東北大学法科大学院

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東北大学法科大学院メールマガジン

第35号 07/15/2008

◇入試説明会行われる

 去る6月25日(水)夕方,東北大学法科大学院・さくらホールにて,平成21(2009)年度東北大学法科大学院入試説明会が実施されました。当日は40名近くの来場者を迎え,東北大学法科大学院の概要や入試についての説明と質疑応答が行われました。また,希望者には施設見学も行われるなど,盛会のうちにプログラムを終了することができました。ご来場いただいた皆様に,心から御礼申し上げます。
 平成21(2009)年度の募集要項は,近々発行予定ですので,もう少しお待ちください。

◇トピックス−連続講演会 その2

 今回は,去る6月16日(月)14:40〜16:10,佐々木泰斗税理士をお迎えして行われた講演会「決算書の読み方について」の概要をお送りします。民事事件においては企業の再建や,損害賠償の実務,刑事事件においては脱税事件への対応といったように,企業の決算書を読み取ることは法律実務家にとって不可欠な能力です。佐々木泰斗税理士は数多くの企業再建・租税事件に携わっており,基本的な知識を踏まえた実践的な講演となりました。

決算書の読み方について

佐々木泰斗税理士

 皆さんこんにちは。佐々木でございます。出身は古川でして,大学卒業後,金融機関に就職しましたが,税理士試験の勉強をして税理士になりました。現在は,会計事務所・税理士事務所を開業しています。皆さんがこれから社会に出られると,決算書等に接する機会があると思いますが,今日はその基本的な読み方について紹介したいと思います。決算書の「作り方」は結構複雑ですが,「読み方」の基本的なところは,今日の時間で結構理解できるものと思います。

 税理士の仕事といいますと,税金関係の申告をすることは勿論ですけれども,銀行からの借入金の問題とか,金融・再生の問題等,弁護士だけでは対応できない問題について,弁護士と一緒に対応しています。また,顧問弁護士のない小さな会社で会計顧問となった場合,様々なアドバイスを行うこともあります。

○決算書の書類

 決算書には,@貸借対照表(バランス・シート:B/S),A損益計算書(プロフィット・アンド・ロス・ステイトメント:P/L),B株主資本等変動計算書(新会社法の下で運用),C個別注記表,このほか上場企業ではDキャッシュ・フロー計算書(C/F)もあります。このうち,中心となるのは@貸借対照表とA損益計算書です。今日は主に@Aの二つについて話したいと思います。

 決算書を使って我々が見ようとするのは,会社の安定性(あるいは安全性:不況や事故が起きても十分の抵抗力があるか),収益性(会社の事業活動が順調で十分に儲けていく力があるか),そして成長性(現在会社は小さくとも,今後,発展していく力があるか)です。

○貸借対照表(B/S)の見方

 基本的には,左右に分かれており,左側には資産が,右側には負債と純資産が入ります。右側は,資産を形作る資金の調達源泉を表し,左側は,資金の運用状態を表します。資金の調達源泉を表す右側のうち,負債は他人のもの(他人資本),純資産は自分の財布の中身(自己資本)です。二つ合わせて総資本と言うこともあります。そして,これら負債と純資産との合計と,資産の合計とは一致するように作られています。

 見方のポイントとして,まず,資産の合計を見ます。どれだけの資産を使って会社を回しているのかが分かります。たとえば「1億円の利益があった」といっても,それだけでは比較のしようがありません。100億円の総資産を使っており90億円は借入金という会社と,10億円の資産を回しており自分のお金が8億円である会社とでは,同じ1億円の利益でも全然意味が違うわけです。

 次に,負債と純資産とのバランスを見ます。純資産は返済の必要がないわけですから,当然純資産が大きい方が良いことになります。このバランスを見るには,自己資本比率(純資産を全資産で除した百分率)を用います。たとえば,製造業で巨大な製造設備や土地が必要な場合,そのための費用を自分で賄うことは通常困難ですから,借入金等によることになり,負債が増えるため,自己資本比率は下がります。これは業種によって違いますが,大体の目安として30%程度,50%あれば優秀な会社,ということができます。

○資産,負債を流動・固定に分けて考える

 これは通常は「ワンイヤールール」で考えます。決算日の翌日から1年以内に現金化するものは流動資産,1年を超えて現金化するものは固定資産。負債でしたら,1年以内に現金で支払わなければならないものは流動負債,1年を超えて支払えばいいものは固定負債です。なお,貸借対照表には「繰延資産」というものもあります。

 会社の資金繰りを流動・固定で分けて考えると便利です。すぐに支払いが必要な流動負債は流動資産で払うのが通常です。指標として流動比率(流動資産を流動負債で除した百分率)がありますが,これが100%以上であることが望ましい。中小企業の場合,100%を下回ると,非常に苦しい例が多くなります。というのは,監査の縛りが緩く,流動資産の中身がしっかりしていないことが多いためです。不良の流動資産・流動債権があったり,長期借入金でも来期に返済が必要なもの(1年以内に返済が必要ですから流動負債となります)が峻別されていなかったりして,流動比率が実際より高めに計算される場合があります。

 また,固定資産は自分のお金で買うのが基本です。とはいっても,固定資産を全部自己資本で調達するのはなかなか困難ですから,自分の資本以外のどこから調達しうるのか,というと,固定負債,ゆっくり返せるお金で買うことになります。モノにもよりますが,土地・建物とか設備,こういうものは長期でやるべきで,短期でやるとたいへんなことになります。

○純資産

 純資産の部は,株主資本,評価・換算差額等,新株予約権の3つに区分されます。さらに,株主資本には,資本金,資本剰余金,利益剰余金があります。資本金は,株主の出資によって資本金に組み入れられるお金です。資本剰余金は,株主からの出資ではあるが,資本に組み入れられないものです。利益剰余金は,会社が過去の利益の蓄積としてどれだけあるかを示すもの,すなわち,その会社の実力であり,長期的に見て,儲ける力があることの証拠になります。

○損益計算書

 貸借対照表がある時点での計算書であるのに対し,損益計算書は,一定期間における決算結果をまとめたものです。具体的には3つの段階−営業損益の部,営業外損益の部及び特別損益の部からなります。新会社法ではこのような表現はなくなっていますが,この概念を用いて説明します。

 利益にもいろいろな定義があります。@売上総利益,A営業利益,B経常利益,C税引前当期純利益,そしてD当期純利益という言葉もあり,それぞれ違う意味で使っています。営業損益の部(企業の営業活動から発生するものを取り扱う)では,売上高から売上原価を引いて@売上総利益を表示し,さらに,商品を売るための販売費,一般管理費を差し引いて,残りをA営業利益とします。以上が営業損益の話になります。

 次の営業外損益(金融収支が問題)では,預金利息,株式配当等の営業外収益と,営業外費用(借入金の利子や手形売却損等で,これがバカにならない)との収支を計算して,B経常利益を出します。ここまでが普通の商売によるものです。

 特別損益の部では,通常の会社活動以外で生じた損益を考慮します。所有している土地の売却(利益),台風で社屋が破損した場合(損失)等を考慮した結果,C税引前当期純利益を出します。これがプラスであれば法人税等の税金がかかりますから,それを差し引いた後の最終額がD当期純利益になります。

○損益計算書を大づかみに見る

 まず,経常利益を見ます。経常利益はその会社の収益力を示しています。借入金の状況等も含めて,経常利益がどれだけあるかを見るわけです。次に,当期純利益を見ます。これが最終的な会社の利益となるわけです。それから,売上高,営業利益を見ます。これらは,金融関連の出入りを除いた,会社本来の営業活動の成果を示すものになります。そして,各項目を詳しく見てみます。

 通常,売上総利益はそう簡単に動きません。1%単位で目標に掲げるくらいですから,ここが変動している場合は何が原因か,考えてみる必要があります。また,営業外損益で雑収入が相当程度ある場合も注意が必要です。

 いくつかの指標が知られています。売上高・経常利益率(経常利益を売上高で除した百分率)は,これも業種により違いますが,売上高の5%以上,8%程度になると優良企業といわれています。同業他社のデータと比較分析に用いたり,自社の過年度との比較分析に用いたりします。

 また,総資本経常利益率(経常利益を総資本で除した百分率)という指標もあります。経営では投資の効率が大切であり,少ない投資で大きな利益を得ることが理想です。ここで,総資本経常利益率を(経常利益/売上高)×(売上高/総資本)と考えたとき,前半は売上高経常利益率といいます。また,後半は総資本回転率といって,1年間に総資本を何回転させているかが分かります。

 したがって,総資本経常利益率を上げるためには,経常利益率を上げるか,総資本回転率を上げれば良く,後者の場合は,売上高を上げるか,総資本を減らすということになります。総資本を減らすには,たとえば,在庫を減らすとか,遊休資産を売却したりすれば良いわけです。

 もう少しお話したかったのですが,時間が参りましたので,以上と致します。どうもありがとうございました。(拍手)

(質疑応答)

問:減価償却について,もう少し詳しく教えてください。
答:たとえば5億円の建物を買った場合,この5億円は全額が購入した年度の費用になるわけではありません。その建物が耐用年数30年であれば,30年間で減価償却費として落としていくことになります。実際には最初の建物購入時に現金の支出があって苦しいわけですが,その費用化は30年間にわたって行っていくことになり,その間,この費用は現金の支出を伴わない費用ということになります。そこで,この現金を運転資金にしたり借入金の返済原資にすることが可能になります。

◆編集後記

 前号の配信直後,岩手・宮城内陸地震が発生しました。四川大地震のニュースも新しいうちに,まさか東北地方で地震とは思ってもみませんでした。その後一か月が経ち,余震は徐々に収束しつつありますが,震源に近い栗原などでは,梅雨の影響による二次災害も懸念されています。今後の一刻も早い復旧を祈念しております。

 今回は,平成21(2009)年度東北大学法科大学院入試説明会の模様をお伝えしました。平成21(2009)年度の募集要項は,近々発行予定ですので,もう少しお待ちください。

 また,今回は,佐々木泰斗税理士による講演会「決算書の読み方について」の概要をお送りしました。講演概要の掲載にご快諾いただいた佐々木先生に,心から御礼申し上げます。

(平塚記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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