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東北大学法科大学院メールマガジン

第43号 03/30/2009

◇バーチャル・オープン・キャンパス

 東北大学法科大学院の雰囲気を疑似体験していただくために,昨年度に実施された本学オープンキャンパスの模様を,動画を交えてお伝えしています。

http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/opencampus/virtual/

(主な内容)
・法科大学院案内
・入試,カリキュラム等の説明
・模擬講義
・個別相談
・懇談会
・施設見学 等

◇教員エッセイ

 今回は,法曹倫理,民事要件事実基礎,民事法発展演習を担当している谷村武則教授のエッセイをお送り致します。

 みなさん,こんにちは
 裁判所からの派遣教員として,昨年4月から東北大学法科大学院で「民事要件事実基礎」などの科目を担当している谷村と申します。大阪府出身なのですが,昨年4月に,大阪から仙台に転勤してきて,1年が経とうとしています。
 教員としても約1年が経ったわけですが,学生の皆さんに教授するには,自分自身がよく理解していないと適切に伝えることができないわけで,実務の理論的根拠を改めてよく考えてみるなど,自分自身にとってもとても勉強になる1年でした。
 今回は,法律実務家になろうとして法を学ぶにあたって,私なりに考えるところを,ご紹介したいと思います。

 法理論についての理解や知識をおろそかにせず
 法科大学院では,実務家の視点から,理論や実務についてお教えしてきたわけですが,その経験を通じても,やはり,法理論についての理解や知識が重要だと思います。
 私が司法試験の受験をしていたころは,法律実務家との接点はほとんどありませんでした。それと比較すると,法科大学院での教育は,実務的な観点からの教育がはるかに多く,法律実務家になろうとする者にとって,向学心がかきたてられる魅力的なものであると思います。
 もちろん,これも重要なことだと思うのですが,他方で,法律実務家にとって,法理論についての理解や知識は,その足腰となるとても重要なものです。例えば,生の事実に接したときに,それをいかにして法律論として組み立てて,要件に当てはめて,法律効果が発生しているということができるのかなどを考えていくことになりますが,そのためには,あてはめの対象となる法理論についての理解や知識が不可欠になると思います。また,実務家になると,理論的な面をしっかりと体系的に学ぶ機会はそうそうありません。法理論についての理解や知識を十分に身につけ,法律実務家としての足腰を鍛えておいて欲しいと思います。

 基礎的な法を大切に
 基礎的な法の重要性はいうまでもありません。民事法の分野であれば,民法の理解が重要になるわけで,例えば,私が担当している要件事実についても,民事実体法の解釈を前提とするものであり,訴訟における攻撃防御方法を検討するにあたっても,民事実体法その中でも民法の理解はとても重要なものであります。
 また,法律実務家としては,何か疑問点が生じたら,まず,関連する条文を確認することが大切であり,疑問点があれば,まず,条文に立ち返って考えるという姿勢が大切だと思います。

 多角的な視点をもって
 法律家にとって,物事をいろいろな角度から考えるというのは,とても重要なことです。例えば,1つの間接事実であっても,ある見方をすれば,原告の主張を裏付けるものであったり,また,別の見方をすれば,被告の主張を裏付けるもののようにみえたりすることもあると思います。
 最終的に,その間接事実が主要事実認定にあたって,どの程度作用するものと捉えるかは,自由心証主義に委ねられるわけですが,そこでは,いろいろな関連する事実や証拠を踏まえ,経験則を最大限に活用して,どのように作用するものかを考えるわけで,法律家にとって,多角的な角度から考える,ということは,法律解釈の相当性を考える局面だけではなく,事実認定の面からみても,とても重要なことだと思います。多角的な角度から考えるという姿勢を身につけることは,法律家としてのバランス感覚にもつながるものではないでしょうか。
 そして,多角的な角度から考える,ということは,結局,本当にそうなんだろうか,という批判的な視点も持ちつつ,自分自身でよく考える,ということではないかな,と思います。

 以上,私なりに考えるところをご紹介してみました。
 これを読んで「なるほど!」と思ったあなた。自分自身でよく考えてみましたか?

◆編集後記

 今回は谷村先生のエッセイをお送りしました。多角的な視点をもち,バランス感覚を保つことは,とても大切であるように思われます。法科大学院に限らず「実務と理論の架橋」の重要性が指摘されている昨今,意思疎通・相互触発作用によるバランス感覚の涵養が必要ではないでしょうか。理論なき実務は危うく,実務を忘れた理論は空疎である−不肖,実務家教員としての生活は今月いっぱいとなりますが,今後も実務と理論の架橋を大事にしていきたいと思います。

 東北大学法科大学院の雰囲気を疑似体験していただくために,昨年度に実施された本学オープンキャンパスの模様を,動画を交えてお伝えしています。ぜひご覧ください。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/opencampus/virtual/

(平塚記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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