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授業風景

教員の声 刑法 教授/成瀬 幸典

t01_1.jpg 東北大学法科大学院の刑事法分野は、法曹として活躍するために必要と考えられる基礎的能力を3年間で段階的に修得することができるように、体系的にカリキュラムを編成しています。具体的には、1年次に、刑事法に関する理論的な知識の習得を目的とした科目として「刑法」と「刑事訴訟法」を、2年次に、理論的知識を前提に、与えられた事案に含まれる問題点を発見し、具体的な事実を指摘しながら、その問題に対して適切な法的解決を提示する能力を養うことを目的とした科目として「実務刑事法」を、3年次に、具体的な事件を素材にして、証拠の評価・事実の認定などを実際に経験することを通じて、刑事手続に携わる実務法曹に必要な基本的知識・技能を習得することを目的とした科目として「刑事裁判演習」を設けています。また、科目の特徴に応じた教員の配置がなされており、1年次科目は、研究者教員が、2年次科目は、研究者教員と実務家教員とが共同して、3年次科目は、実務家教員が講義を担当しています。私は、刑法の研究者教員として、「刑法」と「実務刑事法」の講義を担当していますが、写真の風景は、刑法に関するものですので、ここでは刑法について書きたいと思います。
t01_2.jpg 法科大学院の刑法の講義は、法学未修者(1年次生)が、刑法総論(ある行為を犯罪と認めるために満たしていなくてはならない要件を明らかにする分野)と刑法各論(殺人罪などの個々の犯罪を扱う分野)に関する基本的知識を習得することを目的としています。これは、従来から法学部で行われていた刑法の講義と内容的にほとんど同じものです。ただ、法科大学院の刑法の講義の時間数(単位数)は、法学部の刑法総論・各論の講義の半分程度ですので、法科大学院の学生の皆さんの負担、とりわけ自習の負担は、かなり重いものとなっています。特に、初めて刑法を学ぶ人が、慣れない言葉遣いで書かれている刑法の教科書等で予習しながら、知識の定着を図るために復習もするというのは、かなり厳しいようで、最初の半年間は、「指定された文献を読むだけでも大変です。」とか、「何が分からないのかも分かりません。」という意見を聞くことがしばしばです。刑法の講義では、法科大学院での講義用に作成した独自の教材を学期の初めに配布し、予習・復習をしやすいように努めていますが、やはり、予習・復習は大変なようです。しかし、毎年、後期の半ば頃になると、講義の中での質疑応答や講義後の質問の内容などから、徐々に刑法的な思考に馴染んできている人が増えてきていることを感じるようになります。知識の量は、十分でないことが少なくありませんが、問題に対して法的に考える姿勢のようなものが芽生えてきているのでしょう。このことは、他学部出身者であるか、法学部出身者であるかではなく、むしろ、コツコツと地道な勉強を続けてきたかどうかに関係しているように思います。特に、社会人を経て入学された他学部出身の人などは、勉学意欲が高く、伸びることが多いように思います。熱意と継続が、個々の学生の能力を開花させる瞬間を目の当たりにすることができるのは、法科大学院で教育に携わることの大きな喜びの1つです。

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