「被害者と加害者が共生する社会−『刑事法とジェンダー』研究からのさらなる発展−」
Key questions
- 21世紀の刑事政策における多文化共生とは?—被害者の救済と権利、加害者の更生と再犯防止の観点から
- 加害者への厳罰も加害者の更生も被害者の癒しにはならない。それでは被害者には何が必要か?
研究の目的と方法
犯罪というものについて考える場合、1つには犯罪の予防という観点がありますが、ひとたび犯罪が起こってしまった後には、被害者の救済、加害者の更生・再犯防止等の観点から対策を考える必要があります。しかし、この中の被害者問題については長い間ないがしろにされ続けてきました。それが最近になってようやく問題視され、「被害者の権利」にも目が向けられるようになり、日本は今まさに刑事司法の大転換期を迎えています。そもそも現代社会においては、加害者が死刑になるごく少数のケースを除いて、犯罪を起こしても加害者は必ず社会に帰ってきます (ことに先進国では、日本とアメリカを除いて死刑自体が存在しません)。つまり私達は犯罪の被害者(とその家族)と加害者(とその家族)が共に生きる社会を想定しなくてはならないのです(ここにおける「共生」には許容や互助と言ったものは含まれず、同じ空間に必ず共に存在することのみを意味します)。
また、21 世紀COEの6クラスターのうち、「身体・セクシュアリティ」では、女性や児童が被害者となる犯罪を中心にジェンダーの視点から刑事法を研究し、知見が得られています(COE叢書第5巻等で成果も公表されており、メンバーも継続しています)。本プロジェクトでは、さらに研究を深めると共に、COEで得られた知見を犯罪問題全体に敷衍・応用していきます(例えば外国人による犯罪、外国人被害者問題も扱います)。
本プロジェクトでは、被害者の権利が確立し、被害者が安心して暮らせ、かつ加害者が更生し、再犯をしない社会を実現するための方法を、刑事司法の様々な段階に焦点をあてながら、国際比較の視点、社会調査、法制度の経済分析の手法等も取り入れながら研究を進めます。刑事司法については、実務と研究の協働の必要性が叫ばれながら、共同研究の場があまり多くない現状もあります。そのため本プロジェクトでは、刑事司法の各分野の実務家をメンバーに加え、実務と研究の視点の融合をも目指します。
研究計画
このプロジェクトでは、研究会を開催したり、調査を実施したりして、犯罪被害者の権利と救済、加害者の更生・再犯防止等について議論を深めていきます。プロジェクトを進めるにあたっては、国内における調査・研究にとどまらず、海外の研究者との交流を通じて国際連携も図っていきます。
2008年度は大学内外の研究者、実務家を招聘して研究会を数多く開催致しました。2009年度は日本初の官民協働刑務所「美祢社会復帰促進センター」に関する調査を中心に活動を実施しました。2010年度にはこれらの研究成果をまとめ、叢書を出版する予定です。
プロジェクト責任者
水野 紀子
(拠点サブリーダー)
所属
東北大学大学院法学研究科・教授
専門領域等
民法・家族法
業績
メンバー
| 氏 名 | 所 属 |
|---|---|
| 矢野 恵美 | 琉球大学大学院法務研究科(准教授・前プロジェクト責任者) |
| 吉田 浩 | 東北大学大学院経済学研究科(教授) |
| 小名木 明宏 | 北海道大学大学院法学研究(教授) |
| 上瀬 由美子 | 立正大学心理学部(教授) |
| 小島 妙子 | 仙台弁護士会 |
| 後藤 弘子 | 千葉大学大学院専門法務研究科(教授) |
| 小西 聖子 | 武蔵野大学人間関係学部(教授) |
| 齋藤 実 | 東京弁護士会 |
| 高橋 尚也 | 立正大学心理学部(講師) |
| 水谷 英夫 | 仙台弁護士会 |
| 吉野 智 | 法務省(専門官) |
| John DUSSICH | カリフォルニア州立大学フレズノ校犯罪学科(教授)、常磐大学国際被害者学研究所(所長) |
