「人間の安全保障と人身取引問題−男女共同参画と多文化共生の試金石−」
Key questions
- 搾取の手口や人身取引の形態の実態は?
- 受け入れ大国である日本国内の「需要」削減のために効果的な取り組みは?
研究の目的と方法
人身取引は、被害女性の人権を著しく侵害するだけでなく、グローバル組織犯罪の有力な資金源となることによって、途上国・先進国を問わず人間の安全保障の脅威となっています。いわばジェンダー平等と多文化共生の試金石となる課題です。日本は開発協力への貢献が期待される国でありながら、性的搾取を目的とする人身取引の有数の受入国であり、この問題への解決に資する調査研究が切実に要請されています。
このような状況を背景に本研究プロジェクトでは、(1)日本国内の法整備に対応して巧妙化・複雑化する搾取の手口や人身取引の形態の実態についての調査を深め、日本国内の体制、国際協力の実態を検証すること、(2)日本に人身取引されて出身地に帰還した「帰国女性」へのインタビュー調査の詳細分析と発展的調査を実施し、送り出し地における有効で具体的な防止策と支援策のあり方を検討すること、(3)性的サービスの売買に関する国内大規模意識調査の分析および質的調査により、日本国内の「需要」問題の削減のために効果的な意識啓発のあり方を探り、また包括的に人身取引被害者を保護・支援するための国内外を 通じた幅広いセーフティーネットの構築強化方法を明らかにすること、(4)「需要」削減や保護・支援活動に関する諸外国の実態について情報を収集することを、目的としています。
研究方法としては、タイ、カンボジア、フィリピンの政府機関、NGOと密接に協力して調査研究を行います。また、エンパワーメント・アプローチを重視し、当事者(「帰国女性」)を研究協力者に迎えます。さらには、カンボジア等でリーガルリテラシー活動をおこなうNGO との連携やインドシナ地域での国際協力、リーガルリテラシー、開発などに関心を持つ若手に短期インターンシップの提供も検討しており、各所に国際交流の要素を持つ研究プロジェクトです。
研究計画
2009年度は、全体会合を定期的に開催しました。2月には、タイから人身取引の当事者グループ支援関係者を招聘し、ワークショップを開催しました。また、プロジェクトメンバーがイギリス、スウェーデン、オランダ、ドイツを訪問し、先進国の「需要」対策を中心とした取組について聞き取り調査を行いました。
2010年度は、引き続き全体会合と調査研究を行う予定です。また、日本に人身取引されて出身地に帰還した「帰国女性」へのインタビュー調査を詳細分析し発展的調査を行います。そして、2009年度の調査結果も踏まえ、具体的な防止策と支援策を検討していく予定です。
プロジェクト責任者
大沢 真理
(連携拠点リーダー)
所属
東京大学社会科学研究所・教授
専門領域等
社会政策
業績
メンバー
氏 名 | 所 属 |
---|---|
原 ひろ子 | 城西国際大学国際人文学部(客員教授) |
坂東 眞理子 | 昭和女子大学(大学長) |
橋本 ヒロ子 | 十文字学園女子大学(副大学長)、人間生活学部(教授) |
Glenda ROBERTS | 早稲田大学アジア太平洋研究センター(教授) |
吉田 容子 | 立命館大学法科大学院(教授) |
田中 由美子 | 国際協力機構(国際協力専門員) |
日下部 京子 | AIT(アジア工科大学院)(准教授) |
大槻 奈巳 | 聖心女子大学文学部(准教授) |
中野 洋恵 | 国立女性教育会館(研究国際室長) |
青山 薫 | 神戸大学大学院国際文化学研究科(准教授) |
羽田野 慶子 | 福井大学教育地域科学部(准教授) |
渡辺 美穂 | 国立女性教育会館(研究員) |
小森田 秋夫 | 神奈川大学法学部(教授) |
池上 雅子 | ストックホルム大学政治学部(教授) |
高松 香奈 | 国際基督教大学教養学部(准教授) |
皆川 満寿美 | 東京大学社会科学研究所(特任研究員) |