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平成18(2006)年度 東北大学法科大学院入学試験(第2次選考)小論文試験

平成17(2005)年11月27日実施

問題

平成16(2004)年5月21日,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し,同年5月28日に公布された。それに基づいて,公布から5年以内,すなわち平成21(2009)年5月までに裁判員制度がスタートすることとなった。これは,司法制度改革の一環として,国民の司法への参加の道を開いたものである。裁判員制度の導入が決定される前には,その制度設計のあり方について,様々な議論がなされた。

以下の設問1.及び設問2.に,それぞれ1000字以内で答えなさい。

設問1.裁判員制度は日本独自の制度であるといわれている。その特徴について,資料(1)〜(5)を基礎として,陪審制及び参審制と対比させながら,検討しなさい。

設問2.設問1.の解答を踏まえたうえで,市民の司法への参加の意義と問題点について,資料(6)において定義されているような民主主義及び自由主義という視点から論じなさい。

なお,いずれの設問も,法学の専門知識を問うものではないため,資料に現れていない法学専門知識に基づく論述は,特別の加点対象とはしない。

資料(1):「裁判員制度の概要」(最高裁判所及び法務省ホームページに掲げられた資料を基礎に,出題者が作成)。
資料(2):「参審制と陪審制及びわが国における司法への市民参加について」(出題者が作成)。
資料(3):「司法制度改革審議会意見書」(『平成13年6月12日司法制度改革審議会意見書――21世紀の日本を支える司法制度――』「IV 国民的基盤の確立」から抜粋)。
資料(4):「陪審か参審か」(新堂幸司『司法改革の原点』(2001年,有斐閣)29-37頁)。
資料(5):「『食わず嫌い』の裁判員制度?」(「法律のひろば」2005年5月号2頁)。
資料(6):「自由主義と民主主義について」(加茂利男・大西仁・石田徹・伊藤恭彦『現代政治学[新版]』(2003年,有斐閣)41-42頁[石田執筆])

出題の意図

東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるのに必要不可欠な能力,すなわち資料を正確に理解し,分析し,要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。

設問1.は,日本独自の制度である裁判員制度の特徴について,陪審制及び参審制と対比させながら検討することを求めている。受験者には,資料(1)から(5)を正確に読解したうえで,その内容を適確に要約することが要求される。

設問2.は,設問1.の解答を踏まえたうえで,市民の司法への参加の意義と問題点について,民主主義及び自由主義の視点から論じさせるものである。その際に,民主主義及び自由主義の定義は複数ありうるため,ここでは資料(6)における定義によることを前提としている。設問2.は,特定の政治的理念の下での市民の司法への参加の意義及び問題点について論じさせるものであり,設問1.とは異なって資料を読んだだけでは解答できず,受験者の分析力,思考力,そして文章構成力を試す出題内容となっている。

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