
東北大学法学部では、法や政治の歴史的・思想的・社会的背景を学ぶ導入的な基礎講義
(1・2年次)から、法学・政治学の根幹をなす基幹講義(2・3年次)を経て、より深い
理解・知見を涵養するための展開講義(3・4年次)に至る多彩な講義と、それらの講義をフォローアップする少人数で行われる演習(ゼミ)が数多く開かれます。皆さんは、このように段階立てて提供される多彩な講義・演習を履修していくことによって、法学的・政治学的な思考能力と知識を無理なく体得することができるでしょう。ここでは、これらの多彩な講義・演習の一部を、学生の目を通して紹介してもらいましょう。
[演習] アジア政治経済論演習Ⅰ
政治なくして法や政策は生まれない。政治学は現実と規範を結ぶ。

岡部 恭宜 教授
グローバル化という大きな時代のうねりの中、経済、環境、外交とますます多くの事象が密接に絡み合い大きな課題となっています。その中にあって「政治」はこうした多くの課題に対して何らかの解決を図っていく上で重要な位置を占めるものであることは明らかです。
年度によって取り扱う観点は異なるかと思いま すが、私が参加した年度の演習ではそうした重要な要素である政治を、「制度」という観点から注意深く考察することで学んでいきました。わたしたちが暮らす日本で採用されている議院内閣制という制度はこのパンフレットをお読みになっている皆さんにとっても馴染み深いものだろうと思います。一方で他国で採用されている執政府の形態である大統領制や半大統領制についてはどうでしょうか?
冒頭でも述べたように現代はグローバル化という大きな、そして不可逆な動きが見られる時代です。この演習には留学生も参加しており、このことからもグローバル化を感じることができます。 これからわれわれが「政治」を考える際には、自分たちがどういう論理で動いているのかを考えるのだけではなく、相手方がどのような論理を持ち 動いているかを考えていくことが大事になってくるのではないでしょうか。この演習は討論を重視し、他の学生と意見を交わすことでその視座を与えてくれるでしょう。
他の学生と盛んに議論してみたい方、政治の本質により深く迫ってみたい方はぜひこの演習に参加してみてください。

[講義] 憲法
人権保障と統治原則の根幹を規定する最高法規。

中林 暁生 教授
憲法といえば、多くの人が一度は学んだことのある法でしょう。中林先生の講義では憲法の基本的な理解を深めると共に、今日問題となっている先進的な論点についての議論にも触れることができます。
先生の講義の特徴はやはりそのレジュメの量です。2単位の授業で150ページにも及ぶレジュメには各教科書からの引用や、重要判例の内容とそれに対する社会の反応、さらには新旧司法試験の関連問題と先生自作の詳細な解説などといった学習上必要な資料が惜しみなく載せられており、少しでも情報の伝達量を増やそうという先生の配慮がそのレジュメの重みとともに伝わってきます。講義はレジュメに則って行われ、教科書の記述や判例の意義について丁寧な説明を加えてくださるため、自習では理解がおぼつかない箇所を十分に補うことができます。
講義中のメリハリも特徴の一つといえます。基本的には厳格な雰囲気の中で講義が進められ、学生のまなざしも真剣そのものですが、時折笑いとともに先生の経験談が挟まれ、また先生ご自身が東北大学で学ばれたということもあって、講義の随所に東北大学法学部の歴史を感じ取ることができます。
人権保障と統治原則の根幹を規定する最高法規、それが我が国における憲法です。こう言うと仰々しいように感じるかもしれませんが、憲法は意外と私たちの身近にあるものです。何気ないように見える出来事も憲法問題に置き換えてみると、興味深い考察が得られたり、新たな視点から物事をとらえることができます。本講義はみなさんにとってもそのような発想の契機になるものではないかと思います。
[講義] 労働法
労働法を学び、社会を知り、将来を考えるきっかけに。

桑村 裕美子 准教授
アルバイト、就職活動。大学生にとって、「労働」は高校生までとは違い、身近な問題となり、関心を持つ話題ではないでしょうか。昨今は、リーマンショック以降の不況が続き、派遣切り、内定取消、有効求人倍率の悪化等、労働に関わる問題は深刻です。
社会人の一歩手前として、労働に関わる諸問題を多少なりとも考える大学生にとって、労働法を学習することは、社会を知る、考える上で大変魅力的だと思います。確かに、就職活動やアルバイト等でも、社会を学ぶことはできるかもしれません。特に就職活動として企業を調べることにより、今まで全く未知の世界であった業界について学んだ人も少なくないでしょう。
しかし、労働に関わる事柄を個別ではなく、包括的に、つまり社会全体として「労働」を学ぶ上で、労働法は必要であり、そして、それこそが労働法を学ぶ一番の魅力
なのでは、と私は思います。
というのも、まずは判例です。労働法の判例においては、「…を総合的に考慮して、
…」というフレーズが多いと印象を持つ人も多いと思いますが、総合考慮判断では事案を深く分析することが必要です。講義でも百選はもちろん、適宜配布される補充レジュメを使用し、様々な判例と触れることができ、同じような問題の中でも様々な視点を持つことができます。
また、労働に関する用語も、社会を知る一つでしょう。社会では常識の組合や就業規則等々。挙げればきりがありませんが、講義では、最近の組合の動向や、労働契約法の成立など、昨今の状況も合わせて分かりやすく説明されるので、イメージも付きやすいです。
社会人のステップとして、ぜひ労働法を学び、社会を知り、将来を考えるきっかけにしてください。

法学部生のキャンパスライフ
法学部生の1週間の一例

鈴木さん・佐藤さんの場合(2013年4月現在)

佐藤 |
1年生は一般教養科目が多いよね。 |
鈴木 |
そうですね。先日まで、隣の川内北キャンパスで他学部の学生と一緒に講義を受けていました。みんな、どのように履修をしていくんでしょう? |
佐藤 |
1年生のうちに一般教養科目を大方履修して、2年生以降は専門科目に集中するのが一般的だね。法学部の講義は難しいものも多いし、成績も期末試験の点数が重視されるから、しっかり勉強しないと苦労するよ。 |
鈴木 |
そうですよね。なんだか不安です…。 |
佐藤 |
でも、それだけ勉強し甲斐があるってことだよ。法律に興味があれば頑張れるだろうし、ここで学んだことは社会に出てからもきっと役に立つからね。 |
鈴木 |
先輩、ゼミはまだ履修していないんですか? |
佐藤 |
3年生になった今年から履修する予定だよ。勿論、2年生のうちから履修している人もいるけどね。自分で計画を立てて時間割を組めるのも大学生の特徴だよね。 |
鈴木 |
なるほど。私もいろいろ考えてみようと思います。 |
佐藤 |
ゼミと言えば、東北大学法学部には自主ゼミがあるね。 |
鈴木 |
法学部の学生が自主的に運営する団体で、法律に関係する様々な活動をしているんですよね。私たちが所属している模擬裁判実行委員会もその一つです。 |
佐藤 |
60年以上も続いているからね。今年の公演も成功させたいね。 |
鈴木 |
そうですね。頑張りましょう! |