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法学部生に推薦する図書

 以下の図書は、すでに昨年度、AO入試合格者向けに推薦図書として挙げたものですが、在学生にもたいへん有益ですので、夏休みに読んでみることをお勧めします。コロナ過で外出が難しい時期ですが、この時期を読書のための好機と捉えることもできます。時間的に余裕があるからこそ、手に取ってじっくりと読むべき文献が多くあります。夏休みに限らず、長期的な計画を立てていくつかを読んでみるのもよいでしょう。


①これから大学で学ぶために

  • 野矢茂樹『論理トレーニング101題』(産業図書): 他人の主張を冷静に論理的に受け止めて理解し,批判する能力を鍛えることを目的としています。高校までの国語の授業では必ずしも厳密に論理的に議論を理解する能力を集中的に鍛えることはない一方,入学後にはそうした能力が早い段階から必要とされます。その為の基礎力を養う方法の一つです。
  • 小林康夫・船曳建夫『知の技法』(東京大学出版会): 大学で学ぶということはどういうことなのでしょうか。様々な専門分野を持つ研究者が,具体的な学術テーマを設定しながら,凡そ学問をするというときに必要な基本的な技術を解説しています。様々な分野の学問的成果を楽しむ目的で読むものとしても刺激的です。
  • 吉永一行編『法学部入門〔第2版〕』(法律文化社): 本学の教員が編者となっている本です。法学部で何を、どう学ぶかということを解説しています。高校までの勉強と大学までの勉強は何が違うのだろうか、と期待(と不安)を持っている皆さんには、是非読んでいただきたいと思います(11月に第3版刊行予定)。

②英語の文献に触れてみたいときに

  • 気楽に英語の原書を読みたい方には,法学・政治学に差当り関係はありませんが, J. R. R. Tolkien, The Hobbit (瀬田貞二訳『ホビットの冒険』,岩波少年文庫)はいかがでしょう。もっと大作に挑戦したい人には,J. R. R. Tolkien, The Lord of the Rings (瀬田貞二訳『指輪物語』,評論社)。原書を回避したい人は,翻訳だけでも是非。時間がある時に大きなものを読むことはとてもいいことです。
  • Inazo Nitobe, Bushido: The Soul of Japan(日英対訳を含め様々なバージョンがあります): 幕末の盛岡に生まれ,後に国際連盟事務次長を務めた新渡戸稲造による名著。日本人の道徳観の核心となっている「武士道」について,西欧の哲学や騎士道と対比しながら世界に向けて解説した本書は,各国語に訳され,今なお読み継がれています。
  • Cohen, Benjamin, International Political Economy: An Intellectual History, Princeton University Press, 2008: 国際政治経済学の発展に貢献した代表的研究者を取り上げて、その学問的方法や問題関心について解説した入門書。日本語での類書はありません。
  • Gamble, Andrew, Can the Welfare State Survive? Polity, 2016: イギリスの政治経済学者アンドリュー・ギャンブルが,福祉国家の発展・変容・危機について一般向けに概説し,現代における福祉国家の一掃の必要性について力説した著書です。なお,Oxford Short Introductionのシリーズにも,福祉国家論に限らず良質な入門書が多くあるので,英語の肩慣らしとして読むことを勧めます。
  • Moore, Barrington, Jr., Social Origins of Dictatorship and Democracy: Lord and Peasant in the Making of the Modern World, Beacon Press, 2015(宮崎隆次・高橋直樹・森山茂徳訳『独裁と民主政治の社会的起源』Ⅰ・Ⅱ,岩波書店): 多くの社会科学教科書で,比較分析の手法を複雑に用いた政治発展研究の代表例としてしばしば取り上げられる古典的名著。ただし,英文としてはやや難しいかもしれません。なお、日本語訳もかなり良質です。
  • John Henry Merryman and Rogelio Pérez-Perdomo, The Civil Law Tradition: An Introduction to the Legal Systems of Europe and Latin America, Stanford University Press: 日本法も明治以来強い影響を受けている,主として西欧に根付いている法体系について,その基礎にある共通のものの考え方について,いくつかの法分野・法学的領域に分けて記述されています。叙述の対象となった法体系の外からの目で記述されていることは,法学初学者として読む際の助けになるかもしれません。

③法律学の文献に触れてみたいときに

  • 川島武宜『日本人の法意識』(岩波新書): 明治期に西欧諸国から輸入されたわが国の法制度と現実の国民生活とのあいだのずれという問題を「法意識」という観点から追求します。単なる法学書にとどまらず,広く一般にも読まれた本書,刊行から50年以上経った今でも,考えさせられるところがあるのではないでしょうか。
  • 木庭顕『誰のために法は生まれた』(朝日出版社): ある教授が実際に中高生を対象に行った授業を書籍化したものです。法学部で学ぶことになる「法」とは一体何の為に生まれたのか,ということを,映画や演劇,実際に起こった事件を素材にしながら学んでいきます。法の中身というよりも,法が相手取ろうとしている社会現象とは何か,を扱っています。
  • 道垣内弘人『プレップ法学を学ぶ前に〔第2版〕』(弘文堂): 法科大学院の未修者コースの学生の入門のために書かれた本で、これから法律を学習する際に知っておくとよいと思われるエッセンスが詰まっています。読みやすい文体・分量なので、入門としてお勧めです。
  • 道垣内正人『自分で考えるちょっと違った法学入門〔第4版〕』(有斐閣): ユニークな問題について考えつつ,法学における基本的な考え方を学んでいく入門書。「法律学に正解はない」,まずは自分の頭で考えてみることが,今後の学習にきっとつながることでしょう。

④政治学の文献に触れてみたいときに

  • アセモグル/ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか―権力・繁栄・貧困の起源』上・下(ハヤカワ・ノンフィクション文庫): 多くの歴史的事例を交えつつ,経済的に裕福な国と貧しい国との間にある違いを政治の仕組みや法制度の重要性という観点から論じ,一大論争を巻き起こした注目の書。
  • 飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』(中公新書): 現代日本政治の特徴を,現代政治学の基本概念を用いながら多角的に論じたもの。
  • マックス・ヴェーバー『職業としての学問』(岩波文庫): 第一次世界大戦後のドイツにおいて,学問と政策の峻別,方法論の重視といったことを中心に,学問を職業として追究しようとする者に求められる基本的心得を述べた名著です。
  • E. H. カー『危機の二十年』(岩波文庫): 戦間期のヨーロッパを舞台に展開した理想主義と現実主義の相克を,バランスよく客観的に論じた国際政治学の古典的名著。
  • ロバート・ダール『ポリアーキー』(岩波書店): 「民主主義/デモクラシー」という手あかのついた概念に代えて,「ポリアーキー」という分析概念を設定し,民主政治の基本的要素,民主化の経路,国々の民主化の程度をどのように測定するかといった問題を多角的に論じた,現代政治学の出発点とも言える基本書です。
  • 高橋進『国際政治史の理論』(岩波書店): J・リンスの権威主義体制論をはじめ,国際政治と比較政治の重要トピックを取り上げ,政治史と政治学を切り結ぼうとした故・高橋進氏の重要論考の集成です。

※なお、政治学の文献についてさらに読みたい場合には、下記のサイトの「政治学系の文献」を参照してください(こちらも、新入生向けの一覧ですが、在学生にもたいへん有益です)。

http://www.law.tohoku.ac.jp/forenrollment/book_list/