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知の拠点、「東北大学法科大学院」へ

法学研究科長

河 上 正 二

 東北大学法学研究科では、2004年4月から、法学教育・司法試験・司法修習を有機的に連携させた新たな「プロセスとしての法曹養成制度」の中核をなすものとして、新たに「東北大学法科大学院」の設置・開校を予定し、時代の要請にかなう優れた法曹の養成に取り組みます。
東北大学法学部は、大正11(1922)年に全国で第3番目の法学系の学部(法文学部)として設立されて以来、我が国における法学研究・教育の重要拠点の一つとして、大きな役割を果たしてきました。それだけに、法科大学院における高度な法曹養成教育は、私どもの社会的責務と考えております。
一口に「優れた法曹」の養成といっても、その過程は容易なものではありません。「優れた法曹」となるには、現行法体系全体の構造を正確に理解し、法曹として必須の専門的知識を確実に身につけることは、言うまでもありませんが、加えて、冷静な頭脳と暖かい心をもって社会を観察し、鋭敏な感覚と深い洞察力をもって、問題を発見し、分析し、解決への道筋を見いだしていける能力が必要となります。また、具体的問題について広い視野から多様な視点を設定して考察を深め、緻密で的確な論理展開ができることによって、人々の共感を得たり他者を説得する力も磨かねばなりません。広い意味で、他人とのコミュニケーションをするための高い能力(理解力・表現力・説得力・交渉力など)が要求されるわけです。そして、何より、法曹としての社会的責任を強く自覚して諸課題を遂行していく、強靱な意志と使命感・責任感・人格の不断の陶冶が求められます。
どんな新しい問題にも、正しい姿勢で対処できるだけの応用能力は、マニュアルの暗記からは生まれません。東北大学法科大学院では、小手先の技術ではなく、理論的な基礎をしっかりと身につけさせ、足腰の強い法曹を育てたいと念願しています。また、私たちは、これまでの学問的伝統を重んじながらも、実務との緊密な連携により、新しい時代にふさわしい応用的・先端的な授業科目を豊富に提供いたします。学生には、自らの関心に従って、その知的好奇心を充分に満足してもらえるものと確信しています。学びつつ、考え、考えつつ、学ぶという自己省察の時間は、学生を真に学生たらしめ、未来の法曹としての真の実力を養う貴重な時間です。皆さんには、図書館・資料室の豊富な蔵書や教官のアドバイスを徹底的に利用してもらいたいと思います。
法曹養成に特化した教育機関とはいえ、法科大学院は、あくまで「学問」の場です。皆さんには、「学問に対するおそれ」を常に持っていていただきたいと思います。法の世界での諸問題の多くは、正解というものを持っていません。しかし、より優れた考えや意見は常に存在します。自分自身の考えを絶対化することなく、常に批判にさらし、他者の見解に学ぶという知的寛容さと批判的精神は学問をしていく上で、不可欠なものです。他者への共感と理解、そして批判を通して、自らの優れた考えを模索する過程こそが重要です。将来の実務を実りあるものとするためにも、小手先の技術に満足することなく、学問する心を大切にして、大いに学んで戴きたいと念じています。

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