「生活保障システムの比較ジェンダー分析−グローバル知識経済と社会的排除の諸相−」
Key questions
- 貧困、失業、雇用の非正規化、次世代育成の困難などの社会的排除の実相は?
- 社会的排除を克服するべく生活保障システムに導入されている改革の動向は?
研究の目的と方法
このプロジェクトは、「生活保障システム」と「社会的排除」というアプローチを通じて、日本、韓国、ドイツ、スウェーデンを主な対象に、比較ジェンダー分析を行います。およそ1970年代の半ば頃から、経済はますますグローバル化し、先進工業諸国を中心として、サービス業の比重が拡大したり、製造業の生産拠点が国外に移転したりという動きが進んできました(ポスト工業化)。そのなかで、資本主義のあり方も一様ではなく、「自由主義的な市場経済」と「調整された市場経済」に大別されるという、「多様な資本主義」論が展開されています。一方、従来のような福祉国家を基軸とする生活保障システムは手詰まりに陥ったといわれています。新しく浮上してきた社会的リスクに福祉国家が対応できず、多くの人々にとって、生活と社会参加が困難であるという「社会的排除」が広範に現れているのです。
このような状況を背景に、このプロジェクトは、多様な資本主義論において調整された市場経済と特徴づけられる諸国から、上記の4カ国を主な対象として、貧困、失業、雇用の非正規化、次世代育成の困難などの社会的排除の実相、および排除を克服するために生活保障システムに導入されている改革の動向を明らかにしていきます。また、生活保障に役立つ制度・慣行として社会的経済ないしサードセクターに着目します。コミュニティ・ビジネス、協同組合、共済組合、社会的協同組合や社会的企業などを含む社会的経済が、経済全体に占める比重や、その生活保障機能(雇用創出効果、労働市場挿入効果、地域経済波及効果を含む)について、イギリス・イタリアも含めて、現地調査などの方法で調査研究を進めていきます。
研究計画
このプロジェクトは、海外の協力者を含む全体会合を定期的に開催し、集中的な意見交換を行います。その際に可能な限り国際学会等での分科会も開催し、中間的成果を発表して、プロジェクト外からインプットを得るようにします。
2009年度は、9月にブレーメン大学およびハンザ先端研究所と連携して公開シンポジウムと集中研究会を実施しました。また3月にソウル大学日本研究所と共催で国際シンポジウムを開催しました。
さらに、サードセクター、社会的経済に関する調査として、9月にイタリアとイギリスのコミュニティ・ビジネス、協同組合、社会的協同組合などを訪問し、聞き取り調査を行いました。
2010年度は、引き続き定期的な全体会合を開催し、研究成果をまとめる予定です。
叢書刊行のスケジュール
- 2009年度に日本語1冊
- 2010年度に英語1冊、日本語2冊
プロジェクト責任者
大沢 真理
(連携拠点リーダー)
所属
東京大学社会科学研究所・教授
専門領域等
社会政策
業績
メンバー
氏 名 | 所 属 |
---|---|
Karen SHIRE | デュースブルグ大学比較社会学日本社会学科(教授) |
Karin GOTTSCHALL | ブレーメン大学社会政策研究センター(教授) |
Margarita ESTÉVEZ-ABE | シラキューズ大学マックスウェル・スクール(准教授) |
宮本 太郎 | 北海道大学大学院法学研究科(教授) |
金 英 | 釜山大学校社会学部(助教授) |
相馬 直子 | 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科(准教授) |
金井 郁 | 埼玉大学経済学部 (准教授) |
田中 夏子 | 都留文科大学文学部(教授) |
山口 浩平 | 生協総合研究所(研究員) |
今井 貴子 | 成蹊大学法学部(教授) |
朴 姫淑 | 旭川大学保健福祉学部保健看護学科(准教授) |
成 垠樹 | 東京大学大学院博士課程単位取得退学 |
米澤 旦 | 日本学術振興会(特別研究員) |
福田 直人 | 東京大学大学院経済学研究科博士課程 |
建井 順子 |
内閣府男女共同参画局調査課(調査分析専門官) |
三橋 真記 | 社会問題研究家 |
大西 香世 |
東京大学大学院法学政治学研究科 博士 |