「少子高齢化社会の家族変動:ミクロデータ分析によるアプローチ」
Key questions
- 近代家族制度は多様化の時代に適応できるか?
- 家族は、不平等・従属・貧困・暴力とどのように関連しているのか?
研究の目的と方法
本プロジェクトは、ミクロデータによる計量分析を中核として、現代日本社会における家族変動を科学的にとらえ、家族に関する政策の立案と評価に寄与することをめざします。現代社会では、家族をターゲットとする明示的な政策が存在する一方、さまざまな分野で事実上「世帯」を単位として制度が設計されており、家族のあり方は、政策の前提としても機能しています。しかし、従来の計量的な家族分析は、 社会学的な理論に基づいて家族の実態を把握することに主眼があり、法あるいは政策との関連を意識した研究はあまりおこなわれてきませんでした。本プロジェクトにおいては、法学および社会政策学を専攻する研究者と社会学を専攻する研究者との密接な協力により、本GCOE プログラムの研究課題である「ジェンダー平等」「少子高齢化社会」「多文化共生」に関する政策的な問題について学際的な観点から接近します。具体的な分析課題としては、(1)標準的ライフスタイルを前提とする制度と多様化する家族の実態との乖離、(2)経済的格差と家族構造の関係、(3)夫婦間の経済的依存と性別役割分業、(4)家庭における暴力・虐待傾向の発生メカニズム、(5)親族サポート・ネットワークのひろがり、(6)家族の形態と機能に関する規範意識の動態、などがあげられます。
中心となるミクロデータは、日本家族社会学会による日本全国の確率標本による大規模調査「全国家族調査(National Family Research of Japan: NFRJ)です。1998年度、2001年度、2003年度に行われた調査のデータは東京大学社会科学研究所「SSJデータアーカイブ」を通じて利用可能になっています。2008年度にも同規模の調査(NFRJ08)を実施しており、そのデータをあわせてこの10年間の家族変動を追跡することができます。
研究計画
家族変動・家族政策・計量分析に関する文献を収集し、分析課題を絞り込むとともに、既存データを利用しての予備的分析、昨年度実施の「第3 回全国家族調査」(NFRJ08)の回収状況を中心に、家族調査の技術上の問題点の検討をおこないました。また8月には他の2プロジェクトと共同で国際セミナー”Gender Equality in Multicultural Societies: Gender, Diversity and Conviviality in the Age of Globalization”を開催しました。2010年は、NFRJ08データが利用可能になるのを待って本格的な計量分析を開始します。具体的な分析課題はメンバーの自主性にゆだねますが、適宜研究会を開催し、課題設定、分析方法、結果から導かれる政策的含意などについて討議を重ねます。分析結果については、学会大会等での発表、Discussion Paper や機関レポジトリでの公表のほか、国際的な学術雑誌への投稿を積極的にすすめます。
プロジェクト責任者
田中 重人
所属
東北大学大学院文学研究科・准教授
専門領域等
- 社会学
- 生活科学
- 一般統計科学
業績
メンバー
氏 名 | 所 属 |
---|---|
久保野 恵美子 | 東北大学大学院法学研究科 (教授) |
井田 瑞江 | 関東学院大学文学部 (准教授) |
稲葉 昭英 | 首都大学東京人文科学研究科 (教授) |
金井 郁 | 埼玉大学経済学部 (准教授) |
金 貞任 | 東京福祉大学社会福祉学部 (教授) |
澤口 恵一 | 大正大学人間学部 (教授) |
施 利平 | 明治大学情報コミュニケーション学部 (准教授) |
品田 知美 | 東京工業大学世界文明センター (フェロー) |
嶋崎 尚子 | 早稲田大学文学学術院 (教授) |
島 直子 | 首都大学東京ダイバーシティ推進室 (特任研究員) |
鈴木 富美子 | 明治大学情報コミュニケーション学部 (非常勤講師) |
田中 慶子 | 家計経済研究所 (研究員) |
田渕 六郎 | 上智大学総合人間科学部 (教授) |
土倉 玲子 | 北星学園大学 (非常勤講師) |
筒井 淳也 | 立命館大学産業社会学部 (准教授) |
永井 暁子 | 日本女子大学人間社会学部 (准教授) |
西野 理子 | 東洋大学社会学部 (教授) |
西村 純子 | 明星大学人文学部 (准教授) |
福田 亘孝 | 青山学院大学社会情報学部 (教授) |
松信 ひろみ | 駒澤大学文学部 (准教授) |
保田 時男 | 関西大学社会学部社会学科(准教授) |