「グローバリゼーションとナショナリズム」
Key questions
- なぜ、近年、各国内において排他的ナショナリズムが高まっているのか?
- 近年の排他的ナショナリズムの台頭はグローバリゼーションとどのように関連しているのか?
研究の目的と方法
近年、グローバリゼーションが進行した結果、諸国民間の相互依存関係が強まると共に、世界的に生活様式や価値意識の共通化が顕著になっています。ところがその一方で、冷戦終結後の世界においては、各国内で排他的ナショナリズムが高まる傾向が見られます。すなわち、多くの国で、移民・外国人労働者や他のエスニック・グループの排斥を主張する政治勢力が影響力を伸ばし、暴力的な移民・外国人排斥運動、民族紛争(ethnic conflict)、さらには、大量虐殺さえも発生しています。そして、少なからぬ国で、自国の軍事力の行使・威嚇に依存する対外政策を展開することが多くなったり、国民の間に隣国民をはじめとする他国民への敵意(hostility)が高まる傾向が顕著になっています。
本研究プロジェクトの主目的は、このような各国内における「排他的ナショナリズム」(ethnocentric nationalism)がどのように、なぜ起こっているのか、又、それはグローバリゼーションがもたらす社会変動とどのように関連しているかを探究することにあります。
これらの問題を解明するために、本研究プロジェクトは、日本・中国・韓国・ヨーロッパの比較分析を進める計画です。そしてそこでは近年の政治・社会状況に目を向けるだけでなく、排他的ナショナリズムが発生した背景を探るために、歴史的分析、思想史学的分析も行いたいと考えています。
研究計画
本研究プロジェクトでは、日本、中国、韓国、英国、フランス、スウェーデンの研究者による国際共同研究を展開していきます。
すなわち、調査・研究を各国で展開すると共に、随時日本の国内外で国際ワークショップを開いて、それぞれの成果を基に共通理解を深めていく計画であり、その際、積極的にポスドクの若手研究者や大学院博士課程の学生の参加も促すことによって、若手人材の育成にも力を尽くしたいと考えています。
その一環として、2009年の萩セミナーでは、10月15日、18日に、ハワイ大学のSEO Jungmin 助教授が企画を担当して、国際ワークショップ “Political Process of HistoricalMemories in East Asia” を開催しました。この成果を基に、来年度には、英文の本を出版する予定です。そのほか、2010年2月に英国・シェフィールド大学で、2010年夏に中国・清華大学で国際ワークショップを開催する予定です。また、本研究プロジェクトの若手研究者の研究成果として、2010年春に日本語及び英語の本が出版される予定です。
最終的成果は、2010年度から2011年度にかけて、日本語・英語・中国語3カ国語により出版する計画です。
プロジェクト責任者
大西 仁
(拠点サブリーダー)
所属
東北大学大学院法学研究科・教授
専門領域等
国際政治学
ウェブサイト
http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/staff/ohnishi/
メンバー
氏 名 | 所 属 |
---|---|
平田 武 | 東北大学大学院法学研究科(教授) |
横田 正顕 | 東北大学大学院法学研究科(教授) |
樺島 博志 | 東北大学大学院法学研究科(教授) |
戸澤 英典 | 東北大学大学院法学研究科(教授) |
金 淑賢 |
東北大学大学院法学研究科(准教授) |
阿南 友亮 | 東北大学大学院法学研究科(准教授) |
韓 冬雪 | 清華大学政治学部 (教授) |
曹 海軍 | 清華大学政治学部(講師) |
朱 安東 | 清華大学政治学部(准教授) |
何 建宇 | 清華大学政治学部(准教授) |
常 保国 | 中国政法大学政治・公共管理学院(教授) |
李 元徳 | 国民大学校日本学研究所(所長) |
南 基正 | ソウル大学校日本研究所(副教授) |
金 碩淵 | 国民大学校国際学部(講師) |
Glenn D. HOOK | シェフィールド大学東アジア研究所(教授) |
Yveline LECLER | リヨン東アジア研究所-IAO(教授) |
池上 雅子 | ストックホルム大学政治学部(教授) |
徐 禎敏 | 延世大学校社会科学研究科(副教授) |
孫 基榮 | 高麗大学アジア問題研究所(HK研究教授) |
中村 文子 | 東北大学大学院法学研究科GCOE(フェロー) |
紀 萌 | 早稲田大学高等研究所(研究員) |
木原 淳 | 福島工業高等専門学校(准教授) |