「男女共同参画・多文化共生社会に求められる『リーダーシップ』教育の研究−中・高等教育における男女別学の国際比較分析に基づいて−」
Key questions
- 男女共同参画および多文化共生をベースとする社会に求められる「リーダーシップ」教育とはどのようなものか?
- 「リーダーシップ」概念およびその育成は男女間や文化によってどのように違うのか?
研究の目的と方法
本プロジェクトの目的は、男女共同参画社会及び多文化共生社会において求められる「リー ダーシップ」を育成する教育モデルを構築することです。そのためには、「リーダーシップとは何か」を問う必要があります。つまり、従来のリーダー像やリーダーシップ概念を「ジェンダー」および「多文化」という二つの視点から捉え直すことが必要なのです。
この課題を達成するため、本プロジェクトでは、男女別学教育がもつ教育的意義に焦点を当てます。この理由は、男女別学教育を分析対象に据えることで、現代の男女共学教育の問題点・改善点を浮き彫りにすることができると考えるためです。例えば、現代の男女共学教育には様々なジェンダー・バイアスが内在しているため、特に女性の「リーダーシップ」育成には男女別学が有効であるという見方があります。本プロジェクトでは男女別学に対する批判と支持の双方の指摘を吟味し、ジェンダーに中立な—ジェンダー・センシティブな—「リーダーシップ」育成教育の可能性を追求していきたいと考えています。
また、「リーダーシップ」教育分析の二つ目の軸は「国(民族および文化)」です。その理由は、国(民族および文化)による「リーダーシップ」の捉え方の違いを比較・分析することによって、よりグローバルな視点から当概念を再構築することができると考えるためです。
そこで、本プロジェクトの調査は日本およびアメリカ等諸外国での調査を実施します。調査対象とする学校は、(1)「社会的リーダーシップの育成」を教育目的として掲げていること、(2)進学率、偏差値等の水準が高いこと等を選定基準の一つとします。各学校においてフィールド調査、インタビュー調査等を実施し、当該学校における教育目的、カリキュラム、教育実践について、教育哲学・教育政策・カリキュラム論等の視点から多角的な分析を試みます。
研究計画
2009年3月にニューヨークにおける女子高等学校を対象とする訪問調査を実施し、5月の研究会において調査結果の第一次報告を行いました。10月の萩セミナーではジェーン・ローランド・マーティン、スーザン・レアード両氏をアメリカより招聘してワークショップを実施し、水原克敏氏、坂本辰朗氏の報告とともに、男女別学問題を哲学的かつ歴史的観点から論じました。11月には宮城県内の高等学校 におけるアンケート調査を実施し、現在その分析をすすめています。
2010年度は、2009年度の調査結果を踏まえて国際学会において発表を予定しています。年度末には、プロジェクト全体の報告書を刊行する予定です。
プロジェクト責任者
生田 久美子
所属
東北大学大学院教育学研究科・教授
専門領域等
教育学(教育学.認知科学)
メンバー
氏 名 | 所 属 |
---|---|
水原 克敏 | 東北大学大学院教育学研究科(教授) |
末松 和子 | 東北大学大学院経済学研究科(准教授) |
尾崎 博美 | 新渡戸文化短期大学生活学科(助教) |
八木 美保子 | 高崎商科大学商学部(非常勤講師)、東北大学大学院教育学研究科(博士課程後期) |
Jane Roland MARTIN | マサチューセッツ大学(名誉教授) |
Susan LAIRD | オクラホマ大学Educational Leadership & Policy(教授) |
坂本 辰朗 | 創価大学教育学部(教授) |
(2011年3月当時のもの)