上手くやれていることを感じることができたので、よかったと思いました。ですが、それ以外の事件については、少年のその後を確認していないので、それを確認しないまま自己満足に浸ってしまうのはよくないと思っています。

<おわりに>
 最後に、まとめとして、いくつかお話させて頂ければと思います。

 少年事件の場合は遣り甲斐を感じやすいです。私も、強い遣り甲斐を感じています。ただ、自己満足にも浸り易いので、本当に気をつけないといけないと思っています。「常に本当にこれが最善なのか?」、「もっといい方法があるのではないか」といったことを考えながらしていかなければならない仕事だと感じています。

 一方で、少年だからという理由のみで、特別視しすぎるのもどうかと思います。少年事件には少年審判という制度があり、検察官が関与しないということもあるので、一般の刑事事件とは別のものだろうとは思います。ですが、成人の場合であっても、弁護人となった弁護士は少年事件と同じことを本来はやるべきではないか。その被告人が再犯をしないかどうかは、その人の周囲の環境にかかっています。ですから、罪を犯してしまった人を社会で受け入れるための態勢を整えることが大事だという点は、少年であろうが成人であろうが変らないはずです。そういう意味で、少年事件を特別視しすぎることはよくないのではないかと思っています。

 少年事件に遣り甲斐があるといっても、弁護士にできるのはあくまで少年の手助けに過ぎません。このことを忘れてしまうと、少年に対する態度が押し付けがましいものになってしまうのではないかと思います。また、親、学校、鑑別所あるいは裁判所、そういった周りの人たちとの協力があって初めて付添人弁護士の仕事ができるというところがありますから、「自分の手で立ち直らせることが出来た」とか、「自分がいたから更生した」とか、そのような思い込みをしないようにしないといけないと考えています。弁護士だけでなんとかしようと考えないようにしたいと思っています。

 そうは言っても、少年審判までの期間、一緒に同じ問題を考えるということをやってきたわけですから、付添人弁護士は少年にとってそれなりの影響力はあると思います。ですから、付添人弁護士も少年が変わるきっかけになることはできると思います。

 少年が立ち直ってくれて、そのきっかけの1つになれればうれしいですし、そうありたいと思います。

 雑駁な話となりましたが、以上で終ります。ありがとうございました。(拍手)

質1:少年犯罪の報道が多くなってきており、その中の問題として犯罪被害者の支援の問題も多く取り上げられています。弁護士の場合、犯罪被害者や遺族の人たちとはある意味敵対する立場になってしまうと思いますが、犯罪被害者の支援における制度的不備についてどう思いますか?
答1:不備があるのは間違いないですが、一方で完全な制度というのはおそらくないだろうと感じております。その上で、何を優先するかが問題だと思います。少年の立ち直りを図るという点では、審判に遺族や被害者が立ち会うという制度が少年の立ち直りに結びつくのか。この点は、逆にマイナスだろうという見解が強いです。一方で、犯罪の被害者の立場からすると、成人の事件の場合は公開の法廷で裁判がなされ傍聴することもできますが、少年事件の場合は、密室の中で全部終わってしまうので、何も分からないままということもあり得る。それは問題だという見方もあります。
 今の例をみても、どちらの立場を優先するのかは、人によって判断が分かれるところです。ただ、犯罪の被害者の方と加害者である少年とが対話することで、本当の意味での解決を図ることができるという考え方もあり、少年事件に限らず、成人の事件でも行われています。ですから、そういった手法が考えられてもいいと思います。もっとも、それが制度の中に組み込まれて、絶対にやらなければならないことになってしまうと、却ってマイナスになるだろうとも感じております。
 私としては、今ある制度の中で、その少年が立ち直るにあたって、必要なこと、できることを精一杯考えていくしかないと思っています。
質2:自分の担当した事件について、その少年が実際に社会復帰を果たしたかどうかを確認はまだできていないとのお話でしたが、自分のやり方がよかったかどうかを検証したいという気持ちはあるだろうと思います。少年事件について審判後というのは、あまり関わりがないというのが通常でしょうか?
答2:それは人それぞれだと思います。同期の弁護士の中でも審判が終わった後に必ず会いにいく方もいますし、先輩の弁護士でも手紙のやりとりを続けている方もいます。私の場合は、1回は必ず連絡をするようには心がけていますが、こちらからはそれ以上アプローチをしないようにしています。というのは、弁護士との関わりは、その少年にとって自分が過ちを犯したことの証明であり、自分がやってはいけないことをやったということを思い出させるという面があるからです。
 少年の方から連絡してくれるのはすごく嬉しいですが、こちらからアプローチをすると、場合によっては少年にプレッシャーをかけることになりかねないので、私は1回だけとしています。
質3:少年事件を若手の弁護士が担当することが多いということですが、成人の刑事事件に比べて、どの程度の割合で担当することになりますか?
答3:担当する割合というのは正直よくわかりません。当番弁護士制度や被疑者国選制度のお話をしましたが、弁護士会の制度の中では、少年事件だから若手弁護士にというように必ずしも峻別しているわけではないと思います。ただし、聞いたところによると、ベテランの弁護士になると、少年事件を直接法律相談センターから紹介を受けることは少なくなるようです。
質4:弁護士の一般的な職務として、刑事事件だけで仕事をしていくというのはなかなか難しいと聞いたことがあります。実際に担当されているのは、刑事事件だけですか?民事事件も担当されていますか?
答4:昨年度でいうと、私が担当した民事事件と刑事事件の割合は、9:1くらいだったと思います。ですから刑事事件はかなり少ないと思います。刑事事件だけでやっていくことが無理かとの問いに対しては、多分無理ではないと思いますが、大変だろうと感じています。
質5:少年に質問をするときに誘導的になってしまったというお話がありました。少年事件の特徴として期間がとにかく短いということなので、ある程度誘導して話を聞き出すことも必要だろうと思いますが、如何でしょうか?
答5:そこはまさにバランスの問題だと思います。時間をかけないようにしようと思えば、いくらでもやり方があります。誘導しようと思えばいくらでもできますし、少年本人も納得させることも多分できるだろうと思います。ただ過分に誘導をしてしまうと、少年が自分自身で考えずに終わってしまって、事件について十分に消化できないのではないかと感じています。ですから、私はできるだけ本人に考えてもらうことを重視したいと思っています。
質6:文学研究科を中退ということでしたが、その文学部や文学研究科で学んだことというのは、弁護士になって、あるいは少年事件を扱うにあたり、役に立っていますか?
答6:少年事件を扱う上で役に立っているという意識はありませんが、修習中に文学部での経験が役立ったと思ったことは結構あります。1つ1つの事実を細かくみていくという感覚で事件に取り組むことができていると感じておりますし、修習では、その点については他の方よりも指導担当から評価が高かったということがありました。
質7:1〜2回目の少年との面会のときは事件の話をせず、雑談をするとお話されておりましたが、自分には、今の中学生がどのような話をしているのかはよくわからないところがあります。そのような中学生、高校生と話をするために何かしらの工夫をしていますか?
答7:ジュースを2本持って行って、「どっちが好き?」と聴くというのも工夫の1つだと思っています。中学生の話題についていけるかどうかということについては、それによって大きな違いはないと思います。先輩弁護士からも、大事なことはとにかく話を聴くことだ、と言われています。事件を起こした子というは、しばしば「自分の話を十分に聴いてもらえない」という経験ばかりをしてきていますから、話題についていけるかどうかよりも、とにかく話を聞いてあげることが大切だと思います。
質8:検察官や裁判官と比べて、弁護士になってここが仕事として面白いというアピールポイントのようなものがあったら教えて下さい。
答8:私が法科大学院に入学したのは弁護士になろうと思ったからでしたが、修習中に検察官もいいなあと思いました。最終的に弁護士を選んだのはいろんな理由があります。1つは、検察官の場合、扱う事件のバリエーションが少ないですが、弁護士が携わることができる仕事は本当に幅が広いという点です。また、本当に困っている人の中には、裁判をするかしないかという以前に、何をどうしたらいいのかが分からくて困っていることもあります。そういう人の助けになれるというのは、裁判官や検察官では限定されてしまいますので、やはり弁護士の遣り甲斐が大きいと考えています。

◆編集後記

 今回は、第4回連続講演会「少年事件最前線」の概要をお届けしました。
 講演概要の掲載にご快諾いただいた庄司智弥先生に心から御礼申し上げます。

 仙台では、定禅寺通を中心に光のページェントが行われており、華やかな雰囲気になっています。
 今年も残りあとわずかです。健康に気をつけて、どうぞ良い年をお迎えください。

(杉江記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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