TOP > 法学研究科長・院長からのあいさつ

法学研究科長・院長からのあいさつ

知の拠点、「東北大学法科大学院」へ

*
法学研究科長
芹澤 英明

東北大学法科大学院へようこそ

 東北大学法科大学院の第1の特徴は、「優れた法曹の養成」を目的としているということです。修了者が裁判官・検察官・弁護士のどのプロフェッションに進んでも、常にその中でトップクラスの実力を持った法律家になることができるように、充実したカリキュラムが組まれています。現在、法実務の世界は、専門分化が激しく、ジェネラリストより、スペシャリストに対するニーズが高まっています。例えば、金融や知的財産、また渉外法務でもかなり専門化が進んでいますし、企業法務の中ではM&Aやデリバティブ取引といった、非常に高度な分野が発展しています。刑事でも、経済犯罪やホワイトカラー犯罪、場合によっては、知財関係の犯罪も扱わなければなりません。これらの法実務では、かなり高度な知識と技能を必要としますが、このような専門化した実務に対応するためには、まず、法科大学院の2年あるいは3年の課程で六法を中心とした法律基本科目の基礎的な理論を十分に理解する必要があります。基本的な法分野をよく理解して、しっかりした理論的土台をつくらないと、実社会で高度な発展を続ける法実務に対応することはできません。法学未修者の方にとっての1年次配当科目と、既修者が加わる2年次に配当されている実務民事法・実務刑事法・実務公法の3科目は、ハードで充実した教育内容を備え、本法科大学院カリキュラムの中心を占めています。
 本法科大学院の第2の特徴は、研究者と実務家が協力し合って教育しているというところにあります。法科大学院によっては、研究者は法律基本科目だけを教え、実務家は実務基礎科目を教えるというように、完全に役割が分離しているところがありますが、東北大学法科大学院はこれとは異なり、研究者と実務家が共に、法律基本科目と実務基礎科目を協力して教えています。カリキュラムの中で法実務と理論が架橋されているので、理論は理論だけ、実務は実務だけでお互い別の方向を向いて教えるというわけにはいきません。研究者も実務家も、スタッフはそれぞれの分野で一流の教員であり、法実務の理論的分析、法理論の実践的応用について、日々分かりやすくかつ高度な授業が行われています。
 最後に、法律基本科目や実務基礎科目だけではなく、展開・先端科目や基礎法・隣接科目も、教養を深めるという点でとても重要です。法理論・法実務が専門分化した後に、本当に実力が試されるのは、その専門分野ではなくて、幅広い法律全体の知識、法と政治・経済社会の動きとの関連についての深い理解であり、そのような素養があることが重要な意味を持ちます。本法科大学院のカリキュラムはこの点でも充実しています。たとえば、法律家は官庁に入ったり議員になったりして、立法に携わることもあるでしょうが、そこでは、法律の解釈・適用ではなく、政策立案能力も試されます。そんなとき、ここで「法と経済学」という科目で政策科学の基礎を学んでおけば、思わぬ実力を発揮することができるでしょう。
 法科大学院では少人数のクラスで双方向授業を行っています。その中心は、ケースメソッドを使った教員と学生の間の質疑応答ですが、実は、学生同士の議論や双方向の勉強会もとても重要です。是非、ここで共に学ぶ関係をつくり、さらに先輩後輩関係を築いていってください。そのために、私たちは、講義演習のための設備を充実するだけでなく、学生同士の勉強会を開くための学習環境も着実に整備拡充しています。2010年の夏には、エクステンション棟が完成し、新しい法政実務図書室や模擬法廷教室、研究室、コモンルーム、法政実務教育研究センター室等ができ、先輩法曹が自由に在学生と交流できる環境が整います。仙台は、落ち着いて勉強できる杜の都、ここで法を学ぶことで、各分野で活躍しながら、次代の実務家・研究者を育てる「優れた法曹」となることを是非目指してください。

 

*
法科大学院長
佐藤 隆之

東北大学法科大学院への誘い

 東北大学法科大学院での必修科目の授業は、1年次は1クラス25人、2年次は50人(平成23年度からは40人)を標準とし、課題判例と設問からなる課題に対する予習を前提に、教員からの質問に学生が答え、その答えにさらに質問が投げかけられる形式で進められます。この対話形式の授業は、学生の理解度や思考の筋道を丁寧に確認しながら行われる点で、数百人の学生を相手に一人の教員が講義する形式が一般的な、法学部の授業の姿とは大きく異なっています。
 知識の体系的な伝達という側面からは、教員が一度に多くの学生に一方的に解説する方が「効率的」にみえるかもしれません。しかし、社会の中で生起する具体的な紛争の解決を職責とする実務法曹にとっては、紛争に対する解決を提示し、その根拠を説得的に説明できることが重要です。紛争には利害を異にする相手方が必ず存在し、裁定を下す裁判所を説得できる主張を展開しなければなりません。対話形式の授業は、自分の主張に対して予想される批判への対応や関連する問題との整合性などを確認することを通じて、実務法曹として必要な、筋の通った法律論を組み立て、的確に表現できるようになるための実践的な訓練の場として設計されているのです。その意味では、対話形式こそ、実務法曹の養成に相応しい授業の方法ということになるでしょう。
 このような授業は、学生のみならず、教員の力量が問われる場でもあります。教員は、自らの発問と指名した学生の答えを通じて、取り上げた問題に関する視界が開け、理解が深まるような授業を組み立てていかなければなりません。そのためには、教員の側に、高度な理論研究と豊富な実務経験による裏付けが不可欠です。
 東北大学法科大学院は、この要請に応えることのできる、優秀な研究者、経験豊富な実務家を教員として多数擁しており、実務法曹になるという将来の目標を定めた学生の期待をしっかりと受け止め、充実した教育を提供したいと考えています。
 今夏には、エクステンション教育研究棟が完成し、学習環境の整備がいっそう進みます。また、法科大学院のある東北大学・片平キャンパスは、裁判所、検察庁、弁護士会にも近く、これまでも、実務法曹から直接お話しを伺う機会を積極的に提供してきました。恵まれた環境のもと、将来の自分の姿を想い描きつつ、教員や仲間と勉学に励んだ経験は、今後の法曹としての人生において、きっと大きな財産となることでしょう。
 実務法曹を目指す多くの方が、東北大学法科大学院を学舎として選ばれることを期待しています。
前のページへ戻る